覚え書:「戦争は対話で解決できる ポピュリズムは差別生む コロンビア・サントス大統領」、『朝日新聞』2017年09月01日(金)付。

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戦争は対話で解決できる ポピュリズムは差別生む コロンビア・サントス大統領
2017年9月1日
 
単独会見に応じるサントス大統領=30日、ボゴタ、ランハム裕子撮影
 南米コロンビアの内戦終結を主導し、昨年のノーベル平和賞を受賞した同国のフアン・マヌエル・サントス大統領が30日、首都ボゴタの大統領官邸で朝日新聞の単独会見に応じ、「どんなに複雑な状況であっても、戦争は対話で解決できる」と平和への思いを語った。和平合意が昨年の国民投票でいったん否決された経緯を踏まえ、「重大事項を決める手段として国民投票は適切ではない」との考えも示した。

 ▼11面=和平「逆戻りない」

 平和賞受賞後、サントス氏が日本メディアの単独会見に応じたのは初めて。

 同国では半世紀以上にわたり、政府と左翼ゲリラ・コロンビア革命軍(FARC)の内戦が続いた。サントス氏が主導した両者の交渉で昨年、和平合意が実現。FARCは今年6月に武装解除を終了した。一連のプロセスは、長期の内戦を対話で終わらせた成功例として高く評価された。

 サントス氏は今もテロや内戦が絶えない世界へのメッセージとして、「双方の意志で対話し、明確な目標を持てば、武力紛争や戦争は終わらせることができる」と語った。

 ただ同国の和平合意は昨年10月の国民投票で、「ゲリラに譲歩し過ぎている」などとの反発を背景に、小差でいったん否決された。昨年は英国でも、国民投票欧州連合(EU)からの離脱派が小差で勝利するなど、賛否が分かれる重要なテーマについて、国民に直接、是非を問う国民投票の在り方が問われた。

 サントス氏は国民投票について「国民投票は簡単に操作される。問われたテーマではなく他の理由による投票が行われ、目的が損なわれてしまう」と述べた。

 サントス氏は、「自国第一」を掲げるトランプ米大統領のようなポピュリズム政治が世界中で台頭していることについても懸念を示した。「ポピュリズムは過激な人々の温床となる。恐怖や差別を生み、協力を難しくする」と厳しく指摘した。(ボゴタ=田村剛)

 ◆キーワード

 <コロンビア内戦と和平合意> 1964年に結成されたコロンビア革命軍(FARC)は中南米最大の左翼ゲリラに成長。政府軍や右派の民兵組織との半世紀にわたる内戦で、25万人以上が死亡し、多くの国内避難民を生むなど800万人以上が被害を受けたとされる。サントス政権下の2012年、キューバなどの仲介で和平交渉が始まり、昨年に和平合意が成立した。今年6月に武装解除が終了し、FARCは政党へと移行する。
    −−「戦争は対話で解決できる ポピュリズムは差別生む コロンビア・サントス大統領」、『朝日新聞』2017年09月01日(金)付。

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