自然科学

日記:「未来はよくなる」し「未来をよくしていこう」と思っていたけど……1995年という問題。

こないだ若い衆と呑んだとき話題になったのが、村上春樹さんが、“「孤絶」超え、理想主義へ」”(*1)を語ったこと。思い出すと、春樹さんではないけど、高校3年の時に、ベルリンの壁が崩壊したボクにも「未来はよくなる」というか「よくしていこう」と思…

書評:野家啓一『科学の解釈学』講談社学術文庫、2013年。

野家啓一『科学の解釈学』講談社学術文庫、読了。科学は果たして万能か。信仰にも似た科学へ信頼は諸学の隷属化すら招いている。本書は、その対極の反科学主義を排しながら、「科学を御神体として後生大事に抱え込む哲学的傾向に見られるこうした『俗悪さ』…

書評:トーマス・D・シーリー(片岡夏実訳)『ミツバチの会議 なぜ常に最良の意思決定ができるのか』築地書館、2013年。

トーマス・シーリー『ミツバチの会議 なぜ常に最良の意思決定ができるのか』築地書館、読了。各々が仕事を分担し複雑な共同生活を営むミツバチ。どうして高度な社会を営むことが可能か。本書は探索バチの巣分かれ行動の分析を通じてその疑問に答える。ミツバ…

書評:ラッセル・スタナード(新田英雄訳)『相対性理論 常識への挑戦』丸善出版、2013年。

ラッセル・スタナード『相対性理論 常識への挑戦』丸善出版、読了。本書はオックスフォード大学出版局より刊行のVery Short Introductionシリーズの一冊。特殊相対性理論と一般相対性論を中学生でもわかるように分かり易く解説することに挑戦した一冊(新書…

覚え書:「深海魚ってどんな魚―驚きの形態から生態、利用 [著]尼岡邦夫 [評者]荒俣宏」、『朝日新聞』2013年07月21日(日)付。

- 深海魚ってどんな魚―驚きの形態から生態、利用 [著]尼岡邦夫 [評者]荒俣宏(作家) [掲載]2013年07月21日 [ジャンル]科学・生物 ■大人の世界観、揺さぶる図鑑 ただの子ども向け学習図鑑と思ってはいけない。これは大人も驚かす本である。 これまでの深海魚本…

覚え書:「今週の本棚:中村桂子・評 『世界の技術を支配するベル研究所の興亡』=ジョン・ガートナー著」、『毎日新聞』2013年07月21日(日)付。

- 今週の本棚:中村桂子・評 『世界の技術を支配するベル研究所の興亡』=ジョン・ガートナー著 毎日新聞 2013年07月21日 東京朝刊 (文藝春秋・2520円) ◇情報革命の礎を築いた「驚異の組織」の秘密 ビル・ゲイツが「タイムマシンに乗ることがあったら、…

覚え書:「輸血医ドニの人体実験―科学革命期の研究競争とある殺人事件の謎 [著]ホリー・タッカー [評者]内澤旬子」、『朝日新聞』2013年07月07日(日)付。

- 輸血医ドニの人体実験―科学革命期の研究競争とある殺人事件の謎 [著]ホリー・タッカー [評者]内澤旬子(文筆家・イラストレーター) [掲載]2013年07月07日 [ジャンル]ノンフィクション・評伝 ■血は畏怖の対象、生命の定義問う 現代では、ごく当たり前の処置…

覚え書:「今週の本棚・新刊:『森のふしぎな生きもの 変形菌ずかん』=川上新一・著、伊沢正名・写真」、『毎日新聞』2013年07月07日(日)付。

- 今週の本棚・新刊:『森のふしぎな生きもの 変形菌ずかん』=川上新一・著、伊沢正名・写真 毎日新聞 2013年07月07日 東京朝刊 (平凡社・1680円) 変形菌(粘菌)は、小さくて、色とりどりで、自由自在にかたちが変わる不思議な生きもの。アメーバにな…

覚え書:「主役はダーク・科学を語るとはどういうことか [著]須藤靖 伊勢田哲治 [評者]川端裕人」、『朝日新聞』2013年06月30日(日)付。

- 主役はダーク・科学を語るとはどういうことか [著]須藤靖 伊勢田哲治 [評者]川端裕人(作家) [掲載]2013年06月30日 [ジャンル]科学・生物 ■怒り心頭の物理学者、科学哲学者と大激論 『主役はダーク』は破格の科学エッセーだ。最新の天文学、宇宙物理学を独…

覚え書:「書評:植物はそこまで知っている [著]ダニエル・チャモヴィッツ」、『朝日新聞』2013年06月09日(日)付。

- 植物はそこまで知っている [著]ダニエル・チャモヴィッツ [掲載]2013年06月09日 [ジャンル]科学・生物 植物は人が近づいて来るのを「見ている」。さらに、葉をちぎられたことを「記憶する」という。想像以上に発達している植物の感覚について、生物学者が…

覚え書:「今週の本棚:村上陽一郎・評 『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』『宇宙はこう考えられている』」、『毎日新聞』2013年05月26日(日)付。

- 今週の本棚:村上陽一郎・評 『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』『宇宙はこう考えられている』 毎日新聞 2013年05月26日 東京朝刊 ◆『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』=村山斉・著、聞き手・高橋真理子(朝日新書・819円) ◆…

覚え書:「今週の本棚:小島ゆかり・評 『生命の逆襲』=福岡伸一・著」、『毎日新聞』2013年05月19日(日)付。

- 今週の本棚:小島ゆかり・評 『生命の逆襲』=福岡伸一・著 毎日新聞 2013年05月19日 東京朝刊 (朝日新聞出版・1470円) ◇生物の“諭しの声”に耳を傾ける 週刊誌『AERA』に連載中の生物学コラム「ドリトル先生の憂鬱」を新編集した一冊。つまり『遺…

覚え書:「今週の本棚:中村桂子・評 『われらはチンパンジーにあらず』=ジェレミー・テイラー著」、『毎日新聞』2013年04月07日(日)付。

- 今週の本棚:中村桂子・評 『われらはチンパンジーにあらず』=ジェレミー・テイラー著 毎日新聞 2013年04月07日 東京朝刊 (新曜社・4410円) ◇ヒトを特徴づけるものとは何か ヒトゲノム(細胞核内のDNAのすべて)とチンパンジーゲノムでは、一・六…

覚え書:「今週の本棚:村上陽一郎・評 『「つながり」の進化生物学』=岡ノ谷一夫・著」、『毎日新聞』2013年03月17日(日)付。

- 今週の本棚:村上陽一郎・評 『「つながり」の進化生物学』=岡ノ谷一夫・著 毎日新聞 2013年03月17日 東京朝刊 (朝日出版社・1575円) ◇生物の行動から導き出す「こころ」の効用仮説 ハダカデバネズミという、かわいそうな名前をつけられた動物を、こ…

覚え書:「今週の本棚:養老孟司・評 『アリの巣の生きもの図鑑』=丸山宗利ほか著」、『毎日新聞』2013年02月24日(日)付。

- 今週の本棚:養老孟司・評 『アリの巣の生きもの図鑑』=丸山宗利ほか著 毎日新聞 2013年02月24日 東京朝刊 (東海大学出版会・4725円) ◇たがいに関わり合って生きる者たちに学ぶ とても面白い図鑑である。アリの巣に住んだり、アリの巣となにか関係を…

覚え書:「書評:月―人との豊かなかかわりの歴史 [著]ベアント・ブルンナー [評者]横尾忠則」、『朝日新聞』2013年02月10日(日)付。

- 月―人との豊かなかかわりの歴史 [著]ベアント・ブルンナー [評者]横尾忠則(美術家)■多くの優れた芸術生み出す キース・ヘリングは恋人に呼び掛けるように月に想(おも)いを語り、それをTシャツに書いた。フェデリコ・フェリーニは映画「ボイス・オブ・ム…

覚え書:「今週の本棚:気になる科学 元村有希子・著」、『毎日新聞』2013年02月10日(日)付。

- 今週の本棚:気になる科学 元村有希子著 (毎日新聞社・1575円) 毎日新聞社科学環境部といえば、思い出すのは日本の科学と科学者の現実を生々しく追って私たち科学者にはちょっと切なくもあった、『理系白書』である。その著者たる毎日新聞科学環境部…

覚え書:「今週の本棚:海部宣男・評 『10万年の未来地球史』=カート・ステージャ著」、『毎日新聞』2013年01月20日(日)付。

- 今週の本棚:海部宣男・評 『10万年の未来地球史』=カート・ステージャ著 (日経BP社・2310円) ◇「始めてしまった」温暖化の行方を見極める 本書の表題に、「そーんな先の話?」という方もあろう。だがこれは温暖化問題に関心を寄せる読者には、…

覚え書:「今週の本棚:養老孟司・評 『ひとの目、驚異の進化』=マーク・チャンギージー著」、『毎日新聞』2013年01月06日(日)付。

- 今週の本棚:養老孟司・評 『ひとの目、驚異の進化』=マーク・チャンギージー著 (インターシフト・1995円) ◇「見ること」の常識を変えて「自ら」を知る ソクラテスは「汝(なんじ)、自らを知れ」といったという。科学の世界はものを考える人たちの…

覚え書:「今週の本棚:中村桂子・評 『動物に魂はあるのか』=金森修・著」、『毎日新聞』2012年11月11日(日)付。

- 今週の本棚:中村桂子・評 『動物に魂はあるのか』=金森修・著 (中公新書・924円) ◇「機械論」から「現代の霊魂論」への科学思想 「恐らく、多くの読者は<動物機械論>についてならどこかで聞いたことがあっても、本書の主題<動物霊魂論>などは、…

覚え書:「今週の本棚:海部宣男・評 『ヒトはなぜ難産なのか』=奈良貴史・著」、『毎日新聞』2012年10月7日(日)付。

- 今週の本棚:海部宣男・評 『ヒトはなぜ難産なのか』=奈良貴史・著 (岩波科学ライブラリー・1260円) ◇人類学の視点で「お産」という大事と向き合う お産が女性にとって大変な難事業だということは、男性でもみな知っている。けれど、数多(あまた)…

覚え書:「ネアンデルタール人 奇跡の再発見 [著]小野昭/化石の分子生物学 [著]更科功、評者・福岡伸一」、『朝日新聞』2012年9月30日(日)付。

- ネアンデルタール人 奇跡の再発見 [著]小野昭/化石の分子生物学 [著]更科功 評者・福岡伸一(青山学院大学教授・生物学) ■あり得たもう一つの「人類」 人権、人命、平等の尊重。我々人類にとってあまりにも普遍的な規範は、実は意外なことに2万数千年ほど…

覚え書:「今週の本棚:養老孟司・評 『虫から始まり虫で終わる』=大澤省三・著」、『毎日新聞』2012年09月09日(日)付。

- 今週の本棚:養老孟司・評 『虫から始まり虫で終わる』=大澤省三・著 (クバプロ・2940円) ◇基礎研究が実を結んだ昆虫進化学の大成果 基礎科学という仕事は地味である。たとえノーベル賞をもらうような優れた業績があっても、それがどんな仕事だった…

「手を汚したり体を使ったりする習慣」から始まる「文明の転換」

- 私が年来主張してきたことは、大型化・集中化・一様化とは対極的な、小型化・分散化・多様化の技術への転換である。太陽光発電、井戸水の利用、小川の急流を利用した小型水力発電、家畜の排泄物からのメタンガス発電、地熱や潮流を利用した発電、熱と電気…

覚え書:「今週の本棚:伊東光晴・評 『原子力 その隠蔽された真実』=ステファニー・クック著」、『毎日新聞』2012年1月15日(日)付。

- 今週の本棚:伊東光晴・評 『原子力 その隠蔽された真実』=ステファニー・クック著 (飛鳥新社・2415円) ◇「平和と軍事」論争の秘められた歴史に迫る 何が隠されていたのか。 まず、アメリカの国務長官アチソンと、TVA(テネシー河流域開発公社)…

『汝は人間であって、決して神ではないことを知れ』という意味

- このような古い問題と科学のあの新しい出発に直面して、哲学が今一度自らの古い機能全体を引き受け、われわれの知のすべてを統一的世界像として合一させることができるはずだなどとは、誰も考えないだろう。ところが、人間が哲学への、すなわち〈知らんと…

覚え書:「急接近:藤垣裕子さん 原発事故後の科学技術と社会の関係は?」、『毎日新聞』2011年12月24日(土)付。

- 急接近:藤垣裕子さん 原発事故後の科学技術と社会の関係は? <KEY PERSON INTERVIEW> 東京電力福島第1原発の事故後、放射線被ばくの許容量や食品の安全性をめぐって判断がぶれる政府や科学者への不信が高まっている。藤垣裕子・東京…

覚え書:「語る:加藤尚武さん 『災害論』を刊行」、『毎日新聞』2011年11月17日(木)付。

- 語る:加藤尚武さん 『災害論』を刊行 ◇原発事故は哲学への挑戦 福島第1原発事故の背景には、原子力をめぐる高度な技術の壁が潜んでいる。未曽有の事態を前に、何を出発点に、どんな順番で考えるべきかが見えない不安も人々の中にある。哲学者の加藤尚武…

覚え書:「今週の本棚:池内紀・評 『福島の原発事故をめぐって…』=山本義隆・著」、『毎日新聞』2011年10月16日(日)付。

- 今週の本棚:池内紀・評 『福島の原発事故をめぐって…』=山本義隆・著『福島の原発事故をめぐって−いくつか学び考えたこと』 みすず書房・1050円 ◇「国家主導科学」の論理を反証する 福島原子力発電所の大事故をめぐっては数多くの本が出ている。その…

覚え書:「今週の本棚:海部宣男・評 菊池誠・松永和紀ほか著『もうダマされないための「科学」講義』」、『毎日新聞』2011年10月16日(日)付。

- 今週の本棚:海部宣男・評 『もうダマされないための「科学」講義』 菊池誠・松永和紀ほか著 光文社新書・798円 ◇社会と科学を巡る論点を見極めるには 私たちの生活は、科学とは表裏一体の関係で結ばれている。人間の社会は科学と技術とそれらを基礎に…