書評:奥井智之『プライドの社会学 自己をデザインする夢』筑摩書房、2013年。



奥井智之『プライドの社会学 自己をデザインする夢』筑摩書房、読了。プライドとは、個人の資質に属しつつも社会的文脈で価値が評価されなければ機能しない。二重に拘束される評価体系を著者はプライド・システムと呼び、従来、心理学の研究対象とされたプライドを社会学的に分析するのが本書。

プライドを持って生きるとは対自関係のみでなく、自他関係の中でで生起する。理想の自己をデザインすることは二重に拘束されている。本書は、自己」「家族」「地域」「階級」「容姿」「学歴」「教養」「宗教」「職業」「国家」を切り口に厄介な夢に切り込む。

厄介なこととは「わたしたちは皆、プライドに取り憑かれて生きている」。プライドを共有する文脈へのレースは、時として、外在集団に対する排他性を招来する。オースティンの名著の即すれば、高慢(プライド)は両義的意義を持つ。対自認識の生成は課題だろう

その人から一人歩きし出すのが「自己をデザインする夢」かも知れない。調停機関としての機能した「国家」に期待することは望み薄だろう。本書は哲学・文芸の古典から黒澤明の名著まで、膨大な素材を取りあげ、根拠を求めてさまようプライドを論じる好著。






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