書評:北川達夫・平田オリザ『ニッポンには対話がない』三省堂、2008年。
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北川 相手の見解があって自分の見解がある、それが対立する、対立するとお互いが変わってくる。まさに、その変わってくるところを楽しめるか、そこを重視できるかですよね。回避をせずに、対立を恐れないでぶつかって、そのうえでお互いにどう変われるか、そのプロセスを理解することが対話では重要になってきます。回避してしまえば、その場の摩擦を避けることはできても、お互いすれ違いですから、本質的な問題は何も解決しません。
−−北川達夫・平田オリザ『ニッポンには対話がない』三省堂、2008年、167頁。
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北川達夫・平田オリザ『ニッポンには対話がない』三省堂、読了。本書は元外交官でフィンランド教育の紹介者・北川氏と演劇ワークショップで名高い平田氏の対談集。品格や武士道精神よりも、日本社会に必要なのは対話力。本書でふたりは「学びとコミュニケーションの再生」(副題)を縦横に論じる。
正しい意見と間違った意見を先験的に設定し正解へ誘導する日本と、考える力の習熟を目指すフィンランド。冒頭で国語の授業を対比し、リスク(対立や選択に伴う痛み)から移民社会の問題まで。教育現場のコミュニケーション概念を一新する。
「桃太郎は鬼を殺すべきだったか」。「教える立場の人間が、『教え込むことの誘惑』を抑えることができるか」等々。理由もなく人の意見を封殺する風土が根強くある日本社会と現状の不具合だらけのコミュ力を痛罵し、オプションを提案する。
平田氏あとがきが印象的。「協調性(価値観を一つにまとめる能力)がいらないとは言わないけれど、それよりも社交性(異なる価値観をそのままに、知らない人同士がうまくやっていく能力)が必要」。カントを彷彿!教育者に手にとって欲しい。