覚え書:「ひと 福岡教育大講師になった韓国人視覚障害者 韓星民さん」、『毎日新聞』2012年9月8日(土)付。





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ひと 福岡教育大講師になった韓国人視覚障害
韓 星民(ハン スンミン)さん(41)

 「視覚障害者教育の支援に役立つけんきゅうがしたい」。20年前の来日後、目に合うルーペとの出合いで生活が一変し、支援機器の重要性を実感した経験がそう語らせる。今春出版した「情報福祉論の新展開」(明石書店)で、機器開発の技術者とユーザーの間に立つ人材の必要性を説き、8月に福岡教育大特別支援教育講座の講師に就任した。来月から始まる授業を前に、「指導技術はもちろんだが、障害当事者のニーズを理解できるニーズを理解できる学生を育てたい」と意気込む。
 中学生の頃、緑内障弱視に。日本でしんきゅうの国家資格を取るために来日し、言葉の問題を理由に入学を渋る京都府立盲学校に3日間、通い詰めて説得した。日本語は独学。使い始めたルーペで漢字を一から覚えた。異国での国家資格取得に自信を深め、夢だった大学に進学。心理学研究者を目指して大学院修士課程まで進んだが、能力の限界を感じて視覚障害者向けの支援機器メーカーに就職した。だが、博士号を持つスタッフの姿に刺激を受け、再び研究者の道へ。立命館大大学院で障害学を学び、昨年、博士号を授与された。
 メーカー時代、録音図書再生機などの開発に携わったが、ほとんど売れなかった。大学院で学んで、理由が分かった。視覚障害者が抱えるさまざまな思いをくみ取れていなかったと。だから、「障害者と言っても、いろいろな人がいて、一人の人間として接することが大切だと学生に伝えたい」と話す。(文・佐木理人 写真・野田武)

韓国・釜山市近郊で医師の長男として生まれる。09年に日本の永住権を取得した。八丈島など離島巡りが趣味。
    −−「ひと 福岡教育大講師になった韓国人視覚障害者 韓星民さん」、『毎日新聞』2012年9月8日(土)付。

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