覚え書:「書評:そのとき、本が生まれた [著]アレッサンドロ・マルツォ・マーニョ [評者]内澤旬子」、『朝日新聞』2013年05月26日(日)付。
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そのとき、本が生まれた [著]アレッサンドロ・マルツォ・マーニョ
[評者]内澤旬子(文筆家・イラストレーター) [掲載]2013年05月26日 [ジャンル]歴史 国際
■出版史から見たヴェネツィア
1987年ヴェネツィアの小さな教会図書館で、コーランが発見された。刊行は1538年以前。世界で最初に印刷されたコーランだった。グーテンベルクが活版印刷を開発し、42行聖書を刊行したのが1455年。それから百年も経たずに、ヴェネツィアではアラビア語活字が作られ使われていたことになる。
アラビア文字は、ラテンアルファベットに比べて1文字ずつ繋(つな)げて鉛活字を組むのが非常に難しい。ルネサンス期のヴェネツィアには、それに挑戦できる資金、技術、人材、販路に加えて言論の自由があったことを示す。一時はドイツをしのぐほどの隆盛ぶりだったという。
アラビア語だけでない。アルメニア語、ギリシャ語、ヘブライ語、キリル文字など多言語に対応。さらに地図や新聞、楽譜、美容、料理にポルノまで。需要の多彩さが、当時のヴェネツィアそのものということなのか。出版史からたどる、ヴェネツィアの知られざる魅力にあふれた一冊。
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清水由貴子訳、柏書房・2205円
−−「書評:そのとき、本が生まれた [著]アレッサンドロ・マルツォ・マーニョ [評者]内澤旬子」、『朝日新聞』2013年05月26日(日)付。
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http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013052600013.html