拙文:「読書:中嶋洋平『ヨーロッパとはどこか』吉田書店 統合の理想と現実を綴る」、『聖教新聞』2015年05月23日(土)付。

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読書

ヨーロッパとはどこか
中嶋洋平 著

統合の理想と現実を綴る

 ユーラシア大陸の西端の狭い一角に、数多くの主権国家がひしめくヨーロッパ−−複雑な国境線を超えた一つのまとまりとして理解されている。なぜなら、現代世界を規定する理念と仕組みの全ては国家横断的なヨーロッパに由来するからだ。しかし、どこまでヨーロッパなのか? いつからまとまったのか? と聞かれれば、正確に答えることは難しい。
 本書は「統合」をキーワードに、現代に至るまでの歴史を概観し、その過程で主張されたビジョンと実践を検討する。一つのヨーロッパをあぶり出すとともに、2000年の歴史そのものを描き切る労作だ。
 ヨーロッパの歴史は、今なお諸国家間の争いの連続である。にもかかわらず、統合を理想としたことに注目すべきだ。その枠組みも決して不変不動のものではない。
 「ヨーロッパとは決して自然に与えられたものではない。ヨーロッパ統合もその未来も当事者たちによって創り出されるものである」
 「われわれ」意識は常に外部を必要とし、排除か同化かの二者択一に迫られる危険も伴うが、そうした統合の「夢と現実」を踏まえる本書は、共同体構想を考える上でも示唆に富む。(氏)
●吉田書店・2592円
    −−「読書:中嶋洋平『ヨーロッパとはどこか』吉田書店 統合の理想と現実を綴る」、『聖教新聞』2015年05月23日(土)付。

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ヨーロッパとはどこか――統合思想から読む2000年の歴史
中嶋洋平
吉田書店 (2015-03-20)
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