書評:ミシェル・ヴィノック(大嶋厚訳)『フランスの肖像 歴史・政治・思想』吉田書店、2014年。

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ミシェル・ヴィノック(大嶋厚訳)『フランスの肖像 歴史・政治・思想』吉田書店、読了。「フランスについて、簡単に説明していただけますか」。本書は、フランス近現代史の大家がその疑問に答える「フランス入門」。「フランス国民はフランスの存続を望んでいるか」「忘れられた博愛」まで魅惑的な30章で叙述。

共和国フランスに幾重も流れ込む底流と風土、作られたイメージとその現実。著者は「現代の風景を見失うことなく、その家系図の枝の部分」を縦横に本書で語り、その等身大の「肖像」を明らかにする。大部の著作ながら一気に読んだ。

フランスは教会の長女であると同時に「革命の母」である。この複雑な近代史が、「ライシテ」の起源となる。その思想的経緯を日常感覚を忘れずに描き出す。カトリック国でありながら脱宗教の文化現象の紹介も本書の山場のひとつ。

「知識人は役に立つか」の章が印象的。その役割とは(未完成で改善の余地のある、しかし唯一の人間的な体制としての)「民主主義の擁護者であることだ。有機的かつ批判的に民主主義を擁護することだ」。

「知識人は民主主義を否定し、掘り崩し、打倒しようとする反対者に対抗してその原理を再確認しなければならない。栄光を求める気持ちが、知識人を本来の任務、すなわち私たちがともに生きようとする意志に意義と目的を与えることから逸脱させている。サン・ジェルマン・デ・プレを絶望させてはならない。共和国は、いつでも学者を必要としているのである」。

※初の「吉田書店」さんの本ですが、かっこよすぎますねえ、この一節にはしびれました。





フランスの肖像


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フランスの肖像
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ミシェル・ヴィノック
吉田書店
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