書評:金森修『動物に魂はあるのか 生命を見つめる哲学』中公新書、2012年。




金森修『動物に魂はあるのか 生命を見つめる哲学』中公新書、読了。動物には魂があるのか、それとも機械なのか。本書はアリストテレスからデリダに至るまでの動物霊魂論……主として17-18世紀フランス思想……の系譜を読み直す試み。動物とは何かとの問いは人間とは何かを変奏する。

機械論vs霊魂論。「動物論の背後には、不可視の境界に接するように、議論場の背後に人間論が控えている」。西洋世界の知的冒険は、全肯定という名の全体への回収としての日本的融通無碍に対して、積極的な刺激になるであろう。

デカルト以降カントまでのフランス思想史は定型で済まされその名実が問われることは殆どない。機械論と霊魂論の拮抗した二百年の思想史を拾い上げる本書は、優れた近代哲学(心身論)の入門書ともなっている。

「お前がそんなに複雑で優れた魂をもっているのは、他人だけではなく、他の生物にもできる限り気遣いをすることができるように、そうなっているんだよ」。他より少し「特別」と自認する人間の在り方を自覚し直したい。









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