文明論

拙文:「読書:中嶋洋平『ヨーロッパとはどこか』吉田書店 統合の理想と現実を綴る」、『聖教新聞』2015年05月23日(土)付。

- 読書ヨーロッパとはどこか 中嶋洋平 著統合の理想と現実を綴る ユーラシア大陸の西端の狭い一角に、数多くの主権国家がひしめくヨーロッパ−−複雑な国境線を超えた一つのまとまりとして理解されている。なぜなら、現代世界を規定する理念と仕組みの全ては国…

覚え書:「インタビュー:歴史の巨大な曲がり角 社会学者・見田宗介さん」、『朝日新聞』2015年05月19日(火)付。

- インタビュー:歴史の巨大な曲がり角 社会学者・見田宗介さん 2015年05月19日 深刻な環境問題を抱えつつも、経済成長を求め続ける――。私たちの文明が直面する根本的なジレンマに対して、日本を代表する社会学者・見田宗介さんは「ならば成長をやめればよい…

覚え書:「文化の扉:はじめての丸山眞男 歴史に見る「いま」、未来を切りひらく」、『朝日新聞』2014年10月20日(月)付。

- (文化の扉)はじめての丸山眞男 歴史に見る「いま」、未来を切りひらく 2014年10月20日 「戦後日本を代表する知識人」といわれる丸山眞男。厳格な学者というイメージだが、実際は、おしゃべりでユーモアに満ちていた。生誕百年の今年、様々な先入観を抜き…

覚え書:「書評:植木雅俊『仏教学者 中村元 求道とことばの思想』(角川学芸出版) 多角的な思想の全軌跡=前田耕作」、『週刊読書人』2014年08月22日(金)付。

- 書評 植木雅俊・著 仏教学者 中村元 求道のことばと思想前田耕作多角的な思想の全軌跡活動的な生涯とその開かれた視線をあますところなく活写 1979年12月末、ブレジネフはソ連軍のアフガニスタン侵攻を許可する書類に署名した。『広辞苑』(第3版・…

拙文:「書評 『アジア主義 その先の近代へ』 中島岳志著 潮出版社」、『第三文明』9月、第三文明社、2014年、98頁。

- 書評 『アジア主義 その先の近代へ』 中島岳志著 潮出版社 定価1900円+税「思想としてのアジア主義」の可能性 アジア主義とは国家を超えたアジアの連帯を模索する戦前日本の思想的営みと実践のことだが、日本思想史においては、これほど罵倒にみまれ…

拙文:「読書 社会はなぜ左と右にわかれるのか ジョナサン・ハイト著」、『聖教新聞』2014年07月26日(土)付。

- 読書 社会はなぜ左と右にわかれるのか ジョナサン・ハイト著 高橋洋訳まず直観に基づく道徳的判断 道徳的判断を下す際、それは直観ではなく理性によって導かれると、普段、私たちは考えるが、実際には逆らしい。 本書は膨大な心理実験から「まず直観、それ…

書評:立木康介『露出せよ、と現代文明は言う 「心の闇」の喪失と精神分析』河出書房新社、2013年。

立木康介『露出せよ、と現代文明は言う 「心の闇」の喪失と精神分析』河出書房新社、読了。全てを晒そうとする欲望と内面の露出が人間を突き動かしている。現代文明の特徴とは「露出」ではないか−−挑発的な現代批評だが肯きながら読んだ。躍起になってベール…

書評:ロバート・イーグルストン(田尻芳樹、太田晋訳)『ホロコーストとポストモダン 歴史・文学・哲学はどう応答したか』みすず書房、2013年。

ロバート・イーグルストン『ホロコーストとポストモダン 歴史・文学・哲学はどう応答したか』みすず書房、読了。アドルノを引くまでもなくホロコーストは歴史・文学・哲学」を一変させた。その証言やテクストと論争、それをどのように「読む」のか。本書は、…

書評:木村俊道『文明と教養の〈政治〉 近代以前のデモクラシー』講談社、2013年。

木村俊道『文明と教養の〈政治〉 近代以前のデモクラシー』講談社、読了。本書は近代初期のヨーロッパを中心に、思想史の観点から政治の「原型」を明らかにする試み、著者が注目するのは政治過程ではなく、政治の言説。デモクラシー以前の政治とは「文明」を…

書評:N・ファーガソン(櫻井祐子訳)『劣化国家』東洋経済新報社、2013年。

N・ファーガソン『劣化国家』東洋経済新報社、読了。「なぜ豊かな国が貧困へと逆戻りするのか?」。西欧がトップに立ち続けた二つの要因は民主主義と資本主義、法の支配と市民社会というの4つのエンジンを実装した国民国家。その劣化を前に開発独裁の如き妖…

書評:佐々木俊尚『レイヤー化する世界 テクノロジーとの共犯関係が始まる』NHK出版新書、2013年。

- 金融市場、宗教団体、民族組織、テロリスト、ボランティア活動、自然保護運動、展覧会、国際イベント、ファッション、アートなどさまざまな分野でさまざな人たちや団体がそれぞれにレイヤーをつくり、そこで活動していくでしょう。 そしてそれらのレイヤー…

覚え書:「今週の本棚:養老孟司・評 『ウェブ文明論』=池田純一・著」、『毎日新聞』2013年07月07日(日)付。

- 今週の本棚:養老孟司・評 『ウェブ文明論』=池田純一・著 毎日新聞 2013年07月07日 東京朝刊 (新潮選書・1575円) ◇生きて変化するアメリカ現代社会のスケッチ これはウェブを創りだし、さらにそれを最大限に利用することで、いまも変化しつつある米…

覚え書:「書評:メディアとしての紙の文化史 ローター・ミュラー 著」、『東京新聞』2013年6月30日(日)付。

- 【書評】メディアとしての紙の文化史 ローター・ミュラー 著 2013年6月30日 写真 ◆心血注がれた手紙 [評者]小倉孝誠=慶応大教授 Eメールが一般化した現在、手紙を便箋に書くことは稀(まれ)になってきた。また電子書籍が広く普及すれば、紙媒体の本の…

書評:広井良典『人口減少社会という希望 コミュニティ経済の生成と地球倫理』朝日新聞出版、2013年。

広井良典『人口減少社会という希望 コミュニティ経済の生成と地球倫理』朝日新聞出版、読了。私たちの直面する人口減少社会は「絶望」なのか。著者より豊かな社会へのステップアップ(希望)と捉え、幾つかの処方箋を提示する。フィールドワークに基づく身の…

書評:南川高志『新・ローマ帝国衰亡史』岩波新書、2013年。

- では、この課題に挑戦した結果、ローマ帝国の衰亡とは何であったといえるだろうか。 それは、「ローマ人である」という、帝国を成り立たせていた担い手のアイデンティティが変化し、国家の本質が失われてゆく過程であった。それが私の描いた「ローマ帝国衰…

覚え書:「書評:連続する問題 山城むつみ 著」、『東京新聞』2013年06月16日(日)付。

- 連続する問題 山城むつみ 著 2013年6月16日 ◆加害者性の自覚迫る [評者]井口時男=文芸評論家 このところの中国・北朝鮮・韓国とのトラブルの多くは、近代日本史の「後遺症」に起因している。戦争と植民地支配が終わって七十年近いが、傷口は双方になお…

覚え書:「書評:そのとき、本が生まれた [著]アレッサンドロ・マルツォ・マーニョ [評者]内澤旬子」、『朝日新聞』2013年05月26日(日)付。

- そのとき、本が生まれた [著]アレッサンドロ・マルツォ・マーニョ [評者]内澤旬子(文筆家・イラストレーター) [掲載]2013年05月26日 [ジャンル]歴史 国際 ■出版史から見たヴェネツィア 1987年ヴェネツィアの小さな教会図書館で、コーランが発見された…

覚え書:「今週の本棚:鹿島茂・評 『昨日までの世界 上・下』=ジャレド・ダイアモンド著」、『毎日新聞』2013年05月05日(日)付。

- 今週の本棚:鹿島茂・評 『昨日までの世界 上・下』=ジャレド・ダイアモンド著 毎日新聞 2013年05月05日 東京朝刊 (日本経済新聞出版社・各1995円) ◇自由を求めた文明社会は何を失ったのか 授業で「ALWAYS 三丁目の夕日」が話題にのぼったので…

覚え書:「書評:昨日までの世界(上・下)―文明の源流と人類の未来 [著]ジャレド・ダイアモンド [訳]倉骨彰 [評者]福岡伸一」、『朝日新聞』2013年04月28日(日)付。

- 昨日までの世界(上・下)―文明の源流と人類の未来 [著]ジャレド・ダイアモンド [訳]倉骨彰 [評者]福岡伸一(青山学院大学教授・生物学) [掲載]2013年04月28日 [ジャンル]人文 ■風土と環境因重視、叡智をたどり直す 朝日新聞が、識者アンケートによるゼロ年…

[現代批評][書籍・雑誌]覚え書:「書評:なめらかな社会とその敵 [著]鈴木健/ルールに従う [著]ジョセフ・ヒース [評者]山形浩生」、『朝日新聞』2013年03月25日(日)付。

- なめらかな社会とその敵 [著]鈴木健/ルールに従う [著]ジョセフ・ヒース [評者]山形浩生(評論家)■社会を変革する遠大な思考実験 『なめらかな社会とその敵』の想定読者は三百年後の未来人。だが古代人たる評者にも、その意気込みはわかる。まったく新しい…

覚え書:「今週の本棚:養老孟司・評 『なめらかな社会とその敵』=鈴木健・著」、『毎日新聞』2013年03月24日(日)付。

- 今週の本棚:養老孟司・評 『なめらかな社会とその敵』=鈴木健・著 毎日新聞 2013年03月24日 東京朝刊 (勁草書房・3360円) ◇生命とネットから現代の思考様式を問う 久しぶりに野心的な本を読んだ。若い世代がこういう本を書く時代まで生きたのは、年…

覚え書:「時代の風:宗教と民主主義=仏経済学者・思想家、ジャック・アタリ」、『毎日新聞』2013年03月03日(日)付。

- 時代の風:宗教と民主主義=仏経済学者・思想家、ジャック・アタリ 毎日新聞 2013年03月03日 東京朝刊 ◇過激主義を恐れるな 西アフリカのマリで、イスラム過激派勢力の拡大に対しフランス軍などが軍事介入した。マリで起きていることは私たちが直面する多く…

覚え書:「今週の本棚:松原隆一郎・評 『残すべき建築』=松隈洋・著」、『毎日新聞』2013年02月24日(日)付。

- 今週の本棚:松原隆一郎・評 『残すべき建築』=松隈洋・著 毎日新聞 2013年02月24日 東京朝刊 (誠文堂新光社・1890円) ◇モダニズムの“初心”から解体の無頓着に抗する 日常の生活で出会う、ちょっとした風景に愛着を覚えることは、誰もが経験している…

覚え書:「今週の本棚:持田叙子・評 『冥府の建築家−ジルベール・クラヴェル伝』=田中純・著」、『毎日新聞』2013年02月24日(日)付。

- 今週の本棚:持田叙子・評 『冥府の建築家−ジルベール・クラヴェル伝』=田中純・著 毎日新聞 2013年02月24日 東京朝刊 ◇持田叙子(のぶこ)評 (みすず書房・5250円) ◇「骸」をひきずり「不死」の建築をのこした男の生涯 これは、生れつき重い宿痾(…

覚え書:「今週の本棚:五味文彦・評 『海から見た歴史−東アジア海域に漕ぎだす 1』=羽田正・編、小島毅・監修」、『毎日新聞』2013年02月10日(日)付。

- 今週の本棚:五味文彦・評 『海から見た歴史−東アジア海域に漕ぎだす 1』=羽田正・編、小島毅・監修 毎日新聞 2013年02月10日 東京朝刊 (東京大学出版会・2940円) ◇現在へとみちびく三つの「海の時代」の構図 一五九一年、スペイン領フィリッピンで…

書評:藤原辰史『稲の大東亜共栄圏 帝国日本の〈緑の革命〉』吉川弘文館、2012年。

藤原辰史『稲の大東亜共栄圏 帝国日本の〈緑の革命〉』吉川弘文館、読了。本書は帝国日本の「コメの品種改良の歴史にひそむ、『科学的征服』の野望」を明らかにする一冊。品種改良に取り組んだ農学者の軌跡は、「生態学的帝国主義」の歴史である。緑の革命は…

書評:ニーアル・ファーガソン(仙名紀訳)『文明 西洋が覇権をとれた6つの真因』勁草書房、2012年。

- 「いったいどのようにして……ヨーロッパはこれほど強大になり得たのだろうか。ヨーロッパ人は交易や征服のためにアジアやアフリカをたやすく訪れることができるのに、アジア人やアフリカ人がなぜヨーロッパの沿岸や港湾を侵略して植民地を築けないのだろう…

覚え書:「みんなの広場 はかない命、精いっぱい生きる」、『毎日新聞』2013年01月05日(土)付。

- みんなの広場 はかない命、精いっぱい生きる 中学生 14(東京都八王子市) 私は今、学校の国語の授業で「命」について学んでいる。命というものは、この世の中にいるすべての人がもっているもので、いつ、どこでなくなってしまうか分からない。今こうして…

覚え書:「時代の風:人口減国家の債務解消=仏経済学者・思想家、ジャック・アタリ」、『毎日新聞』2012年12月23日(日)付。

- 時代の風:人口減国家の債務解消=仏経済学者・思想家、ジャック・アタリ 毎日新聞 2012年12月23日 東京朝刊 ◇技術革新と成長不可欠 日本にとって一番の問題は人口だ。この問題こそ国民的議論が必要だ。16日の衆院選で、日本の人口が多すぎるので1億人ま…

書評:サルヴァトーレ・セッティス(石井朗訳)『“古典的なるもの”の未来―明日の世界の形を描くために』ありな書房、2012年。

サルヴァトーレ・セッティス(石井朗訳)『“古典的なるもの”の未来―明日の世界の形を描くために』ありな書房、2012年。古代から現代へ至るヨーロッパ精神史を“classical”を切り口にしながら、その本質といってよい「ヨーロッパとは何か」を浮き彫りにする好…