覚え書:「【書評】それでもわが家から逝きたい 沖藤典子著」、『東京新聞』2013年02月03日(日)付。




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【書評】それでもわが家から逝きたい 沖藤典子著

◆介護する家族見守る
[評者]森 清 労働問題研究家。著書『働くって何だ』『大拙と幾多郎』など。
 人はどこでどう逝くか、実際には本人も近親者も分からない。「わが家で自然に」が大方の願望。七十九歳、前立腺がん他の病を持つ評者もそう思っている。
 二〇一二年度から「定期巡回・随時対応サービス」が始まった。同年は介護職の簡易医療行為の解禁元年。痰(たん)の吸引などは介護職の仕事になる。いずれも課題は多い。介護を主題にとり組んだ本の蓄積の上で、高齢当事者としての目配りも加えて、本書でも現場を踏まえた見事な分析とさまざまな提言をしている。
 これまでの介護問題は、介護者育成が先立っていて被介護者と介護する家族双方の介護の知識と体験への配慮が不足していた。家族介護や在宅介護を見据える本書を読んで、改めてそう思った。介護は専門家に任せればいいという問題ではない。また介護する家族をケアする専門家が必要という意見も。大切なことだ。
 最終章で「尊厳ある死は尊厳ある生の線上にあるべき」と主張し、「看取(みと)りの文化」を専門家と市民で共有する時代が来ていると指摘。重要な課題である。「わが家」とは、安らぎのある空間のことではないか。場は種々あっていい。安らぎには生活の安定や医療・介護サービスだけでなく宗教心も必要だろう。「看取りの文化」と共に、逝く時を静かに見据えた「逝く文化」も高まってほしい。
おきふじ・のりこ 1938年生まれ。ノンフィクション作家。著書『あすは我が身の介護保険』など。
岩波書店 ・ 2100円)
<もう1冊>
 上野千鶴子著『老いる準備』(朝日新聞出版)。老いに向き合う姿勢や介護保険、介護と家族について語る。
    −−「【書評】それでもわが家から逝きたい 沖藤典子著」、『東京新聞』2013年02月03日(日)付。

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013020302000145.html






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老いる準備 介護することされること (朝日文庫)
上野 千鶴子
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