書評:安田敏朗『かれらの日本語 台湾「残留」日本語論』人文書院、2011年。
安田敏朗『かれらの日本語 台湾「残留」日本語論』人文書院、読了。植民地支配下の台湾における国語政策(日本語教育)の実態を明らかにすることで、しばしば郷愁を持って語られる“親日”国台湾の日本語受容の歪んだ歴史を本書は厳格に指摘する。
「同化」「皇国臣民化」としての日本語教育(国語教育)とは、現代人が外国語を学習することと同義ではない。国語教育を通して、トータルに生活を支配していくことだ。傲岸な政策と日本語教育者の傲慢さは、日本人が台湾に抱く薄っぺらい郷愁を排する。
戦後日本人は「かれらの日本語」を再発見することで歪な自己愛にも似た自己正当化の標としたが、各々の言語文化を否定する植民地支配の発想は置き去りにされたままである。
たえず彼らは奪い続けられている。
「ことばはだれのものか」を考えさせられる。