書評:小林美希『ルポ 産ませない社会』河出書房新社、2013年。




小林美希『ルポ 産ませない社会』河出書房新社、読了。「産めない」のではなく、社会が「産ませない」(帯)。本書はジャーナリストとして結婚、出産、雇用に取り組んだ著者による痛切な報告。子育てすることで孤立していかざる得ない現代。「孤育」てしながら働く女性に日本社会は寛容ではない。

本書は、子育てしながら働き続ける女性の困難、孤立する母親、男性の低い育児休業取得率や高年齢出産のリスク、保育サービスの不足など、問題を概観しながら、政治家たちの「少子化対策」の喧噪で見えにくくなるその最新の惨状を明らかにする。

マタニティ・ハラスメントの強さは従来から指摘されていたが、産科や小児医療の現場でのその熾烈さには驚く。両立が難しく、出産、子育てを機に辞めていく産科医が多い。人員不足は結果としてベルトコンベア化した医療を必然とする負のスパイラルだ。

アスリートのシングル出産が“ネタ”となり、公共交通機関でのベビーカーに眉をひそめる日本社会。妊娠・子育て支援を本気で考えようと思う人などほとんど存在しない。「子どもが心配なら家でみろ」。本書は歪んだ自己責任の襞に分け入る渾身のレポートである。








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ルポ 産ませない社会
ルポ 産ませない社会
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小林 美希
河出書房新社
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