東洋史
J・スコット『ゾミア 脱国家の世界史』みすず書房、読了。ゾミア(大陸部東南アジア山岳地帯)の歩みとは文明から切り離された未開社会なのか。国家主義的ナラティブは山地民を野蛮と断ずるが、著者はNo。ゾミアこそ「脱国家」の共同体である。 山地民の…
- 今週の本棚・新刊:『ポツダム宣言と軍国日本』=古川隆久・著 毎日新聞 2013年03月31日 東京朝刊 (吉川弘文館・2730円) 「敗者の日本史」シリーズ(全20巻)の一冊。1945年の敗戦で、大日本帝国は崩壊した。なぜ、あのような愚かな戦争に行き…
小倉紀蔵『朱子学化する日本近代』藤原書店、読了。儒教社会から脱皮(西洋化)することが近代日本の歩みであるとの通説を打破するのが本書の狙い。著者によれば「日本の近代化は半儒教的な徳川体制を脱皮し、社会を『再儒教化』する過程」であり、福沢諭吉…
- 今週の本棚:五味文彦・評 『海から見た歴史−東アジア海域に漕ぎだす 1』=羽田正・編、小島毅・監修 毎日新聞 2013年02月10日 東京朝刊 (東京大学出版会・2940円) ◇現在へとみちびく三つの「海の時代」の構図 一五九一年、スペイン領フィリッピンで…
- 異論反論 戦争を子供たちに伝えるのは困難です 寄稿 城戸久枝当事者の声を聞かせたい この数年間、「戦争や中国残留孤児のことを伝えるために私に何ができるのか」をテーマに据えて活動してきた。講演などで家族の歴史を知るようにすすめると、「家族と向…
- 今週の本棚:加藤陽子・評 『蒋介石の外交戦略と日中戦争』=家近亮子・著 (岩波書店・2940円) ◇酷薄な歴史に堪えた「危機の指導者」像 70代半ばより年長の読者のなかで、満州からの引揚げ体験のある方、あるいは近親者から体験を聞いたことのある…
- 今週の本棚:富山太佳夫・評 『完訳 日本奥地紀行 1〜3』=イザベラ・バード著 (平凡社東洋文庫・3150?3360円) ◇英国女性が見た明治の地方文化史 年末から年の初めにかけての温泉旅行というのも悪くはないにしても、さしあたり今年は無理。その…
- 今週の本棚:山崎正和・評 『中国は東アジアをどう変えるか』=白石隆、ハウ・カロライン著 (中公新書・882円) ◇言語的変化が「新民族」を生み出す 現代の中国は世界最多の人口と最強の経済成長力を擁し、一党独裁のもとで軍事的な拡張をめざす帝国で…
- 今週の本棚:五味文彦・評 『足利義満 −−公武に君臨した室町将軍』=小川剛生・著 (中公新書・945円) ◇いかにして室町殿は朝廷に入ったのか 室町時代三代将軍の足利義満は、それまで源頼朝によってつくられた鎌倉殿という将軍の型を大きく変えて室町殿…
- 今週の本棚:日本をめざしたベトナムの英雄と皇子=著・白石昌也 (彩流社・1890円)ファン・ボイ・チャウやクオン・デと言われても、日本ではあまり馴染みがないだろう。100年ほど前、宗主国フランスからの独立を期したベトナムの2人の闘士の名だ…
京大東洋史学の泰斗、内藤湖南膨大な業績から、我々は何を学ぶことができるのか?粕谷一希『内藤湖南への旅』藤原書店、2011年。私事ですが吉野作造研究に従事する身として吉野の中国論を読む上でスルーできないのが内藤湖南。日本東洋学における富士の如く…
- 今週の本棚・新刊:『李鴻章 東アジアの近代』=岡本隆司・著 (岩波新書・798円) 李鴻章(1823−1901)といえば、われわれは19世紀半ばの洋務運動の指導者、日清戦争における清朝の全権使節ということを想起する。しかし、その存在は、実はも…