書評:松田美佐『うわさとは何か ネットで変容する「最も古いメディア』中公新書、2014年。

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松田美佐『うわさとは何か ネットで変容する「最も古いメディア』中公新書、読了。「根も葉もない」とも「火のないところに煙は立たぬ」と両義性をもって扱われるのがうわさ。対極の受容ながらどこか今ひとつわかりにくい。本書は古典的研究を踏まえた上で「ネットで変容する『最も古いメディア』」(副題)の特質を明らかにする。

石油ショック下でのトイレットペーパー騒動や口裂け女といった都市伝説、東日本大震災下におけるチェーンメールやSNSでの不確か情報拡散など、具体的事象を本書は精緻に検証する。事実性を超えた物語は以外にも人々のつながり(関係性)を取り結ぶことには驚く。

「もっとも古いメディアであるうわさは、太古の昔から現在も、そしてこれからも、情報を伝えるだけでなく、人と人との“つながり”=関係性を結ぶ。さまざまな新しいメディアによってうわさも人と人との“つながり”=関係性も変容する」。

うわさと聞けば、強烈な反発と「もしかして」という二者択一で議論されがちだが、冷静にその本質を腑分けする本書の議論は、その本質を把握したうえで、どのように「付き合っていけばよいのか」読み手に示唆する。現代を理解する上での非常に秀逸な一冊。 






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