書評:朝日新聞西部本社編『対話集 原田正純の遺言』岩波書店、2013年。





朝日新聞西部本社編『対話集 原田正純の遺言』岩波書店、読了。人間の命と尊厳を脅かす事象に医師として半世紀以上取り組み、昨年亡くなった原田さん。本書は、一周忌に合わせて出版された対話集。対話者は石牟礼道子さんほか患者や記者など15名。著作は多いが、対談集は本書しかない。

本書に意義があるのは著者の肉声だ。ソクラテスの対話がそうであったように。著者の語りは人間を粉々にしてしまう問題が“かつての事件”ではないことを知らしめる。被害のショービズ的矮小化でもなく過小評価の切り捨ても不必要だ。

過去と現在を架橋する著者の対話の軌跡は、過去の「証言」という記憶と同時に現在の「出来事」としてそれを捉え直すことを切り結ぶ。著者の言葉一つひとつが「遺言」であり、今必要な視点となろう。






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対話集 原田正純の遺言

岩波書店
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