覚え書:「今週の本棚・新刊:『李鴻章 東アジアの近代』=岡本隆司・著」、『毎日新聞』2012年05月13日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『李鴻章 東アジアの近代』=岡本隆司・著
(岩波新書・798円)
李鴻章(1823−1901)といえば、われわれは19世紀半ばの洋務運動の指導者、日清戦争における清朝の全権使節ということを想起する。しかし、その存在は、実はもっと大きく、実務官僚の第一人者として、19世紀半ばから末にかけて、清の勢威が次第に衰え、中国を中心とする東アジアの国際秩序が解体していく時代を生き、その時代を作り上げた中心人物の一人だった。
李鴻章は清がアヘン戦争で英国に敗北した直後の1847年に科挙官僚となり、清朝存亡の危機に際し淮(わい)軍を指揮して太平天国の乱の平定に功績を挙げ、洋務の総帥となり、海防を主導し、日本をはじめとする外国列強とわたりあうなかで、その生涯を終えた。
本書はこの李鴻章の生と重ね合わせるかたちで19世紀後半の清=中国の変貌を物語る。特に、李鴻章が「属国自主」の概念によって朝鮮、ベトナムに対する清の宗主権をいかに守ろうとしたか、なぜ、また、いかにして、その試みが日清戦争と下関条約で失敗に終わったか、この時代の中国と東アジア国際秩序の変容を理解する上で、学ぶところが多い。好書である。(隆)
−−「今週の本棚・新刊:『李鴻章 東アジアの近代』=岡本隆司・著」、『毎日新聞』2012年05月13日(日)付。
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http://mainichi.jp/feature/news/20120513ddm015070023000c.html