書評:佐伯順子『明治〈美人〉論 メディアは女性をどう変えたのか』NHK出版、2012年。


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佐伯順子『明治〈美人〉論 メディアは女性をどう変えたのか』NHK出版、読了。本書は近代化という時代の転換期の中で、新しいメディア(新聞・雑誌・写真)が女性をどのように表象したのかを明らかにする一冊。当時の美人とは芸者を意義する言葉。日本で最初のミスコンの参加者の全ては芸者だ。

新しい時代を告げる女性のシンボルは「女学生」。「女性雑誌」は、やがて良妻賢母へとの意義を強調する。雑誌や新聞は皇族や家族の夫人・令嬢の洋装写真を掲載し、ビジュアル化された「よき家庭」像を演出するが、論調は良妻賢母高調のみではない。

大正・昭和に開花する職業女性の萌芽だけでなく、キリスト教に示唆を受け、外面の美に対する内面の美という論調も見られ、トータルとしては、単一な女性像への収斂というよりも、様々な生き方がせめぎあっていた。図版も多く実像を立体的に理解できる一冊。


 





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