覚え書:「今週の本棚・新刊『銀河系惑星学の挑戦 地球外生命の可能性をさぐる』=松井孝典・著」、『毎日新聞』2015年12月27日(日)付。

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今週の本棚・新刊
『銀河系惑星学の挑戦 地球外生命の可能性をさぐる』=松井孝典・著

毎日新聞2015年12月27日

(NHK出版新書・842円)

 人のいさかいは「自分は特別な存在だ」と思いすぎるところから始まる。宇宙観の発展を思いやれば、太陽も地球も無二な存在ではなくなった。生命もその可能性がある。認識を大きく変えうるのが天文学だ。

 学際的な視点で多数の研究、著書のある惑星科学の第一人者の入門書。古代メソポタミアの暦から、探査機ニューホライズンズの冥王星到達、最新知見まで網羅した内容だ。

 「宇宙は一様で、特別な場所はない」という考え方がある。出発点は、地球も太陽を回る惑星の一つにすぎないとしたコペルニクスの地動説だ。著者が惑星科学の転換点として挙げる1960年代のアポロ計画と、95年の太陽系外の惑星発見。前者は惑星の研究が実地調査・検証も可能な科学になった点、後者は「コペルニクス的転換」の大きな発展になった点で重要という。

 手塚治虫の『火の鳥』で、恒星を周回せず宇宙を漂う惑星が登場する場面がある。実際にそんな星が観測される日も近いかも、と思わせるSFロマンを感じつつ、事実を積み重ね、暗い宇宙のはるかに迫るさまを垣間見て、自身のちっぽけさを振り返ってみた。(も)
    −−「今週の本棚・新刊『銀河系惑星学の挑戦 地球外生命の可能性をさぐる』=松井孝典・著」、『毎日新聞』2015年12月27日(日)付。

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