覚え書:「書評:仏教学者 中村元 植木雅俊・著 学究の生涯と業績描く評伝」、『中外日報』2014年08月08日(金)付。


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書評
学究の生涯と業績描く評伝
仏教学者 中村元
求道のことばと思想
植木雅俊・著

 本書は、人間ブッダに光を当て、ひろく仏教の魅力を伝えた中村元の生涯と業績をたどりながら、その思想の「輪郭」と「核心」を明らかにした評伝だ。
 若き日の中村は、哲学書や宗教書を読みあさった。大学では6千枚の博士論文を書き上げ、ヴェーダーンタ哲学史の千年にわたる空白部分を復元して30歳で文学博士の学位を得た。
 『中村元選集(旧版)』全23巻の完結で文化勲章を受章し、その11年後には決定版『中村元選集』全40巻の出版に取り掛かるという飽くなき探求心。19年がかりで仕上げた『佛教語大辞典』の原稿4万枚が行方言ふ名になっても、作業をやり直して8年がかりで完成させるなど、驚嘆すべき努力家でもあった。
 偏狭なセクショナリズムと生涯闘い続け、東西の思想を比較・吟味して、洋の東西を超える人類共通の智慧を求めた碩学は、常に「分からないことが学問的なのではなく、だれにでも分かりやすいことが学問的なのです」と語った。
 本書は、中村の多くの人に慕われた人柄と、たゆまざる学究の生涯を鮮やかに描き出す。
 本体価格1800円、角川学芸出版(電話03・3238・8521)刊。
    −−「書評:仏教学者 中村元 植木雅俊・著 学究の生涯と業績描く評伝」、『中外日報』2014年08月08日(金)付。

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