教養教育

覚え書:「論壇時評:ことばを贈る 根本から考えるために 作家・高橋源一郎」、『朝日新聞』2015年04月30日(木)付。

- 論壇時評:ことばを贈る 根本から考えるために 作家・高橋源一郎 2015年4月30日(写真キャプション)高橋源一郎さん=郭允撮影 東日本大震災からまだ1週間しかたっていなかった2011年3月19日、わたしが勤めていた大学の卒業式が中止になった。理由…

日記:たしかに英語のメニューあったほうが都合はいい「けど」の「けど」の部分

先日、所用で慶應義塾大学三田キャンパスに寄った帰り、そこへいくとかなりの頻度でお世話になる立ち飲み屋に、早い時間ながら吸い込まれてしまいました(涙カウンター越しにそれとなく聞こえてくるのが、店員さんのやりとりですけど……もちろん、常連さんは…

日記:学問の本趣意は読書のみに非ずして精神の働に在り、此働を活用して実地に施すには様々の工夫なかる可らず

金曜日は、所用があってひさしぶりに慶應義塾へ戻る。 用事をすませてしばしキャンパスを散策しつつ、学生時代のことを思い出したりしておりました。さて、昨今、教育再生をめぐる議論で「人文より実学」だとか「グローバル云々」で「即戦力」を大学教育に求…

覚え書:「耕論:何のための英語入試改革 多田幸雄さん、益川敏英さん」、『朝日新聞』2014年11月26日(水)付。

- 耕論:何のための英語入試改革 多田幸雄さん、益川敏英さん 2014年11月26日 大学入試の英語が大きく変わりそうだ。文部科学省は「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を測る方式にかじを切ろうとしている。この改革はいったい何のためなのか。そもそも…

日記:「池上彰と考える」……てもシカタガナイでしょうに。

ウーム、これはひどすぎじゃアございませんか? 日本分子生物学会。http://mbsj.jp/admins/committee/careerpath/doc/careerpath_poster_2014.pdf 池上彰と考える これでいいのか 日本の生命科学研究”ってふられても、池上彰と考えても、日本の生命科学研究…

書評:河野哲也『「こども哲学」で対話力と思考力を育てる』河出ブックス、2014年。

河野哲也『「こども哲学」で対話力と思考力を育てる』河出ブックス、読了。最前線で活躍する著者が、その理論と実践の要を判りやすく書き下ろした、「こども哲学」入門。対話と討論を経ても、あらかじめ決まった意見に集約することが教育なのだろうか。相互…

日記:何が、「スーパーグローバル大学」ですか! もうさ、国家に褒められて嬉しいとか、やめにして欲しいと切に思いますよ

過日、文科省が「スーパーグローバル大学」採択校を発表しましたが、その構想に準じたカリキュラムが、実際のところ、グローバルでも何ンでもないシロモノだから、「スーパーで買うことができるのですか?」ってフイタところ、「大学の運営方針しだいで大学…

覚え書:「時代の風:大学教育の使命=京都大教授・山極寿一」、『毎日新聞』2014年09月07日(日)付。

- 時代の風:大学教育の使命=京都大教授・山極寿一 ◇世界へ学生送り出す窓−−山極寿一(やまぎわ・じゅいち) 第26代京都大学学長の候補に推挙された。10月からその任務に就くことになる。京都大学は自学自習をモットーにし、自由の学風と創造の精神を育…

日記:意識の高い、有意味な言説というドクサ

たまこさんのお世話ちう。土曜日に細君が子供を連れて実家に帰ってしまったので(とほほ、猫のたまこさんと二人ぐらしです。とはいってもほとんど家にいないので少しの時間ですし、今日はぐったりと寝ていたので、少々余裕をもって接していますがものすげえ…

書評:ベネディクト・アンダーソン(加藤剛訳)『ヤシガラ椀の外へ』NTT出版、2009年。

ベネディクト・アンダーソン(加藤剛訳)『ヤシガラ椀の外へ』NTT出版、読了。『想像の共同体』の著者が、その地域研究の軌跡を振り返りながら、学問とは何か縦横に論じた一冊。抜群に面白い。学問で重要なのは、大学の制度や母国といった「ヤシガラ椀」…

覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 進取の精神と柔軟さを=湯浅誠」、『毎日新聞』2014年04月16日(水)付。

- くらしの明日 私の社会保障論 進取の精神と柔軟さを 人財開発の必須事項湯浅誠 社会活動家 4月から法政大学の教授に就任した。所属は現代福祉学部。 法政大は「自由と進歩」、現代福祉学部は「Well-Being(健康で幸せな暮らし)の実現」を理念に掲げる。…

日記:「人生とは個性的に価値あるものと信じて疑わない」からこそ

- アテナイの政治社会へ与えた波紋もさることながら、ソクラテスの登場は、当時の精神的状況を鑑みると、随分な驚きだったのだそうだ。今日でこそ人々は、古くさい日めくりの格言などこころの表面をかすめ去ってゆくにすぎないほどに、人生とは個性的に価値…

書評:金成隆一『ルポ MOOC革命 無料オンライン授業の衝撃』岩波書店、2013年、+ 「ムーク続々、日本の大学も 講義を無料ネット配信」、『朝日新聞』2014年03月21日(金)付。

金成隆一『ルポ MOOC革命 無料オンライン授業の衝撃』岩波書店、2013年、読了。Massive Open Online Courseとは無料公開のオンライン講座の意。本書は、創設から利用者まで、現場取材でその現在をまとめたルポルタージュ。 ルポ MOOC革命 - 岩波書店名門…

日記:2013年度卒業式:最小限の変革共同体としての学友関係

- 「では、つぎにわれわれが探求して示さなければならないのは、思うに、現在もろもろの国において、われわれが述べたような統治のあり方を妨げている欠陥はそもそも何であるか、そして、ある国がそのような国制のあり方へと移行することを可能ならしめるよ…

覚え書:「『反知性主義』への警鐘 相次ぐ政治的問題発言で議論」、『朝日新聞』2014年02月19日(水)付。

- 「反知性主義」への警鐘 相次ぐ政治的問題発言で議論 2014年2月19日 「反知性主義」という言葉を使った評論が論壇で目につく。「非」知性でも「無」知でもなく「反」知性――。政治的な問題発言が続出する現状を分析・批判しようとする意図が見える。■自分に…

書評:大塚ひかり『本当はひどかった昔の日本: 古典文学で知るしたたかな日本人』新潮社、2014年。

大塚ひかり『本当はひどかった昔の日本』新潮社、読了。「昔は良かった」と誰もが言うが、本当に昔の日本は良かったのか。本書は古典を材料にその内実をユーモアに検証する。「古典ってワイドショーだったんですね!」(帯)。昔は良かったwとは大嘘。 『源…

日記:コロンビア大学コアカリキュラム研究会

- 「ところで、そのうちまず優秀者支配制に対応するそれと相似た人間については、われわれはすでにこれを詳しく論じたが、このような人間を善くかつ正しい人間であると、われわれは正当に主張するのだ」 「ええ、すでに論じました」 「そうすると、つぎにわ…

書評:小林秀雄『読書について』中央公論新社、2013年。

小林秀雄『読書について』中央公論新社、読了。「読書の最初の技術は、どれこれの別なく貪る様に読む事で養われる他はない」。表題エッセーをはじめ、「読む」ことと「書く」ことにテーマ絞ったアンソロジー。巻末には対談「教養ということ」(田中美知太郎…

日記:「今読んでいるんです」とはなかなか言えず「今読み返しているのですが」……

(twのまとめですが……)先週の続きで、今日も文学について少々お話をしました。『カラマーゾフの兄弟』における「人類」の議論から、社会実践としてのスピヴァクの可能性へ示唆を飛ばし、世界文学を読むケーススタディとしてゲーテを参照しました。我ながら…

覚え書:「引用句辞典 トレンド編 [大学入制度改革]=鹿島茂」、『毎日新聞』2013年10月26日(土)付。

- 引用句辞典 トレンド編 鹿島茂[大学入試制度改革] 教育の本質はエロス 文科省には無理な話ソクラテスよ、人間はみな、子を宿している。これは体の場合でもあっても、心の場合であっても、同様にいえることだ。そして、時が満ちると、子をなしたくなる。…

書評:新海均『カッパ・ブックスの時代』河出ブックス、2013年、+α

新海均『カッパ・ブックスの時代』河出ブックス、読了。本書は高度経済成長期、数々のベストセラーを送り出したカッパシリーズの歩みとその内実を、シリーズ終焉に立ち会った元編集者が振り返る。新書のはしりは岩波。アンチ教養主義を掲げ大衆実学主義が受…

日記:正しく哲学している人々は死ぬこと練習をしているのだ

- 「ところで、正にこのことが、すなわち、魂の肉体からの解放と分離が、死と名づけられるのではないか」 「まったく、その通りです」 「だが、われわれの主張では、魂の解放をつねに望んでいるのは、特に、いや、ただ、正しくてつがくしている人々だけなの…

書評:北川達夫・平田オリザ『ニッポンには対話がない』三省堂、2008年。

- 北川 相手の見解があって自分の見解がある、それが対立する、対立するとお互いが変わってくる。まさに、その変わってくるところを楽しめるか、そこを重視できるかですよね。回避をせずに、対立を恐れないでぶつかって、そのうえでお互いにどう変われるか、…

日記:人生や仕事での主要な関心は、当初のわれわれとは異なる人間になることです。

- −− あなたは、ごく頻繁に「哲学者」、のみならず、「歴史家」、「構造主義者」、「マルクス主義者」と呼ばれています。コレージュ・ド・フランスにおけるあなたの担当講座の肩書は、「思想体系の歴史の教授」です。このことの意味は何でしょう? わたしが…

社会を批判的にまなざす「力」

金曜日の授業にて、哲学の講座は残り1回になりました。最初の授業から口をすっぱく言っているのですが、本来、大学での学問、なかんずく教養教育とは、例えばそれが外国語を学習するものであったとしても、何かそれは社会の要請に応えるという名の馴化とし…

書評:鳥居龍蔵『ある老学徒の手記』岩波文庫、2013年。

鳥居龍蔵『ある老学徒の手記』岩波文庫、読了。本書は小学校中退で国際的に活躍した東京帝大助教授(人類学)の自伝、1953年朝日新聞社刊行の初の文庫収録。生涯の概要は以下に詳しい(徳島県立鳥居龍蔵記念館) → http://www.torii-museum.tokushima-ec.ed.…

覚え書:「みんなの広場 『過ち繰り返さぬ』歴史の大切さ」、『毎日新聞』2013年06月01日(土)付。

- みんなの広場 「過ち繰り返さぬ」歴史の大切さ 中学生 14(西東京市) 今年は、歴史を教わる先生が去年と代わりました。去年はずっと「どうして歴史を覚えなくちゃいけないの?」と思っており、過去のことを細々と教えられても将来なんの役にもたたないと…

覚え書:「みんなの広場 本当にグローバルな人材とは」、『毎日新聞』2013年05月26日(日)付。

- みんなの広場 本当にグローバルな人材とは 大学生 21(千葉市美浜区) 最近「グローバル人材」という言葉をよく耳にする。特に就職活動を控えた大学生はこの言葉に敏感だ。「グローバル人材になるためにはまずは語学力。そのために英語を勉強しよう」と考…

「話さない」ことも、そして「いない」ということさえ表現かもしれない

- さて、「今朝、何、話したの?」と聞くと、子どもたちは、ほぼ決まって「えぇ、今朝、何話したっけ?」と呟く。私はこれだけでも、この授業(国語授業内での演劇教室のこと……引用者註)の意味があると考えている。話し言葉の教育とは、まずもって、自分の…

覚え書:「今週の本棚:古典を失った大学 近代性の危機と教養の行方=藤本夕衣・著」、『毎日新聞』2013年04月21日(日)付。

- 今週の本棚:古典を失った大学 近代性の危機と教養の行方 藤本夕衣・著 (NTT出版・3990円) かつては世間離れした場として容認されていた大学にも、「改革」の波が打ち寄せる。予算の効率配分、多様なニーズへの対応、キャリア教育等。東大でも、…