覚え書:「【東京エンタメ堂書店】幻冬舎・鈴木恵美第二編集局長 生き方の教科書を」、『東京新聞』2016年12月19日(月)付。

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【東京エンタメ堂書店】

幻冬舎・鈴木恵美第二編集局長 生き方の教科書を

2016年12月19日


 今年一番のヒット、話題の本…幻冬舎は、ある意味常に最先端の本を追い求めている。編集という仕事の面白いところは、自分がびっくりしたこと、感動したことを本という商品にして、世の中に問いかけることができること。それが、まさにストライクとなれば、時勢にのってベストセラーとなり、おおげさに言えば読んだ人の人生を変えることもある。
 幻冬舎は読者を驚かせる、読者の役に立つ本を、常に編集者が自由に考えられる出版社である。斬新な切り口の企画とか、芸能界を騒がせるような企画、すべては編集者、一人ひとりが、世に問いたい書籍を出版している。著者と二人三脚で企画を考え、世の中と勝負する。
 編集の仕事の面白さはそこにある。
 また、本は読んでもらえないと、役に立たない。買ってもらえないと、書いた意味がない。だからこそ、書店営業、宣伝広告することにも力を入れている。たくさんある本の中からこの一冊を選んでもらう工夫を日々模索しているのだ。
 「腕のある大工は、節のある木材をもうまく生かす。」最近編集した青山俊董(しゅんどう)尼の書籍『泥があるから、花は咲く』の中に出てくる一節である。同じ作家でも担当編集者が代わると作品が違ったものになることは多々ある。著者の歩んできた人生、みがいてきた技を、どんな本にして魅せるか。具体的にいえば、タイトルや装丁はどうするか。デザインやイラスト、写真の置き方、編集者の力量によるところが多い。
 毎年、数十冊の書籍を世に出していて、特に昨今、読者の不安に響く本が売れるという実感をもっている。家族、会社、学校、友人…人間関係の不安に悩む人向けの本。お金、仕事、老後、子育て、健康…将来の不安に悩む人向けの本。答えは明確でなくても、読んだことで安心感が得られたり、何か新しいことを始めるきっかけになったり、そんな本が求められると思うのだ。
 九十歳や百歳、人生後半を輝いて過ごす高齢者の書籍が話題になるのも、先行き不安な老後の生活を、元気に楽しんでいる先輩たちの姿は、読んでいて明るい気持ちになれるからだろう。今後も、人生の達人・先輩たちから何かを学びとりたいという読者に、生き方の教科書になるような書籍を企画していきたいと思っている。
◇お薦めの3冊
◆全世代の指針

 <1>渡辺和子著『置かれた場所で咲きなさい』(1028円) 発売して5年近くたつ今でも、編集部に届く感想の読者葉書(はがき)が途切れない、220万部を突破するロングセラー。修道女であり、ノートルダム清心学園理事長である著者が、今ある自分を受け入れ、輝かせる考え方を、心温まる言葉で語りかける。あらゆる世代の方に、人生の指針としてぜひとも読んでもらいたい。
◆弱火でシャキッ

 <2>水島弘史著『弱火コントロールで絶対失敗しない料理』(1404円) 科学的根拠に基づいた料理法で大活躍の水島シェフが、初心者が陥りがちな失敗とその理由を解説。「強火」が常識とされていた野菜炒めを、弱火を使った低温料理法で、しゃきっと美味(おい)しくする方法を編み出した。他にもハンバーグや餃子(ギョーザ)、天ぷらなど家庭の定番料理のコツを伝授。
◆アラハンの星

 <3>篠田桃紅著『一〇三歳になってわかったこと』(1080円) 数え104歳になった今でも毎日制作に励み、第一線で活躍する美術家、篠田桃紅さん。墨を使った抽象画は世界的にも評価が高く、自分の心を信じて、自分一人の生き方を模索してきた著者の力強い姿勢が多くの読者に感銘を与えている。アラハン(100歳前後)ブームの火付け役ともなり、中高年に元気と勇気を与えている。
◆筆者の横顔
<鈴木恵美さん(43)> 編集した書籍は上記3冊のほか『藤原主義』(藤原紀香著)、『シンプルに生きる』(D・ローホー著)、『おかげさまで生きる』(矢作直樹著)や実用書『知識ゼロからの』シリーズなど。最近読み直した本は、宮沢賢治の『注文の多い料理店』。
    −−「【東京エンタメ堂書店】幻冬舎・鈴木恵美第二編集局長 生き方の教科書を」、『東京新聞』2016年12月19日(月)付。

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