覚え書:「今週の本棚・新刊:『ポツダム宣言と軍国日本』=古川隆久・著」、『毎日新聞』2013年03月31日(日)付。




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今週の本棚・新刊:『ポツダム宣言と軍国日本』=古川隆久・著
毎日新聞 2013年03月31日 東京朝刊

 (吉川弘文館・2730円)

 「敗者の日本史」シリーズ(全20巻)の一冊。1945年の敗戦で、大日本帝国は崩壊した。なぜ、あのような愚かな戦争に行き着いてしまったのか。戦後歴史学が営々と追究してきた大きなテーマに、気鋭の研究者が挑んだ。

 明治維新から日清、日露戦争の勝利を経て軍部が台頭し、政治が制御できなくなった。2・26事件を経て、軍部自体が政治的に自立して行く様子が分かる。さらに国際社会からの孤立、日中戦争を経て太平洋戦争の開戦、敗戦と独立までを描く。

 著者らしく、先人による分厚い研究成果はもとより、近年の新知見にも丹念に目配りする。また一般読者が入手しやすい書籍を参考文献としたという。

 読者への気配りとは裏腹に、為政者たち、特に明治の元勲たちへの批判は厳しい。彼らの作った国について「一応近代国家の体裁を整えたとはいっても、いかに国民不在の国家であったか」といい、軍や官僚機構の独走を食い止められない構造だったことを明らかにする。国づくりの段階ですでに、破滅への道が敷かれていた、ということか。新たな議論のたたき台となりそうだ。(栗)
    −−「今週の本棚・新刊:『ポツダム宣言と軍国日本』=古川隆久・著」、『毎日新聞』2013年03月31日(日)付。

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http://mainichi.jp/feature/news/20130331ddm015070044000c.html








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ポツダム宣言と軍国日本 (敗者の日本史)
古川 隆久
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