覚え書:「今週の本棚:インド 姿を消す娘たちを探して=ギーター・アラヴァムダン・著」、『毎日新聞』2013年03月17日(日)付。





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今週の本棚:インド 姿を消す娘たちを探して
ギーター・アラヴァムダン・著
(つげ書房新社・2310円)

 インドのカーラム元大統領が「まえがき」を書いている。女性は「神からの贈物」であり、本書は「私たちの良心を目覚めさせてくれます」と。この本にはインドの女性に対する虐待、差別、犯罪などが描かれており、その是正が不可欠だと元大統領は穏やかに語っているのだ。
 確かに、にわかには信じ難い実態である。経済発展を続けるインドでは、結婚時に神父側から新郎の家族に贈る金品(ダウリー)の高騰などを背景に、多くの女児が家族によって殺されてきた。新生児を湿ったタオルに包んだり土に埋めたり。ある県では1997年の段階で毎月平均105人の女児が殺され、インド全体では男の子1000人に対する女の子の比率が91年の945人から2001年の927人へと急減したという。
 近年、インドでレイプ事件が目立つのは女性が減って結婚しにくくなったのが一因との見方もあり、状況は深刻だ。著者はインドの著名な女性ジャーナリストで、訳者の鳥居千代香氏はインドやアラブの女性差別などの研究で知られる。「世界最大人口の民主国家」とされるインドの隠れた顔に迫る一冊だ。(布)
    −−「今週の本棚:インド 姿を消す娘たちを探して=ギーター・アラヴァムダン・著」、『毎日新聞』2013年03月17日(日)付。

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インド 姿を消す娘たちを探して
ギーター アラヴァムダン
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