覚え書:「御朱印ブームのワケは 人気過熱で代行業やネット転売も」、『朝日新聞』2016年07月03日(日)付。

Resize3513

        • -

御朱印ブームのワケは 人気過熱で代行業やネット転売も
佐藤剛志2016年7月3日

御朱印、なぜ人気

 神社仏閣を参拝した証しに授与される御朱印(ごしゅいん)。若い女性を中心にブームとなり「御朱印ガール」という言葉も生まれた。最近では、新たなものや期間限定のものを授与する寺社も増えている。人気の背景には何があるのか。

 6月上旬、休日の明治神宮(東京都渋谷区)を訪ねると、御朱印を求める参拝者が行列していた。集めた御朱印を見せ合って楽しげに話す女性グループが手にするのは、ピンク色や水色の朱印帳カップルや外国人の姿も多い。

 編集者の安井善徳さんは10年ほど前に変化を感じ始めたという。御朱印をもらう際、高齢者にまじって若い女性の姿が目につくようになった。周囲の勧めで『決定版 御朱印入門』(2008年、淡交社〈たんこうしゃ〉)を企画すると、他社も御朱印の書籍を次々と出版。雑誌やテレビが特集を組み、ブームは徐々に広がっていった。「出版当時は現在ほどの過熱ぶりは想像できなかった」と振り返る。

■寺から神社へ拡大

 御朱印は、志納金や初穂料として300円程度を納め、和紙をとじた朱印帳に朱色の印を押してもらい、寺の本尊名や神社名などを墨書してもらう形が一般的だ。

 その由来は、寺院に写経を納めた際に受けた納経印にあるとされる。佛教大学八木透教授(民俗学)によると、江戸時代に庶民の間で四国八十八カ所霊場巡りなど寺社参詣(さんけい)を目的とした旅行が人気となり、納経印の慣習が生まれたという。いつしか納経しなくても授与されるようになり、さらに寺から神社へと広がった。御朱印朱印帳に受ける様式が定着したのは明治時代以降のようだ。一方、浄土真宗の寺院には、御朱印を授与していないところが多い。

 人気を受けた寺社の動きもある。北野天満宮京都市)は昨年秋、あらかじめ「至誠」などと紙に印字した4種類を期間限定で追加。今も3種類を授与する。東川楠彦・権禰宜(ごんねぎ)は「御朱印を求める方の声に応えることが神社への親しみにつながればありがたい」。

 尾山(おやま)神社(金沢市)では御朱印の右下に小槌(こづち)や扇など月別の印を押し、赤城神社(東京都新宿区)では雪うさぎを描いたものなど3種類の朱印帳を新たに出した。

■オークションで値段5倍に

 情報はインターネット上でやりとりされ、ブームは過熱気味だ。清浄華院(しょうじょうけいん、京都市)が昨年、陰陽師(おんみょうじ)・安倍晴明(あべのせいめい)の姿の印を押した御朱印を期間限定で授与するとネットオークションで転売され、本来の5倍の1500円に。御朱印集めを有償で代行する業者もある。

 御朱印の何が人を引きつけるのか。八木教授は「先行き不透明な社会で抱く漠然とした不安感から神仏の加護を求める人が増え、そこにパワースポットブームが重なった。御朱印は、そうした場所で力を得た証拠の役割を果たしているのではないか」とみる。僧侶や神職らと言葉を交わし、目の前で墨書してくれることに特別感を抱く人も少なくない。

 江戸時代の人々の巡礼旅行にも、信仰を大義名分とした娯楽の要素が多分にあった。八木教授は「朱印帳が埋まっていくのにはスタンプラリー的な要素もあり、霊場の全社寺を巡る満願に達成感を得ている面もある」と分析する。(佐藤剛志)

篠原ともえさん「始めようと思った時が運命」

 御朱印を集めたきっかけは3年前、「せんとくん」をデザインした籔内佐斗司(やぶうちさとし)先生と仏像を拝観する番組でご一緒した際に勧めて頂いたこと。実際に見たらこんな楽しい世界があるのかと驚きました。

 私の場合は朱印帳を広げて見たいから、両面でなく片面に頂いています。埋まったのは5冊くらい。最近は朱印帳のデザインにも興味がわき、40冊くらいあります。埋まったものには、御朱印にお布団をかぶせるような気持ちでケースを手作りしています。型紙にのりを貼り、朱印帳を自作したこともありますよ。

 旅の時は神社用とお寺用の2冊持って出ます。同じ場所を訪ねても、御朱印を書く方が違えば字も違いますし、もちろん日付も違う。一つとして同じものがないのも魅力ですね。墨の香りが大好きで、頂いたらすぐ開いて見ます。両親が結婚後に行った伊勢神宮を、家族みんなで訪ねた際の御朱印は特別な存在です。

 御朱印集めって、若い方がおじいちゃんおばあちゃんになるまで長く続けられる。夢中になれるものにいま出会えたのはよかったです。お寺や神社もご縁があれば一生お参りできるので、参拝の印を残せるのはすてきだと思います。だから若い方も、始めようと思ったタイミングが運命の時じゃないでしょうか。
    −−「御朱印ブームのワケは 人気過熱で代行業やネット転売も」、『朝日新聞』2016年07月03日(日)付。

        • -


http://www.asahi.com/articles/ASJ6Q741NJ6QUCVL024.html





Resize3486

Resize2901