日記:「『大切な遍路道』を朝鮮人の手から守りましょう」こそ、空海の精神、そして仏教の精神、そしてもっといえば、宗教とは全く対極の立場

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日本仏教の現状に私は懐疑的であるし、大戦下において一部の密教僧侶のルーズベルト呪詛などというソレは確かに噴飯ものだけど、インドで誕生し、中国・朝鮮半島を経て日本へ伝来した三国仏教史としての日本的展開(文化内開花)を考えるならば、その直因は朝鮮半島にあり、空海最澄が学んだ中国大陸に大恩がある。

精神として排外主義とは相容れない場所で差別表現はあり得ない。

蘇我物部抗争で出てくるのが仏教=「蕃神」という批判がある。しかしその蕃神論は、政治抗争におけるイデオロギー議論に過ぎず、そこに宗教の真性論を見い出すことは不可能だし、聖徳太子以降の受容経緯を考えると、大陸からの仏教輸入に力をいれてきたのが日本の歴史であり、宗教史である。
※もちろん、その負の側面が「御用」としての「鎮護」議論になるのですがここではひとまず措く。

だとすれば、朝鮮半島や中国大陸に対する報恩はあったとしても、根拠のない蔑視は日本の歩みそのものの全否定へと連動する。

私自身は、空海(お大師さん)の生まれ故郷・総本山善通寺の生まれだから、八十八カ所には幼い頃から親しんできている。観光的側面は否定しないけれども、だからこそ、特定の誰かを入れないというのは、違う訳でして……。

「『大切な遍路道』を朝鮮人の手から守りましょう」こそ、空海の精神、そして仏教の精神、そしてもっといえば、宗教とは全く対極の立場だ。

お遍路さんの衣の背中には「南無大師遍照金剛」と記されている。「遍く照らす」ということを考えてもらいたい。


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差別貼り紙:遍路道に 外国人排斥 徳島、高松の5休憩所
毎日新聞 2014年04月10日 夕刊

 四国遍路の巡礼者が使う休憩所のうち、徳島県高松市の計5カ所で、朝鮮人排斥を訴える紙が貼られていたことが10日、分かった。貼り紙は「日本の遍路道を守ろう会」との名で、「礼儀しらずな朝鮮人達が気持ち悪いシールを四国中に貼り回っています。見つけ次第、はがしましょう」などと印刷されていた。事態を受けて、徳島県遍路道のある県内各市町村に確認を呼び掛け、徳島県警軽犯罪法違反(はり札乱用)容疑を視野に情報収集している。

 徳島県内では、徳島市の観光施設「阿波おどり会館」前の休憩所で4枚▽吉野川市の休憩所で1枚▽阿波市の休憩所で2枚−−の計7枚が見つかった。一番札所「霊山寺(りょうぜんじ)」(鳴門市)でも枚数は不明だが、発見された。

 高松市一宮町の休憩所では、先月28日朝、管理人の男性(71)が貼り紙1枚を発見し、その場ではがしたという。

 札所の寺院で組織する四国八十八カ所霊場会は昨年12月、外国人として初めて、遍路道の案内役や巡拝作法を手ほどきする「先達(せんだつ)」に4度目の結願(遍路終了)をした韓国人女性の崔象喜(チェサンヒ)さん(38)=ソウル市=を認定した。崔さんは、インターネットで遍路文化を紹介するサイトや、遍路宿や休憩所にハングルで書かれた自作のシールを貼るなど海外に遍路を紹介する活動を続けており、貼り紙は崔さんを中傷したものとみられる。【加藤美穂子、立野将弘、伊藤遥】
    −−「差別貼り紙:遍路道に 外国人排斥 徳島、高松の5休憩所」、『毎日新聞』2014年04月10日(木)付(夕刊)。

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http://mainichi.jp/area/news/20140410ddh041040010000c.html



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差別貼り紙:遍路道に 愛媛大学「四国遍路と世界の巡礼」研究会代表の寺内浩教授の話
毎日新聞 2014年04月10日 大阪夕刊

 ◇大きな違和感−−愛媛大学「四国遍路と世界の巡礼」研究会代表の寺内浩教授(日本史)の話

 大変残念だ。四国遍路は巡礼する人の悩みや苦しみを受け入れ、地域に「お接待」の文化が根付くもの。八十八カ所霊場を開いたとされる弘法大師空海は、中国に渡り、インド発祥の仏教を学んでおり仏教自体が国際的なものだ。その場に、特定の外国人差別を持ち込むことに、大きな違和感を覚える。
    −−「差別貼り紙:遍路道に 愛媛大学「四国遍路と世界の巡礼」研究会代表の寺内浩教授の話」、『毎日新聞』2014年04月10日(木)付(大阪夕刊)。

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http://mainichi.jp/area/news/20140410ddf041040021000c.html

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