個々の人間、個々の民族の特性をそのまま認めながらも、真に誉むべきものは全人類に属することによってこそきわだつ


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個々の人間、個々の民族の特性をそのまま認めながらも、真に誉むべきものは全人類に属することによってこそきわだつのだという確信を失わぬようにしてこそ、真に普遍的な寛容の精神が最も確実に得られる。
    −−ゲーテ「文学論・芸術論」『世界の名著38 ヘルダー/ゲーテ中央公論社、1979年。

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哲学で文学を扱うのも、今世紀のシラバス・授業評価というがちがちのシステムのなかでは異色だとは思いますが、結局のところ、ひとりひとりの学生さんに「良い本」を読んで欲しいから、少しだけ時間を割いて、

本を読む意味、本を読むコツ、それから文学の私たちに与える役割と詩心の復権……

について、お話をするようにしております。そしてそのひとつのケーススタディとしてドイツの文豪・ゲーテの生涯とその思想を学ぶわけですが、

やっぱり、ゲーテは凄い。

このところ、仕事関係で、現代の排外主義に関する文献を大量に読んでいるのですが、排外でも、そして哲学者か科学者たちが机上で立案したような「普遍」でもないところに、ぼくたち一人一人の個性の輝きと相互尊重、そして同じく「人間」であるという連帯がうまれてくるのではないかと思う。

その精神の軌跡がゲーテの歩みではなかっただろうか、と。


さて……
ちょうど2コマ使って、お話をしましたが、割と熱心に聞いてくださり、担当者としては少しばかりうれしい次第です。

また、学生さんたちは「本を読まなきゃ!」って思うわけですが、授業をするまでは、そのあせりだけで実践を伴わず「うわー!!!」ってなっていた方が多くいたようですが、授業をきっかけに、「○○読み始めましたー!」、「△△を借りてみましたー!」って報告もうけ、お互いに良い刺激になったのではないかと思います。

とにかく大切なのは、「迷っていても始まらない」ですから、「迷っているなら1頁でも読んだ方がいい」ですよ。

ゲーテの思索や、トルストイの探究、ドストエフスキーの苦悩を学ぶなかで、代替不可能な個別の存在者への深み、そして人間であるということへの連帯を、活字と向かい合う中で、自身の手で掴んで欲しいと思います。





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