覚え書:「今週の本棚:『幸福度をはかる経済学』=ブルーノ・S・フライ・著」、『毎日新聞』2012年10月21日(日)付。




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今週の本棚:『幸福度をはかる経済学』=ブルーノ・S・フライ・著
 (NTT出版・3570円)

 このところ、幸福をめぐる本が目につく。あえて幸福を論ずることが求められる時代とは、はたして何なのだろうか。本書の原著名も『幸福』、そしてサブタイトルが「経済学の革命」。経済学の歴史で、これまで「革命」と称されたのは、一八七〇年代の「限界革命」と、一九三〇年代の「ケインズ革命」だ。著者の意気込みのほどがうかがわれる。
 戦後の経済学の歴史は、それこそ数学的精緻化と計量化を軸に疾走してきた。でも、それが人間とどう結びついてきたのかと問われれば、きっと多くの経済学者は、言いよどんでしまうのではないか。
 著者はすでに同じテーマの共著『幸福の政治経済学』(邦訳はダイヤモンド社)があるが、今回は、もっと包括的で、幸福をめぐる経済学の現在位置を確かめるように議論が進められている。所得、失業、インフレ、格差、公共財等々、経済分野はもちろん、民主主義、ボランティア、結婚等々、学問分野を越境して議論は進む。決して読みやすいとは言えないけれど、お手軽に幸福が解明できるはずなどないのだから、ここはじっくりと味わうことにしよう。=白石小百合訳(達)
    −−「今週の本棚:『幸福度をはかる経済学』=ブルーノ・S・フライ・著」、『毎日新聞』2012年10月21日(日)付。

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