覚え書:「目撃者=三留理男著」、『毎日新聞』2012年6月24日(日)付。
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20世紀後半、報道写真家として時代の最前線に立ち続けた三留理男。第1回土門拳賞受賞者でもある著者の、膨大な枚数の写真とインタビューでつづられた回顧録である。
60年安保や三里塚など国内での取材はもちろん、タイ、カンボジアからパレスチナ、アフリカ飢餓地帯、そしてアフガニスタンやイランまでの足跡は「歴史の現場」そのもの。いまなお強さを失わない作品群が、激動の瞬間を伝えて圧巻だ。
あくまでも低い著者の目線は、たとえばカンボジアで、あるいはアフリカで時代に翻弄される人々に寄り添い、その不安や怒り、悲しみ、絶望や悲惨をくみ取っていく。そうした人々の姿からは、生というものの苛烈な現実と共に、それでもなお人間は生き抜いてきたのだ、という不思議な肯定感さえ伝わってくる。
取材時のエピソードにも事欠かない。なかでも、サルトルやホメイニ、アラファトなどの“巨人”を撮影した際のこぼれ話は、意外さや新鮮な驚きに満ちている。
セミ判カメラから現在のデジカメまで、著者が使ってきたカメラの歴史も、もちろんしっかりとつづられていて、懐かしい。(図)
−−「目撃者=三留理男著」、『毎日新聞』2012年6月24日(日)付。
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