哲学・倫理学(儒学)

書評:小島毅『増補 靖国史観』ちくま学芸文庫、2014年。

小島毅『増補 靖国史観』ちくま学芸文庫、読了。天皇中心の日本国家を前提し、内戦の勝者・薩長の立場から近代を捉えるご都合主義の「靖国史観」、これまで外在的批判は多数あったが、本書は「日本思想史を読みなおす」(副題)ことで、思想史的に内在的に批…

書評:子安宣邦『思想史家が読む論語 「学び」の復権』岩波書店、2010年。

子安宣邦『思想史家が読む論語 「学び」の復権』岩波書店、読了。「論語」ほど注解の多い書物はあるまい。しかし、オリジナルとコピーの豊穣さが読み手を幻惑してしまう。本書は、思想史を踏まえた上で、「読む」意義を一新する一冊。本書を読むうちに「論語…

書評:姜在彦『朝鮮儒教の二千年』講談社学術文庫、2012年。

姜在彦『朝鮮儒教の二千年』講談社学術文庫、読了。本書は朝鮮儒教二千年の歴史を丹念に描き出した労作。中日と対比し朝鮮儒教の独創的展開と東アジア的普遍性を浮き彫りにする。圧巻は李氏朝鮮の朱子学受容と鎖国と開国への経緯。経世済民と切り離された形…

書評:小倉紀蔵『朱子学化する日本近代』藤原書店、2012年。

小倉紀蔵『朱子学化する日本近代』藤原書店、読了。儒教社会から脱皮(西洋化)することが近代日本の歩みであるとの通説を打破するのが本書の狙い。著者によれば「日本の近代化は半儒教的な徳川体制を脱皮し、社会を『再儒教化』する過程」であり、福沢諭吉…

自分で考えると同時に学ぶこと

- 子供は遊技から学習という厳粛な行為へ移行することによって少年になる。子供たちはこの時代に、好奇心、とくに歴史に対する好奇心にもえ始める。子供たちにとって彼らに直接には現われない諸表象が問題になる。しかし主要な問題はここでは、彼らの心のな…

「我々の為し得る最善のことは、他者に対する冷酷さを抑制することである」の現況……

- ……私は漠然と、西洋の考え方では、他者との組み合せの関係が安定した時に心の平安を見出す傾向が強いこと、東洋の考え方では、他者との全き平等の結びつきについて何かの躇いが残されていることを、その差異として感じている。我々日本人は特に、他者に害…

西洋の哲学と東洋や日本の伝統思想とではどこがちがうのだろうか。

- ……西洋のと東洋や日本の伝統思想とではどこがちがうのだろうか。まさにそのことを問題にして橋本峰雄(「形而上学を支える原理」、岩波講座『哲学』第十八巻「日本の哲学」一九六九年、所収)は次のように書いたことがある。 すなわち、《明治以前のわが国…

【再掲】思わず知らずハッとしてかけつける

- 孟子曰、人皆有不忍人之心、先王有不忍人之心、斯有不忍人之政矣、以不忍人之心、行不忍人之政、治天下可運之掌上、所以謂人皆有不忍人之心者、今人乍見孺子将入於井、皆有怵恕泊ェ隠之心、非所以内交於孺子之父母也、非所以要誉於郷党朋友也、非悪其聲而然…

【再掲】ドナドナ倫理学

- 「ドナドナ」 安井かずみ訳詞・ショロム セクンダ作曲ある晴れた 昼さがり いちばへ 続く道 荷馬車(にばしゃ)が ゴトゴト 子牛を 乗せてゆく かわいい子牛 売られて行くよ 悲しそうなひとみで 見ているよ ドナ ドナ ドナ ドナ 子牛を 乗せて ドナ ドナ …