日記:中山成彬大先生と片山さつき大先生の「狂気」扇動

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 「アンネの日記」やその関連図書のページが大量に破られるという被害が昨年から今年にかけ、東京都内の公立図書館で相次いでいる。被害は少なくとも250冊以上になるとみられ、範囲も23区だけでなく市部にも及ぶ。

 「アンネの日記」は第二次世界大戦中にオランダでナチスユダヤ人迫害から逃れるために屋根裏に住んだ少女、アンネ・フランク(1929〜1945)がつづった日記。世界的なベストセラーとなっており、児童書コーナーに置かれているものもあることから、図書館側では警察に被害届を出すなど警戒を強めている。

 ハフィントンポストが2月20日現在、確認できただけでも、新宿区、杉並区、豊島区、中野区、練馬区東久留米市西東京市の各図書館で、合計250冊以上の本が被害にあったとみられる。いずれも「アンネの日記」やその関連図書などで、本の内部が何十ページにわたって破られるという手口だった。書籍にある特定の記述を狙ったものではないようだ。(ハフィントンポスト)
「アンネの日記」 都内の公立図書館で250冊以上が破られる被害

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詩人ハイネは、ナチス政権下においてその著作が焚書の対象になったが、有名な警句を残している。すなわち「本を焼く者は、やがて人間も焼くようになる」。事実、第三帝国下のドイツでの所行を引くまでもあるまい。

人間の感性と知性の最高の結晶ともいうべき「本を焼く者は、やがて人間も焼くようになる」のは人類普遍の道理であろう。

一刻もはやい解決を望むばかりだ。

さて……。

各地の図書館でアンネの日記が破られているというニュースがかけめぐるようになってから、知性の牙城・東京大学出身の二人の保守派政治家が、その報道に狂気にみちた反応を示していることに驚いた。

ひとりは中山成彬(なかやまなりあき)氏。
twitterでの本人のプロフィールも掲載しておこう。
「血液型B型 衆議院議員 宮崎県小林市生まれ。 ラサール高、 東大法卒。 大蔵省出身。 元文部科学大臣国土交通大臣」。

英才中の英才であろう。

かの人物の発言は次の通りだ。

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各地の図書館でアンネの日記が破られているというニュースに、瞬間日本人の感性ではない、日本人の仕業ではないと思った。ディスカウントジャパンに精出す国、安倍総理ヒットラーに例える国もある。図書館にも隠しカメラがあるの嫌だが、徹底して調べてほしい。不可解な事が多発する日本、要注意だ。 7:00 - 2014年2月22日

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そしてもう一人は、ネトウヨの覚えめでたき片山さつき氏。
twitterでの本人のプロフィールも掲載しておこう。
自民党参議院議員、党環境部会長、前総務大臣政務官衆院1期(経済産業政務官。広報局長)後、全国比例区22年自民党トップ当選。震災復興と防災、エネルギー戦略、地域活性化社会保障と税 全国を駆け回ってます!」

……だそうだ。

かの才女の発言は次の通りだ。

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アングレームに乗り込んだ韓国チョ・ユンソン女性家族部長官は、ユネスコ事務局長に、2月2日「アンネの日記世界遺産登録されている」、と従軍慰安婦の被害記録の登録を主張したそうです。そして、都内でアンネの日記が図書館被害。事件の徹底捜査を警察に要請します!ささいな情報でも通報を! 0:38 - 2014年2月24日

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ふたりに共通していることは何か。至極単純だ。
図書館所蔵のアンネの日記を破いた犯人は判明していない(2014年02月25日現在)。
にもかかわらず、彼・彼女らが嫌悪するひとびとの犯行であるとのきめつけだ。

この狂気に筆者は戦慄している。
根拠もないままに、扇動の末蓄積された憎悪が水晶の夜として発火し、その狂気結末は、図書館で破られたアンネをアウシュヴィッツガス室に送り込んだのではあるまいか。

筆者は近代日本キリスト教思想史を専門とする。そこで想起するのは、関東大震災下における流言飛語の狂気だ。その扇動が、無辜の朝鮮半島の人々をメッタ殺しにしたのではあるまいか。

戦慄せざるを得ない。

ふたりの扇動はナチスと戦前日本の狂気を示すものに他ならない言説だが、もうひとつ気にかけなければならないことがある。すなわち、それは、「権力」が流言飛語やデマを垂れ流し、扇動する構造である。

内務省警保局は各地方のトップに向けて「朝鮮人の行動に対しては厳密なる取締を」と警報を打電し、警視庁からも戒厳司令部宛に「鮮人中不逞の挙について……」などと通報じているが、実際のところ、そのほとんどはデマ・風聞にすぎないものだった。しかしデマゴーグに過ぎないものであったとしても、「権力」が発したものは事実と理解され、敵愾心を煽り、やがて「自衛」という大義名分のもと、故無き暴力を正当化してしまう。筆者は吉野作造の研究者だが、関東大震災下において吉野作造は、官憲がその「デマ」を流したことを報告している。

さて、再びだ。2014年2月25日現在、犯人は捕まっていない。

繰り返そう。犯人も判明していないうちに、権力の側にいる人間が、自分が嫌悪する人々をその犯人と決めつけて糾弾することの狂気に戦慄すべきである。


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 震災地の市民は、震災のために極度の不安に襲はれつゝある矢先きに、戦慄すべき流言蜚語に脅かされた。之がために市民は全く度を失ひ、各自武装的自警団を組織して、諸処に呪ふべき不祥事を続出するに至つた。此の流言蜚語が、何等根抵を有しないことは勿論であるが、それが当時、如何にも真しやかに然かも迅速に伝へられ、一時的にも其れが全市民の確信となつたことは、実に驚くべき奇怪事と云はねばならぬ。
    −−吉野作造朝鮮人虐殺事件について」、『中央公論』1923年12月。

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ああ、そうそう、こういう金魚の糞にもご注意あれ。




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