覚え書:「日教組、結成から70年:上 若い教員、組合離れ深刻 新採用、加入2割満たず」、『朝日新聞』2017年07月14日(金)付。

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日教組、結成から70年:上 若い教員、組合離れ深刻 新採用、加入2割満たず
2017年7月14日

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日教組の加入率と主な出来事
 日本教職員組合日教組)が、結成から70年を迎えた。旧文部省との激しい対立を越え、和解に転じてから22年。加入率の低下や組合員の世代交代に直面する中で、社会との対話を重視しようという動きも出ている。

 都内で6月に開かれた日教組結成70周年記念式典。泉雄一郎委員長はあいさつで、「かつては日教組の存在が身近に感じられる時代であったと思う。今は組合の存在が見えにくくなっているのも、現実として受け止めなければならない」と述べた。

 日教組は戦後、旧社会党を支持し、自民党・旧文部省と対立した。自民党内には日教組を「教育を偏向させる元凶」として批判する国会議員も多い。

 一方、日教組の実態は大きく変化した。文部科学省によると加入率は1958年度は86%だったが、2016年度は24%まで落ち込んだ。深刻なのは若い教員の組合離れだ。新採用の教員の加入率は60年度は77%だったが、16年度は19%と全体の5分の1を下回った。

 「『組合』と言うと、色眼鏡で見られる。校長に入らないようにと言われた」。東京都の小学校教員(25)はこう話す。大阪府の中学校教員(28)は「入ってもプラスがない」と言う。

 若者と組合の距離は、調査研究機関「労働調査協議会」が15年、日教組を構成する単組や支部の役員らに行った調査でもうかがえる。「組合と自分の考え方に温度差がある」に「そう思う」と答えたのは20代が36%と40歳以上より12ポイント高い。

 組織の現状は、活動内容にも表れている。日教組は毎年「教育研究全国集会」を開き、「外国語教育」や「理科教育」「人権教育」「障害児教育」などの取り組みを各地から持ち寄り、議論している。だが、そのリポート数は2001年は907本だったが、17年は665本と200本以上減った。

 文科省とのパイプも細る。日教組は95年に旧文部省と和解し、97年以降、委員長や書記長経験者が文科相の諮問機関の中央教育審議会委員になってきた。だが、第2次安倍政権下の13年2月以降は選ばれていない。文科省と和解した当時の書記長で、中教審委員を務めていた渡久山長輝(とくやまながてる)さんは「いじめや不登校などの教育課題が『反対』だけでは解決できないのは明らかだ」とし、「現場のニーズをくみ上げる努力が必要だ」と話す。

 ■「働き方」で社会にアプローチ

 日教組がいま力を入れているのは「社会的対話」だ。

 「学校現場にも『働き方改革』の風を!」。3月、新聞3紙にこんな意見広告を出した。これまでは「保護者も大変な中で、『教職員が忙しい』と、どこまで訴えていいのか」と考えていたという。山木正博・教育行財政部長は広告について「働き方改革に光が当たる中、社会の理解を得たいと試みた」と話す。中央教育審議会に6月、教員の長時間労働問題が諮問されたこともふまえ、現場の実態を伝え、対策を提案していくという。

 「社会的対話」は教育の活動でも目指す。毎年、子どもの貧困や学力、居場所づくりを考えるシンポジウムや講演会を各地の組合で開いてきた。教育研究集会の改革の動きもある。兵庫県教組では、昨秋の集会で392本のリポートのうち、学校ボランティアや、授業にゲストティーチャーとして招かれた住民らの報告が47本を占めた。

 (編集委員・氏岡真弓、根岸拓朗)
    −−「日教組、結成から70年:上 若い教員、組合離れ深刻 新採用、加入2割満たず」、『朝日新聞』2017年07月14日(金)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S13035403.html





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