覚え書:「今週の本棚・新刊:『社会運動の戸惑い』=山口智美、斉藤正美、荻上チキ・著」、『毎日新聞』2013年03月24日(日)付。


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今週の本棚・新刊:『社会運動の戸惑い』=山口智美、斉藤正美、荻上チキ・著
毎日新聞 2013年03月24日 東京朝刊

 (剄草書房・2940円)

 反発、反動を意味する「バックラッシュ」。フェミニズム社会学に関心のある人なら、2000年ごろから各地で起きた男女共同参画条例やジェンダーフリー教育への批判キャンペーンを思い浮かべるだろう。

 フェミニズムに近い立場を取る若手研究者、評論家らが「バックラッシュ派とは本当は誰なのか」という問いを立て、保守運動にかかわった山口県の論評紙編集長や宮崎県都城市議などの元に足を運び、彼らの価値観や問題意識に迫っていく。地方での聞き取りを重ねる中で<市民運動化していく保守運動と、体制保守化していくフェミニズム>という入り組んだ構図が明らかになる。

 彼らはなぜ敢(あ)えて、立場を異にする人々への聞き取りを行ったのか。そこには、現在のフェミニズムに対する批判的なまなざしがある。バックラッシュ派とフェミニストが過度に互いを敵視し論争が過激になったことで、広く社会の関心を集める機会を逸してきたという指摘は、ジェンダーにかかわらず何らかの社会運動にかかわる人々にとって他人事ではないだろう。

 ネット時代の社会運動を考察する上でも示唆に富んでいる。(さ)
    −−「今週の本棚・新刊:『社会運動の戸惑い』=山口智美、斉藤正美、荻上チキ・著」、『毎日新聞』2013年03月24日(日)付。

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http://mainichi.jp/feature/news/20130324ddm015070035000c.html






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