覚え書:「集団的自衛権:閣議決定 全国紙の論調二分、大半の地方紙は批判」、『毎日新聞』2014年07月21日(月)付。

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集団的自衛権:閣議決定 全国紙の論調二分、大半の地方紙は批判
毎日新聞 2014年07月21日 東京朝刊

 従来の政府見解を転換して、安倍晋三政権が今月1日、集団的自衛権が使えるように憲法解釈を変更する閣議決定をしたことを受けて、全国の新聞は翌日紙面の社説・論説で、一斉にこの問題を取り上げた。全国紙は論調が二分した一方で、ブロック紙・地方紙の大半の38紙は批判的内容だった。【青島顕】

 ◇国会論戦も評価分かれる

 2日朝刊で1面に社説を掲げた毎日新聞は「閣議決定で行使を容認したのは、国民の権利としての集団的自衛権であって、政治家や官僚の権利ではない。歯止めをかけるのも、国民だ。私たちの民主主義が試されるのはこれからである」と主権者の自覚を促した。朝日新聞は「戦後日本が70年近くかけて築いてきた民主主義が、こうもあっさり踏みにじられるものか」と書き出し、閣議決定を「暴挙」と厳しく非難した。

 一方、読売新聞は「米国など国際社会との連携を強化し、日本の平和と安全をより確かなものにするうえで、歴史的な意義があろう」と歓迎。産経新聞は「行使容認を政権の重要課題と位置付け、大きく前進させた手腕を高く評価したい」と安倍首相の決断を支持した。

 日本経済新聞は「他国と助け合い、平和を支える道を歩むときだ。そのためにも、集団的自衛権を使えるようにしておく必要がある」と述べた。そのうえで「閣議決定を、ここまで急ぐべきだったのか疑問だ」と政権の強引なやり方にくぎを刺した。

 全国紙の社説の論調は閣議決定後、初の国会論戦を受けた紙面でも分かれた。毎日は16日「横畠長官の答弁は重い」、朝日も同日「解釈改憲の矛盾あらわ」との見出しで政府を批判した。一方、読売は15日紙面で「国会の論議をさらに深めたい」、産経も同日「首相は堂々と意義を語れ」として、安倍首相の主張を支持した。日経は16日「集団安全保障の議論を早急に詰めよ」との見出しを掲げた。

 ◇沖縄の2紙、厳しい論調

 ブロック紙・地方紙の大半は、2日紙面で政権に厳しい論調を展開した。信濃毎日新聞(長野県)や新潟日報のように、社説を掲げたうえに、1面で論説担当者が署名入りで反対論を展開したところもあった。熊本日日新聞は社説を1面に掲載し「憲法9条は事実上、骨抜きにされるといっても過言ではない」と批判した。

 全国の米軍基地の74%を抱える沖縄県の2紙は厳しい論調で、政権を批判した。沖縄タイムス憲法9条の全文を社説の中に掲載したうえで、閣議決定を「『憲法クーデター』というしかない」と断じた。琉球新報は、ベトナム戦争当時に、米軍の爆撃機が沖縄の基地から発進したために、沖縄がベトナムの人々から「悪魔の島」と呼ばれたことを引いて、「今後は日本中が『悪魔の島』になる」と強い表現で警告した。

 安倍首相の地元・山口県下関市に本社を置く山口新聞は「専守防衛の国是揺らぐ」との見出しで政権を批判。「安倍晋三首相は国民に丁寧に説明する必要がある」と諭した。

 徳島新聞は「戦争の恐ろしさを知っていた本県選出の三木武夫元首相や後藤田正晴元副総理が生きていたら、認めなかったのではないか」と社説の書き出しで地元出身の保守政治家の名を挙げて批判。さらに翌3日にも「主権者軽視とは何事か」の見出しの社説を掲げた。

 神戸新聞は「安倍政権は禁じられた川を渡ってしまった」と断じ「手品のように新たな理屈が持ち出される。国民の戸惑いと不安は募るばかりだ」と危機感をあらわにした。

 一方、福島民友は「歴史的な判断だ。日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している」と評価し、政府に対し「国民に理解を求める努力を最大限払う必要がある」と訴えた。北国新聞(石川県)・富山新聞は「法整備へ理解深めたい」との見出しで政権の判断を支持した。

 ◇独自の企画、各紙で

 地方紙の中には、2日以降も集団的自衛権の行使容認をめぐって独自の展開を続ける新聞が少なくない。

 沖縄タイムスは6日から企画「自衛の境界線 沖縄から『国防』を射る」を始めた。第1部として与那国島の人々の「国防」をめぐる複雑な思いと、地域に浸透しつつある自衛隊の動きをルポしている。琉球新報は2日から社会面で「非戦の価値−揺らぐ平和主義」を随時掲載し、学者、基地労働者、美術家らさまざまな人の思いを聞き書きしている。県議会各会派や識者のインタビューも随時掲載している。

 北海道新聞も社会面で「『不戦』どこへ」を随時掲載しているほか、子どもたちに安全保障問題をやさしく解説する「親子で考えるあんぽ」を12日まで5回掲載した。

 高知新聞は「高知から考える集団的自衛権」を社会面で展開するほか、編集幹部の日曜コラムでも2週連続で集団的自衛権を取り上げた。新潟日報も社会面に「平和とは 新潟から問う集団的自衛権」のワッペンを張り、若者の見方などをまとめている。神奈川新聞は「憲法といま」「集団的自衛権を考える」を展開、信濃毎日新聞も「問う安保 信州から」を掲載した。
    −−「集団的自衛権:閣議決定 全国紙の論調二分、大半の地方紙は批判」、『毎日新聞』2014年07月21日(月)付。

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