覚え書:「ともに暮らす社会へ:下 認め合い、支え合おう あべけん太さん、山本おさむさん、伊澤雄一さん」、『朝日新聞』2016年08月24日(水)付。
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ともに暮らす社会へ:下 認め合い、支え合おう あべけん太さん、山本おさむさん、伊澤雄一さん
2016年8月24日
あべけん太さん
障害のある人が暮らしやすい社会にしていくためには、どうしたらいいのでしょうか。当事者や支援者たちに、それぞれの立場からメッセージを寄せてもらいました。
■「みんないた方がいいんですよ。フレンドリーが大事」 タレント・あべけん太さん(29)
事件はラインニュースで見ました。なにこれって。悲しい。怒り。なんでそんなことするのか。父と話して泣いていました。許せないよなって。友達にもメールしました。ひどいよな。最低だねって。
容疑者は異常だと思います。どうしてそんなこと考えるようになったのか、ちょっと分からない。19人殺して、どう思うのか。反省っていうか、土下座くらいしてほしい。反省することができなかったから、そんな事件になっちゃったのかな。ごめんなさいじゃないな。ごめんなさいじゃないよ。それで終わりじゃないよ。
「障害者なんていなくなればいい」って……。いなくなればいいんじゃないんだよ。みんな一生懸命生きているし、まあ頑張っているし、時にはビールも飲んでね、楽しく生きているんですよ。みんながフレンドリーになってほしい。認め合うってことですね。
「知的障害者」って言われるのは嫌い。「障害者」って障害を特別に扱って、差別されている感じがする。プチッと来ちゃいます。なんかバカにされている気がする。「知的障害者」じゃなくて「すてき障害者」って言われていると思うようにしてます。僕は「ダウン症のイケメン」って呼ばれたいですけど。
僕は人が好きだし。人と会う、人が来る、大好き。みんなで仲良くすればいいんじゃないですかね。人として、友だちになろうぜって。
みんなには明るい未来があるから元気にしてほしい。障害があっても明るい未来があるんだから。みんな一生懸命生きているし、僕もこんなに元気でやっているし、元気元気ですよ。僕のことを気にかけてほしい。見てほしい。「あべけん太さんだぞ」ってね。
(聞き手・安西裕莉子)
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IT会社員で、「ダウン症のイケメン」としてテレビやミュージカルに出演。ボクシングや絵が趣味で、ビールが大好き。
■「序列を付ける社会、やめませんか」 漫画家・山本おさむさん(62)
漫画の世界で障害者分野は、差別表現に神経を使うためタブー視されていました。でも、母親たちの手記や運動の記録など資料を読んで障害者や家族の人生はすごく面白いドラマだと感じ、障害者をテーマに3作を描きました。
容疑者は「意思疎通ができない障害者」を標的にしたと言っているようですが、意思疎通とは何なのでしょうか。
「どんぐりの家」では、教師志望の男子学生がボランティアで少女に接する場面があります。3カ月間話しかけてもよだれをふいても反応がない。「生きていると言えるのか」と疲労感を募らせた学生に、先輩教師が「君が手を握ったとき弱く握り返してこなかったか? それは反応じゃないのか?」と聞きます。
そんな反応に何の意味があるのかと言う人がいれば、私は「ならばあなたの言葉にはどれほど意味があるのか」と聞きたいです。
障害者たちは、人間に序列を付ける社会にずっと疑問を投げかけてきました。障害者を「無駄」と考える人ほど、自分自身が序列社会にはじかれ、さらに弱い人を攻撃して優位に立とうとしているように見えます。
障害者も健常者も社会からはじかれる人がいないよう、今こそ、障害者が築いてきた「必要な人には支援をして支え合い共に生きる」という視点で、社会を考えないといけないと思います。
(聞き手・松川希実)
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ろう重複障害者を取り上げた「どんぐりの家」をビッグコミック(小学館)で連載。埼玉県の支援施設をモデルにした。
■「色々な人が融合できる社会が健全で本当に強い社会」 社会福祉法人理事・伊澤雄一さん(59)
事件をめぐり、精神障害がクローズアップされました。どんなイメージを持ちますか? 縁遠い存在ですか?
内閣府の統計によると、約40人に1人は精神障害者。精神疾患はありふれた病です。精神障害はその人のすべてではなく、特徴に過ぎない。健康でノーマルな部分も併せもっています。
精神障害者が地域で暮らせるように支援して約35年。僕は彼らの優しさに生かされていると感じます。「大変だね」と、気持ちのこもった言葉に元気をもらう。精神疾患のある人が「病友」として、同じ疾患の人の強力な支援者になることもある。
地域の方と精神障害者が接する機会をつくろうと、地元のイベントにブースを出しています。障害のある人と、ない人が出会い、知り合うことが大事。世の中の色々な人が混在して融合できる社会にしていくために、こうした取り組みがもっと必要です。
(聞き手・久永隆一)
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社会福祉法人「はらからの家福祉会」理事・総合施設長。精神障害のある人の地域での暮らしを支援している。
■(みんなのひととき)障害のある生活、体験お寄せください
障害がある方は日々の生活で感じていること、障害のある家族や友人がいる方はその暮らしや思いを「ひととき」に書いてみませんか。日常の喜怒哀楽、印象に残っている出来事などを自由につづってください。今回のテーマは、女性だけでなく男性からも募集します。
本文500字以内。住所、電話番号、名前(ペンネーム不可)、職業、年齢を書いて、〒104・8011 朝日新聞文化くらし報道部「ひととき」係へ。ファクス03・5540・7354、メールhitotoki@asahi.comメールするでも。
−−「ともに暮らす社会へ:下 認め合い、支え合おう あべけん太さん、山本おさむさん、伊澤雄一さん」、『朝日新聞』2016年08月24日(水)付。
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http://www.asahi.com/articles/DA3S12525472.html