覚え書:「文庫この新刊! 池上冬樹が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2017年08月20日(日)付。

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文庫この新刊! 池上冬樹が薦める文庫この新刊!

文庫この新刊!
池上冬樹が薦める文庫この新刊!
2017年08月20日
 (1)『創作の極意と掟』 筒井康隆著 講談社文庫 724円
 (2)『夏の沈黙』 ルネ・ナイト著 古賀弥生訳 創元推理文庫 1080円
 (3)『怪談』 小池真理子著 集英社文庫 648円
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 (1)は、文学指南書的エッセーで「凄味(すごみ)」「色気」から「反復」「幸福」まで31項目。古今東西の文学(あらゆるジャンル)を自在に引用して小説の可能性を説いている。圧倒的な情報量を誇り、いずれ索引から逆引きして再読したくなる。作家志望、プロ作家、文学ファン必読の書。
 (2)は、ミステリーの形をした家族ドラマで、愛と哀(かな)しみと許しを巡るサスペンス。二転三転させ、終盤でも驚きを与え、最後の止めの1行で物語の深さと豊かさを示す。複雑で厳しく冷然たる傑作。
 (3)は、7編の怪談を集めた傑作短編集。衣服の持ち主を探しているうちに現実感覚を失う「カーディガン」、病死した妻と触れ合う「ぬばたまの」、息子の結婚式で出会った男が誰であるかに気づく「還(かえ)る」の3作が特に見事。人も霊もみな温かな感情を抱き、時に歓喜し、時に絶望する姿が切ない。恋愛小説の名手小池はホラー小説の名手でもあり、実に怖く悲しく(時になぜか)喜ばしいのだ。22日発売の『夜は満ちる』も隠れた名作だ。
    −−「文庫この新刊! 池上冬樹が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2017年08月20日(日)付。

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