覚え書:「書評:池田晶子 不滅の哲学 若松英輔著」、『聖教新聞』2014年01月08日(水)付。
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「言葉」は自身を絶望から救う
「苦難や危機に際して人が本当に必要とするものは、必ず言葉であって、金や物ではあり得ない」(池田晶子)。著者は、池田晶子が残した言葉を手掛かりに「言葉」と哲学とを考えていく。
「言葉」は言語とは限らない。色や音、まなざしでもある。「言葉」はどんな人にも寄り添う。魂にふれる何かであり「コトバのもっとも重要な働きは救済である」。私たちは「言葉」に出合わねばならないと著者は言う。自分が救われるとともに、自らが「救い」という大きなうねりの一部になるために。
「コトバ(言葉)」は、おそらく宇宙の法則とも、道とも言い換えてよい。生きることは、書くことも考えることも祈ることも、それを聞き取り、それに向かって自分を開きゆくことだ。そして、その開かれた精神の場には、時空を超えて、師弟が常に共に在る。
真の哲学は普遍を志向するが、自己の経験や悲しみは大切だ。言葉の深みへは知識だけでは到達できないし、生活に立脚しない哲学はない。人は悲しみを通して世界と繋がる。
哲学は励ましてくれる。「君を救うのは君だ」と。君は君を待つ他者のために「自身を絶望の底から救いあげなくてはならない」。そして人は誰しも、自らを救った「言葉」を伝える「使命」を託されているのだと。(樹)
トランスビュー・1890円
−−「書評:池田晶子 不滅の哲学 若松英輔著」、『聖教新聞』2014年01月08日(水)付。
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