覚え書:「子どもと貧困 『子ども食堂』を支える:上 自慢の食材、元気届け」、『朝日新聞』2016年07月13日(水)付。

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子どもと貧困 「子ども食堂」を支える:上 自慢の食材、元気届ける
2016年7月13日

「ナスを届けるよ!」と張り切る畑づくりボランティアの会メンバー=東京都調布市、堀英治撮影

 各地に広がる「子ども食堂」。無料か安価で食事を出し、家で十分食べられない子どもや地域の子どもの居場所となる活動だ。「自分たちにできること」で運営を支える人たちを、「食材とお金」「場所と役割」の2回に分けて紹介します。

 ■退職後の畑、やりがいに

 57〜83歳の男性8人でつくる東京都調布市の「畑づくりボランティアの会」。1320平方メートルの畑でとれる野菜を、月2回開かれる地元の「こども食堂かくしょうじ」に届ける。6月に収穫したジャガイモはかき揚げになった。小学校の給食残飯を使った粉末が肥料だ。

 市社会福祉協議会の地域福祉コーディネーターが食堂と会をつないだ。代表の玉谷宗夫さん(74)は「安全な野菜が自慢。喜んでもらえると、つくるかいがある」と話す。

 佐賀県鳥栖市の「ほんまち食堂」は地区の評議委員経験者らが運営する。メンバーの久光義則さん(67)は、趣味の家庭菜園が高じ、2千平方メートルの畑を耕す。以前は玄関先で「どうぞご自由に」と収穫物を配ってきたが、多すぎて持て余していた。子ども食堂を開こうと誘われ、「野菜は任せろ」と宣言した。

 料理に使うだけでなく、詰め合わせにして格安で売り、運営資金にあてる。ナス3本、ピーマン3個にトマトも入れて1袋100円。6月は40袋ほど売れた。「退職後の地域活動はがぜんやりがいがあります」と久光さん。

 野菜や米に比べて、提供が少ないのは肉や魚。養豚業を営む北海道帯広市の「マノス」社長、平林英明さん(71)は市内の「おびひろ子ども食堂」に豚肉を無償で提供している。6月はひき肉がハンバーグになった。子ども食堂は新聞で知った。「子どもたちは肉が好きだろうし、肉を食べると元気が出るでしょ」

 沖縄県うるま市の結婚式場「ニュー三和」は子ども食堂「スマイルカフェ」に週1回、チャーハンとスープ35人前を届ける。「ランチバイキングの残りをいただきたい」と申し出を受けたが、「残りものでは申し訳ない」と毎回作る。「お世話になっている地域に還元したい。巨額でもなく、企業として当然」と専務の兼城賢和(けんわ)さん(63)。

 東京都世田谷区のJA東京中央烏山支店は月1回、米5キロや約3千円分の野菜を「ぞんみょうじこども食堂」に提供している。地域貢献活動として始めた。榎本真一支店長(48)は「地元産野菜のおいしさを子どもに伝えるチャンス」と語る。

 ■寄付を積み上げ運営

 運営資金は、ホームページやフェイスブックで活動の様子を伝えた上で、寄付を募るところが目立つ。

 福岡県久留米市の「安武こども食堂」は3月、子どもたち35人がペットボトルで募金箱を作った。会場のコミュニティセンターや地域の医院に置き、小銭を入れてもらう。自治会長が会合に持っていき、集めてくれたことも。これまでに約1万円集まった。

 朝日新聞の調査(2日掲載)では、子どもは無料の食堂がほぼ半数だが、保護者ら大人は有料が8割を超える。

 京都市左京区で週1回開く「こども食堂のような『ファミごはん』」では、大人は懐事情に応じて支払額を決めてもらう。「0円 ヒジョーにキビシイ」「800円 誰かの1人分も払える」など11パターンの額が伝票に印字してあり、自分で印をつけて缶に入れる。苦しい人に無理させず、寄付したい人には出しやすいよう目安を示した。

 CF(クラウドファンディング)を利用し、ネットで資金を募る食堂もある。埼玉県越谷市の「みなみこしがやこども食堂」は、シングルマザーの久野美穂さん(36)が1万円の自腹を切って活動を始めた。25万円あれば、会場使用料や20人分の食材費、ちらしの印刷代などを半年から1年まかなえると計算。手数料を上乗せして、4月に33万円の目標額を集めた。

 地元の主婦(39)は2千円支援した。6歳と1歳の子どもがいて夫とは別居。離婚調停中だ。夫から振り込まれる月10万円で暮らす。「額はわずかですが、せいいっぱいの気持ち。働きながら月1回の食堂を頑張る久野さんを応援したい。親子が安心して過ごせる場になってほしい」

 公益性のある市民活動に補助を出す自治体や自治会もある。大阪府豊中市の「ぐーてん子ども食堂」(月2回)は今年度、市の「とよなか夢基金」から約18万円の助成を受ける。食堂の年予算の半分にあたる。基金の元手は市民や企業からの寄付だ。(河合真美江、中塚久美子)
    −−覚え書:「子どもと貧困 『子ども食堂』を支える:上 自慢の食材、元気届け」、『朝日新聞』2016年07月13日(水)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12456894.html


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