書評:角田由紀子『性と法律 変わったこと、変えたいこと』岩波新書、2013年。




角田由紀子『性と法律』岩波新書、読了。法律における女性差別の是正は筆者らの永年の努力で「1ミリ1ミリ」変わってきたが、問題は山積している。何が「変わったこと、変えたいこと」(副題)なのか。本書はその歴史と最前線を丁寧に概観する。 

男女平等を明文化した新憲法と新民法の制定から半世紀以上たつが、DV防止法制定やセクハラに対する意識の変化も同じだけの時間を要した。「泣き寝入り」を認めるのは人間の意識のみならず、個々の法律においても女性への「冷たさと蔑視」が潜在していると著者は言う。

「夫婦げんかは犬も喰わない」。しかし暴力は暴力に過ぎない。日本社会はプライベートの事象では暴力と認めなかった。そしてそれを法律がそれとなく後押しする。しかし公的世界であれ私的世界であれ暴力は暴力に過ぎない。虚偽と対峙した著者の言葉は重い。

戦前民法は明らかに女性を低い存在と規定して来たが、その意識は変わっていないし、「恥」の意識はまだまだ告発を隠蔽する。加えて、現下の不況は女性の就業・育児環境はますます悪化している。しかし変わらないはずはない。筆者の筆からは希望が伝わってくる。 





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