日記:シリーズ「あんときのデジカメ」 CASIO Exilim EX-S2 2002年 使いやすいスナップショットデジタルカメラ


■市場を大きく揺さぶる「スリム」さと「コンパクト」さ
今回取り上げるのは、CASIO Exilim EX-S2。2002年9月発売の名刺サイズのスリムコンパクトデジタルカメラの「走り」といってよいでしょうか。市場を大きく揺さぶるその「スリム」さと「コンパクト」さの嚆矢になるのは、その3カ月前に発売されたのが「Exilim」の第一弾「EX-S1」。これはパンフォーカスの130万画素デジタルカメラで、その驚異的なサイズに驚いたものですが、3ヶ月後にそのマイナーチェンジ以上の後継機が発売されたため、先にEX-S1を買ってしまい、EX-S2の発売に地団駄踏んだ方も多いのではないでしょうか。

さて、私自身は、同時代的には、S1にしてもS2ににしてもご縁がなく、そのサイズに驚きはしたものの、「ちょっと高いわ−」と思って、スナップショットにはCONTAXTVSを使っておりました。数年後、勤務先の上司が「使わないから」ということでS1を譲ってもらいましたが、既に当時は、そろそろエントリー機でも1000万画素の時代が予想されており、「いまさら130万画素かあ」と思いつつも、その動作の軽快さは、まだまだ実用範囲という感で、何かを写真で記録しておくという意味では、携帯電話に搭載されているカメラよりも……そしてその携帯電話搭載のカメラの画素数の方がはるかに高いにもかかわらず……使い安いという記憶があります。

思えば、デジタル市場の開発ベースとその市場対決というのは恐ろしいもので、次々と老舗カメラメーカーが撤退するなかで、純正なカメラメーカーではない会社が生き残っているのも事実であり、栄枯盛衰といいますか、結局はその商品にどういうリソースを注いでいくのかによって、未来が分岐してしまうのかもしれません。ちなみにデジタルカメラの未来を拓く普及機を初めて発売したのもCASIOであり、windows95時代に、QV-10を使っていたことを懐かしく思ったりもします。

■とにかくシャッターを押すだけでよい
とりあえず動作未確認のジャンクであるS2を450円でゲットしましたので、汎用充電器でバッテリーを充電、SDカードを入れて電源ONで動作。このカメラは、先に言及したとおりパンフォーカス。絞りがf3.2、焦点距離が35mmフィルムカメラ換算で36mmで固定されたカメラ。最短撮影距離は1mで、ズームもなければマクロ撮影もできない。とにかくシャッターだけを押せば良い。フィルムカメラ時代の廉価のコンパクトのオートフォーカスカメラや、「写ルンです」みたいなもので、デジタルカメラ黎明期にもこのパンフォーカスタイプのカメラがそのほとんどだった訳ですが、筐体をスリムに作り出していくゆえでしょうか、あらゆる機能を削ぎ落とし、パンフォーカスでのみ撮影することで、このスリムさとコンパクトさは絞り出されたのかもしれません。
実際に使用してみると、ピントを合わせようとか、ズームしようとかそういう一切の「邪念」がないゆえか、どんどんシャッターを押して撮影できるその「軽快さ」に驚く。数時間で100ショットとかザラで、フィルムカメラ時代では考えられなかったペースで写真を取り続けることができます。もちろん、2GBの容量いっぱいまで写真を撮る前にバッテリーがヘタってしまいますが。

■使いやすいスナップショットデジタルカメラ
撮像素子は211万画素1/1.8型CCDと、このサイズでは非常に大きなCCDを積んでおり、前機種のS1が1/2.7型134万画素CCDなので格段の進歩。S1が現在手元にはないので、簡単な対比は記憶によるしかありませんが、画素数の飛躍は、まったく別のカメラかと思うほど。ISO設定はなく、シャッタスピードは1/4から1/6400まで。1/6400まであると炎天下でもなんとか「色」を拾うことが可能、ただし、周辺光量の低下はどのシーンでも顕著にあらわれ、今の水準からみれば「トイカメラ」チックでもあります。露出補正は可能で、全体の絵作りは「昭和」の「フィルムコンパクトカメラ」で撮影した写真のような感じです。

とにかく軽量で、爆速といえば言い過ぎかもしれませんが、とにかく次のショットにすぐ入れる。「下準備その他特にせず、日常のできごとあるいは出会った光景を一瞬の下に撮影する」ことをスナップショットといいますが、ポケットにいれたたまま、町を歩けば、これほどスナップショット向きのデジタルカメラというのは、他にはなく、できれば、現在の技術水準で同じようなカメラを作って欲しいというのは、ないものねだりでしょうかね(苦笑


以下、作例。ISOオート。オート撮影。ホワイトバランスオート、露出補正なし。筐体はiPhone6sで撮影。画像は1600×1200で保存。








カシオ デジタルカメラ オフィシャルWEBサイト | 製品情報 | EX-S2,M2

時代をリードし続ける「EXILIM」 - 10年の歩みを振り返る (1) EXILIMは、なぜ、どうやって生まれたか | マイナビニュース

Playing old digital camera CASIO Exilim EX-S2 2002 | Flickr



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覚え書:「文庫この新刊! 池上冬樹が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2017年08月20日(日)付。

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文庫この新刊! 池上冬樹が薦める文庫この新刊!

文庫この新刊!
池上冬樹が薦める文庫この新刊!
2017年08月20日
 (1)『創作の極意と掟』 筒井康隆著 講談社文庫 724円
 (2)『夏の沈黙』 ルネ・ナイト著 古賀弥生訳 創元推理文庫 1080円
 (3)『怪談』 小池真理子著 集英社文庫 648円
    ◇
 (1)は、文学指南書的エッセーで「凄味(すごみ)」「色気」から「反復」「幸福」まで31項目。古今東西の文学(あらゆるジャンル)を自在に引用して小説の可能性を説いている。圧倒的な情報量を誇り、いずれ索引から逆引きして再読したくなる。作家志望、プロ作家、文学ファン必読の書。
 (2)は、ミステリーの形をした家族ドラマで、愛と哀(かな)しみと許しを巡るサスペンス。二転三転させ、終盤でも驚きを与え、最後の止めの1行で物語の深さと豊かさを示す。複雑で厳しく冷然たる傑作。
 (3)は、7編の怪談を集めた傑作短編集。衣服の持ち主を探しているうちに現実感覚を失う「カーディガン」、病死した妻と触れ合う「ぬばたまの」、息子の結婚式で出会った男が誰であるかに気づく「還(かえ)る」の3作が特に見事。人も霊もみな温かな感情を抱き、時に歓喜し、時に絶望する姿が切ない。恋愛小説の名手小池はホラー小説の名手でもあり、実に怖く悲しく(時になぜか)喜ばしいのだ。22日発売の『夜は満ちる』も隠れた名作だ。
    −−「文庫この新刊! 池上冬樹が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2017年08月20日(日)付。

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http://book.asahi.com/reviews/column/2017082000003.html



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創作の極意と掟 (講談社文庫)
筒井 康隆
講談社 (2017-07-14)
売り上げランキング: 5,987

夏の沈黙 (創元推理文庫)
ルネ・ナイト
東京創元社
売り上げランキング: 16,332

怪談 (集英社文庫)
怪談 (集英社文庫)
posted with amazlet at 17.08.30
小池 真理子
集英社 (2017-07-20)
売り上げランキング: 20,470

覚え書:「売れてる本 「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 [著]磯田道史」、『朝日新聞』2017年07月30日(日)付。

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売れてる本 「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 [著]磯田道史

売れてる本
司馬遼太郎」で学ぶ日本史 [著]磯田道史
2017年07月30日
■死にかけて考えた軍の不合理

 〈「なぜ日本陸軍は異常な組織になってしまったのか」という疑問〉が、司馬遼太郎にはあったと、磯田さんは語りはじめる。
 明治は徳川を倒してできた。その倒された徳川は織豊(織田・豊臣)から権力を奪ってできた。その奪われた織豊の前には〈まだ日本全体を覆う大公儀(おおこうぎ)〉という権力体はなかった。
 ならば織田信長が生まれたころから日本陸軍が異常な組織になるまでの歴史を、司馬は探っていこうとした。
 司馬は徴兵され、満州で危うく死にそうになる。1940年代において日本陸軍の戦車は、ほとんど1920−30年代のままのような代物だったのだ。自国の戦車が、いわばオワコン(終わったコンテンツ)の低スペックになっている不合理が正されず、〈深く考えない〉習慣が成立してしまったのはなぜか、この問いが司馬の〈創作活動の原点〉だと、磯田さんは続ける。
 こうして織豊→徳川→明治→日中戦争までの日本が、『国盗(と)り物語』『花神』『坂の上の雲』の視点と主題から、語られてゆく。歴史の専門家や、司馬マニアに向けてではなく、あくまでもポピュラーに語られる。最初から最後までたのしく聞ける。読む、というよりも。
 そう、磯田さんは“語り”が上手なのだ。以前から私は磯田さんがラジオで話されるのをたのしみに聞いていた。
 タイトルもうまい。新書タイトルは、教養として役だつ印象を与えねばならないが、売れるためにはもう一つ。その教養を、ラクして与えてもらえそうな印象を与えねばならない。
 『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』なら、役立ち感は文句ない。しかも本家(?)司馬は、『竜馬がゆく』も『坂の上の雲』も8巻ある。『花神』だって3巻だ。なのにこの新書は842円で一冊。「司馬遼太郎の名前はよく知っているが実は読んだことのない人」にはお得感がある。
 もとよりの司馬好き日本史好きは当然心惹(ひ)かれる。字も大きくてよい。
 (姫野カオルコ=作家)
    ◇
 NHK出版新書・842円=6刷8万部 17年5月刊行。「100分de名著」(Eテレ)のテキストを加筆・再構成した。著者は70年生まれの歴史学者(日本近世社会経済史・歴史社会学)。
    −−「売れてる本 「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 [著]磯田道史」、『朝日新聞』2017年07月30日(日)付。

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「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 (NHK出版新書 517)
磯田 道史
NHK出版 (2017-05-08)
売り上げランキング: 363

覚え書:「売れてる本 超 暇つぶし図鑑 [著]ARuFa」、『朝日新聞』2017年08月20日(日)付。

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売れてる本  超 暇つぶし図鑑 [著]ARuFa

売れてる本
超 暇つぶし図鑑 [著]ARuFa
2017年08月20日
■くだらないことを綿密に

 文字通り、超くだらない暇つぶしの方法を写真付きでたくさん説明した、それだけの本です。ネットで人気のライターさんによるもの。
 非凡なくだらないことを思いつく人、というのはわりとよくいると思う。しかし、ふつうはやらない。思いついても、実際にやるのは面倒くさい。でもこの作者はやっちゃうのだ。そこが異常である。
 さっき「暇つぶしの方法」と書いたけど、この本の内容は本当は暇つぶしなんて言葉でくくれるレベルじゃない。最大級にくだらないことにものすごく時間をかけ、綿密に計画して実行し、しっかりおもしろい仕上げにしている。下敷きを大量に連結して「バリア」を張ってみたり、街中の壊れたものと写真を撮って、自らの強大な力によりそれを破壊したかのように見せてみたり、大根にストッキングをはかせてセクシーにしてみたり。発想が小学生男子そのものなのに、すべて実行して写真に残しているのがすごい。
 と、ごくふつうに褒めてしまうとなんだかこの本のどうしようもなさが伝わらないし、まともに褒めるのも悔しいので、私もこの本を使ってしっかり暇つぶしをしました。
 この本、やたら尻に関する内容が多いと思ったので、目次の「尻」の字を数えてみました。目次だけなのに、「尻」は6回も出てきました。途中、「厄介」の「厄」の字を間違えて「尻」でカウントしてしまうという予期せぬトラブルも起こりました。
 そして「股」と「ブリーフ」が2回ずつ出てくることにも気づきました。ついでに言うと「トイレ」「便座」「パンツ」も1度ずつ出てきます。
 かなりくだらない内容であることは分かっていただけたでしょうか。
 ところで、こういう本は絶対こんなところにも仕掛けがあるはずだとおもってカバーを外してみたら、予想通りのすばらしいクオリティーのボツ表紙案が出てきました。さすがです。
 能町みね子(コラムニスト)
    ◇
 宝島社・1058円=3刷7万部 17年5月刊行。著者は91年生まれのライター、ブロガー。05年にネット上で活動を開始した。版元によると「20代女性層から熱い反響がある」という。
    −−「売れてる本 超 暇つぶし図鑑 [著]ARuFa」、『朝日新聞』2017年08月20日(日)付。

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http://book.asahi.com/reviews/column/2017082000002.html


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超 暇つぶし図鑑
超 暇つぶし図鑑
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ARuFa
宝島社
売り上げランキング: 5,866

覚え書:「折々のことば:748 鷲田清一」、『朝日新聞』2017年05月09日(火)付。

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折々のことば:748 鷲田清一
2017年5月9日

 みんな見舞いに来てくれるんやけど、みんなのほうが痛いねん

 (ある高齢の日雇い労働者)

     ◇

 大阪の釜ケ崎で生活保護を受けつつ暮らす男性は、末期がんで入院中の自分を見舞ってくれる仲間を思って、知人の看護師にこう漏らした。病院食にありつける自分とは違い、次の食事をどうするか心細い思いでいるその心情を慮ってか、他人との残されたわずかな糸でさえ切れるという不安を思いやってか、生きることは死ぬより難儀だと思い知るところがってか……。
    −−「

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12927587.html





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