覚え書:「悩んで読むか、読んで悩むか 和歌に自己投影、ドキドキを! 石田純一さん」、『朝日新聞』2017年06月18日(日)付。

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悩んで読むか、読んで悩むか 和歌に自己投影、ドキドキを! 石田純一さん

悩んで読むか、読んで悩むか
和歌に自己投影、ドキドキを! 石田純一さん
2017年06月18日

54年生まれ。俳優。ABC「おはよう朝日です」コメンテーターも務める。

■相談 好きだった人に告白しなくていいの

 50歳を過ぎたのに「人生で一番好きだった人に告白しなかった」ことを悶々(もんもん)と後悔しています。小学生の頃のことですが、恥ずかしくてできなかったのです。ずっと「死ぬ間際にベッドサイドに呼んで、伝えよう」と少女漫画のように想像していましたが、現実には難しい。「今更言ってどうなる」「言わないまま死んでいいのか」、この思いをすっきりさせたいです。
 (大阪府、無職女性・50歳)

■今週は石田純一さんが回答します
 一生考えても正解が分からない、とても難しい問題ですね。
 僕も小学校3年から11年間思い続けた女性と、52歳で再会した経験があります。僕の場合は中学3年で両思いになれたのに、高校2年の時に「まじめすぎる」とふられて。その後も数年間は諦められなかった。それから30年、電話では「おばさんになっちゃった」なんて彼女は笑ったけど、いざ目の前に現れたら昔のまま。魅力的で、はっとしました。
 恋愛や女性を描き尽くした平安文学の傑作、紫式部の「源氏物語」は相談者さんの背中を押してくれると思います。学生時代に勉強されたかもしれませんが、登場人物が詠む和歌には、彼らの「本当の気持ち」が凝縮されています。年齢を重ねた今、改めて大人の恋愛の歌を読み返したら、自然とお相手に会いたくなってしまうんじゃないかな。
 とはいえ「源氏物語」は壮大な古文ですから、すべて読み返すのは大変です。そこで歌人小島ゆかりさんの解説書『和歌で楽しむ源氏物語』はいかがでしょうか。源氏と女性らが交わす恋の歌や、女性の心情に焦点をあてており、詠み手の思いを深くまですくい取って説明してくれる。源氏と関係のあった女性たちが登場しますが、生まれも性格も様々ですから、思わず自己投影する女性も出てくるでしょう。
 ロシアの文豪・トルストイの『戦争と平和』(岩波文庫ほか)も女性や愛の本質を描いた名作です。こちらも長編ですが、物語の展開も早く、それぞれの章にテーマがあるので途中まででも大丈夫。十分に楽しめますよ。
 僕が理想としている生き方は「人生を楽しみ、人に愛され、世のために尽くす」。迷った時の指針としています。ずっと好きだった人に「告白したい」と思える相談者さんは、とてもステキな女性で、自信もおありだろうと想像します。このコーナーで相談が採用された偶然をきっかけに、思い切って行動してみてはいかがでしょう。ドキドキ、わくわくする気持ちを楽しんでみて下さい。
    ◇
 次回は作家の三浦しをんさんが答えます。
    ◇
 ■悩み募集
 住所、氏名、年齢、職業、電話番号、希望の回答者を明記し、郵送は〒104・8011朝日新聞読書面「悩んで読むか、読んで悩むか」係、Eメールはdokusho−soudan@asahi.comへ。採用者には図書カード2000円分を進呈します。
    −−「悩んで読むか、読んで悩むか 和歌に自己投影、ドキドキを! 石田純一さん」、『朝日新聞』2017年06月18日(日)付。

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http://book.asahi.com/reviews/column/2017061800016.html








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