酒
- まっとうなバランス感覚があれば、迷信の付け入る余地はない。「わしの乗った船に限って難破などせぬ」と言い、直ぐ慌てて木に触れる人がいる。何故そんなことをするのだろうか。次の文を目の前にするからだ。「亡くなった人にX氏がいる。驚くべき偶然で、…
- 五六三(861) 私たちの「認識作用」は、量を確立することに制限されている。しかし、私たちがこうした量の差を質とみなすことを妨げるものは、何もない。質は私たちにとっての遠近法的真理であって、いかなる「それ自体でのもの」でもない。 私たちの感官…
- 二合の酒で、いつになく長谷川平蔵は、微酔いになった。 日暮れには、まだ、間がある。 「窓を開けてくれぬか」 酒を運んであらわれた座敷女中にそういいつけた平蔵は、 「おだやかな日和がつづくことよ」 独言のように、いった。 「さようでございます、…
- 「いや、どうも、こんなにしていただいたのじゃあ、わるうございますねえ」 恐縮しながらも明神の次郎吉、わるい気もちではなかった。 行き倒れの坊さんの始末をしたのは、はじめての次郎吉であるが、これまでには小さな善行を何度もつみかさねてきていて…
- 「いや、どうも、こんなにしていただいたのじゃあ、わるうございますねえ」 恐縮しながらも明神の次郎吉、わるい気もちではなかった。 行き倒れの坊さんの始末をしたのは、はじめての次郎吉であるが、これまでには小さな善行を何度もつみかさねてきていて…