2013-01-01から1年間の記事一覧

書評:宇野重規『民主主義のつくり方』ちくま書房、2013年。

宇野重規『民主主義のつくり方』ちくま書房、読了。深まる政治への不信と無力感。政治の回路もうまく機能していない現代日本。しかし容易に手放すことは私たち自身の首を絞めることになる。プラグマティズム型民主主義をヒントにその再生を目指す好著。トク…

覚え書:「臨時軍事費特別会計―帝国日本を破滅させた魔性の制度 [著]鈴木晟 [評者]保阪正康(ノンフィクション作家)」、『朝日新聞』2013年12月15日(日)付。

- 臨時軍事費特別会計―帝国日本を破滅させた魔性の制度 [著]鈴木晟 [評者]保阪正康(ノンフィクション作家) [掲載]2013年12月15日 [ジャンル]歴史 政治 ■内訳や実態解明への先導役 日中戦争開始後に近衛内閣のもとで、「臨時軍事費特別会計法」が公布された。…

覚え書:「ガガです、ガカの―ロシア未来派の裔ゲオルギイ・コヴェンチューク [著]片山ふえ [評者]横尾忠則(美術家)」、『朝日新聞』2013年12月15日(日)付。

- ガガです、ガカの―ロシア未来派の裔ゲオルギイ・コヴェンチューク [著]片山ふえ [評者]横尾忠則(美術家) [掲載]2013年12月15日 [ジャンル]人文 アート・ファッション・芸能 ■天と通じた芸術家、宿命の試練 ガガといえば歌手のレディー・ガガが有名だが本…

覚え書:「みんなの広場 戦争の『狂気』は内側から」、『毎日新聞』2013年12月16日(月)付。

- みんなの広場 戦争の「狂気」は内側から 大分県国東市 46 戦争へ向かう国の前段階というのは皆似たような様相を呈すのだろう。経済政策が一息ついたかと思いきや、あっという間に戦時体制に衣替えをする早業を見せた安倍政権。一部の人たちは熱狂的に、ま…

覚え書:「ミツバチの会議―なぜ常に最良の意思決定ができるのか [著] トーマス・D・シーリー [評者]田中優子(法政大学教授・近世比較文化)」、『朝日新聞』2013年12月15日(日)付。

- ミツバチの会議―なぜ常に最良の意思決定ができるのか [著] トーマス・D・シーリー [評者]田中優子(法政大学教授・近世比較文化) [掲載]2013年12月15日 [ジャンル]科学・生物 ■多様な解答を探り、優れた結論へ コーネル大学で学科長をしている著者は教授会…

覚え書:「福島第一原発収束作業日記―3・11からの700日間 [著] ハッピー [評者]原真人(本社編集委員)」、『朝日新聞』2013年12月15日(日)付。

- 福島第一原発収束作業日記―3・11からの700日間 [著] ハッピー [評者]原真人(本社編集委員) [掲載]2013年12月15日 [ジャンル]政治 社会 ■混乱する現場の実態、赤裸々に 東電福島第一原発で働くベテランの下請け作業員である著者は、事故直後からツイ…

覚え書:「売女の人殺し ボラーニョ・コレクション [著]ロベルト・ボラーニョ [評者]佐々木敦(批評家・早稲田大学教授)」、『朝日新聞』2013年12月15日(日)付。

- 売女の人殺し ボラーニョ・コレクション [著]ロベルト・ボラーニョ [評者]佐々木敦(批評家・早稲田大学教授) [掲載]2013年12月15日 [ジャンル]文芸 ノンフィクション・評伝 ■この世の夕暮れ、描き出す言葉 ロベルト・ボラーニョの小説を読んでいると、いつ…

書評:J・スコット(佐藤仁監修、ほか翻訳)『ゾミア 脱国家の世界史』みすず書房、2013年。

J・スコット『ゾミア 脱国家の世界史』みすず書房、読了。ゾミア(大陸部東南アジア山岳地帯)の歩みとは文明から切り離された未開社会なのか。国家主義的ナラティブは山地民を野蛮と断ずるが、著者はNo。ゾミアこそ「脱国家」の共同体である。 山地民の…

覚え書:「知的障害と裁き―ドキュメント千葉東金事件 [著]佐藤幹夫」、『朝日新聞』2013年12月15日(日)付。

- 知的障害と裁き―ドキュメント千葉東金事件 [著]佐藤幹夫 [掲載]2013年12月15日 [ジャンル]医学・福祉 ノンフィクション・評伝 2008年に千葉県東金市で起きた女児殺害事件で、軽度の知的障害のある男性が逮捕された。弁護団は当初、無罪主張を掲げるが…

覚え書:「ミッキーはなぜ口笛を吹くのか―アニメーションの表現史 [著]細馬宏通 [評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)」、『朝日新聞』2013年12月15日(日)付。

- ミッキーはなぜ口笛を吹くのか―アニメーションの表現史 [著]細馬宏通 [評者]いとうせいこう(作家・クリエーター) [掲載]2013年12月15日 [ジャンル]歴史 アート・ファッション・芸能 ■黒板の絵が動く、驚く創造の歴史 「世界で最初のアニメーション映画は」…

覚え書:「ハンナ・アレント〈世界への愛〉 その思想と生涯 [著]中山元 [評者]水無田気流(詩人・社会学者)」、『朝日新聞』2013年12月15日(日)付。

- ハンナ・アレント〈世界への愛〉 その思想と生涯 [著]中山元 [評者]水無田気流(詩人・社会学者) [掲載]2013年12月15日 [ジャンル]人文 ■世界は他者とともに作るもの 先ごろマルガレーテ・フォン・トロッタ監督による映画も公開され、再評価の進むハンナ・…

覚え書:「みんなの広場 言葉の足りない国会を憂う」、『毎日新聞』2013年12月15日(日)付。

- みんなの広場 言葉の足りない国会を憂う 事務員 51(埼玉県川口市) 国会中継を見るたび、居眠りや、やじもさることながら、挙げ句の果てには委員長席になだれ込んでのつかみ合いは何なのだろうかと思う。 国民が選挙で一票を投じた人たち集まりなのだ。国…

覚え書:「書評:フランス文学と愛 野崎 歓 著」、『東京新聞』2013年12月15日(日)付。

- フランス文学と愛 野崎 歓 著 2013年12月15日 ◆性愛と純愛を両極に [評者]芳川泰久=早稲田大教授 「恋愛を主題としてフランスの文学について」という執筆依頼から、「あっという間に…歳月が流れた」と後記にある。それでも、出されたテーマに当意即妙に…

覚え書:「書評:日本人の心のかたち 玄侑 宗久 著」、『東京新聞』2013年12月15日(日)付。

- 日本人の心のかたち 玄侑 宗久 著 2013年12月15日 ◆対立を併せのむ知恵 [評者]岡野守也=仏教心理学者 本書は日本人の心がいわば型崩れを起こしつつある今、そもそも何が本来のかたちだったのかを確認する試みであり、作家と禅僧という二足のわらじをき…

書評:ロナルド・H・フリッツェ(尾澤和幸訳)『捏造される歴史』原書房、2012年。

ロナルド・H・フリッツェ『捏造される歴史』原書房、読了。「アトランティス大陸」から「天地創造説のなかの人種差別」まで−−。本書はアメリカにおける疑似歴史、疑似科学隆盛の歴史と現在、そしてその受容心象を明らかにする一冊。 疑似科学的なるものを荒…

覚え書:「書評:努力する人間になってはいけない 芦田 宏直 著」、『東京新聞』2013年12月15日(日)付。

- 努力する人間になってはいけない 芦田 宏直 著 2013年12月15日◆<呟き>革命 哲学で読み解く [評者]鷲田小彌太=思想家 すごい作品が出現したな…。第一章「努力する人間になってはいけない」を読み始めたときの感嘆の印象だ。第九章12「<新人>の発掘…

覚え書:「書評:国家と音楽家 中川 右介 著」、『東京新聞』2013年12月15日(日)付。

- 国家と音楽家 中川 右介 著 2013年12月15日◆政治との軋轢が生む名演 [評者]堀内修=音楽評論家 遠くで轟(とどろ)く砲声に目前の陥落を感じつつ、フルトヴェングラーがベルリン・フィルを指揮してのブルックナーを聴く。悪夢に決まっている。だが少しだ…

覚え書:「みんなの広場 保護法案賛成議員の一覧表を」、『毎日新聞』2013年12月11日(水)付。

- みんなの広場 保護法案賛成議員の一覧表を 無職 52(大阪府茨木市) 特定秘密保護法案が衆参両院で強行採決され、とうとう法律として成立してしまいました。しかし、そもそも両院の議員はどのようにして選ばれたのでしょう。 昨年の衆院選について、最高裁…

覚え書:「今週の本棚:湯川豊・評 『別れの挨拶』=丸谷才一・著」、『毎日新聞』2013年12月15日(日)付。

- 今週の本棚:湯川豊・評 『別れの挨拶』=丸谷才一・著 毎日新聞 2013年12月15日 東京朝刊 (集英社・1680円) ◇多彩な文章に仕掛けられた最後の花火 まぎれもなく丸谷才一さんの「最後の新刊」にあたる一冊だろう。そう思うと、格別に感慨が深い。 じ…

覚え書:「今週の本棚:中村達也・評 『成長から成熟へ−さよなら経済大国』=天野祐吉・著」、『毎日新聞』2013年12月15日(日)付。

- 今週の本棚:中村達也・評 『成長から成熟へ−さよなら経済大国』=天野祐吉・著 毎日新聞 2013年12月15日 東京朝刊 (集英社新書・777円) ◇「別品の国」へ思いを託すメッセージ 広告という覗(のぞ)き窓から、世の中の移り変わりを見つめ続けてきた天…

書評:川久保剛『福田恆存 人間は弱い』ミネルヴァ書房、2012年。

川久保剛『福田恆存 人間は弱い』ミネルヴァ書房、読了。常に人間の本質を見つめ続けた批評家・福田恆存。 「人間は弱い」(副題)との自覚こそ福田の出発点であり徹底的な懐疑の源泉である。本書は保守派論客の軌跡と探究を甦らせる初の本格的評伝。福田に…

覚え書:「死小説 [著]荒木経惟 [評者]横尾忠則(美術家)」、『朝日新聞』2013年12月08日(日)付。

- 死小説 [著]荒木経惟 [評者]横尾忠則(美術家) [掲載]2013年12月08日 [ジャンル]アート・ファッション・芸能 ■文字使わず遍歴つづる能の物語 荒木経惟が「死小説」と題する小説を書いたというが文字は一字もない。だからといって小説ではないとは言えまい。…

覚え書:「謎と暗号で読み解く ダンテ『神曲』 [著]村松真理子」、『朝日新聞』2013年12月08日(日)付。

- 謎と暗号で読み解く ダンテ『神曲』 [著]村松真理子 [掲載]2013年12月08日 [ジャンル]人文 「西洋史上、最高の文学」とも評されるダンテ『神曲』。さながら言葉で築き上げられた大聖堂だ。一見取っつきにくい古典だが、本書は挑戦する手がかりを与えてくれ…

覚え書:「劣化国家 [著]ニーアル・ファーガソン [評者]原真人(本社編集委員)」、『朝日新聞』2013年12月08日(日)付。

- 劣化国家 [著]ニーアル・ファーガソン [評者]原真人(本社編集委員) [掲載]2013年12月08日 [ジャンル]政治 経済 ■西洋の「大いなる衰退」の原因 昨今、政治も企業経営も短期的な利益や思惑だけで動くことが増え、それが思わぬ機能不全を引き起こしている。…

覚え書:「私の社会保障論 キューバからもらう勇気=本田宏」、『毎日新聞』2013年12月11日(水)付。

- くらしの明日 私の社会保障論 キューバからもらう勇気 医療と教育を無償化する国 本田宏 埼玉県済生会栗橋病院院長補佐 10年有余、人口当たりの医師数が最低の埼玉から、日本の低医療費と医師養成抑制の問題を訴えてきた。しかし税と社会保障の一体改革…

覚え書:「スズメ つかず・はなれず・二千年 [著]三上修 [評者]三浦しをん(作家)」、『朝日新聞』2013年12月08日(日)付。

- スズメ つかず・はなれず・二千年 [著]三上修 [評者]三浦しをん(作家) [掲載]2013年12月08日 [ジャンル]科学・生物 ■身近な鳥には驚きがいっぱい 部屋の窓から、スズメが遊ぶ姿を眺めるのが好きだ。ある日、スズメのヒナが地面をよちよち歩いているのを発…

覚え書:「少国民戦争文化史 [著]山中恒 [評者]出久根達郎(作家)」、『朝日新聞』2013年12月08日(日)付。

- 少国民戦争文化史 [著]山中恒 [評者]出久根達郎(作家) [掲載]2013年12月08日 [ジャンル]歴史 ■消された愚行の実体に迫る 「少国民」とは、第二次大戦中の呼称で、年少の国民のことである。もったいぶった言い方が戦時用語の特色だけど簡単に言えば、少年少…

日記:無人による支配

- 官僚制とはすなわち、一者でもなければ最優秀者でもなく、また少数者でもなければ多数者でもなく、だれもがそこでは責任を負うことのできない官庁の匿名のシステムであり、無人による支配とでも呼ぶのが適切であるようなものである。 −−ハンナ・アーレント…

覚え書:「「3・11」と歴史学 [編]研究会「戦後派第一世代の歴史研究者は21世紀に何をなすべきか」 [評者]保阪正康(ノンフィクション作家)」、『朝日新聞』2013年12月08日(日)付。

- 「3・11」と歴史学 [編]研究会「戦後派第一世代の歴史研究者は21世紀に何をなすべきか」 [評者]保阪正康(ノンフィクション作家) [掲載]2013年12月08日 [ジャンル]歴史 ■命の視点で歴史学総体を見直す 本書の「はしがき」に〈歴史学は、地球、宇宙とい…

覚え書:「民主主義のつくり方 [著]宇野重規 [評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)」、『朝日新聞』2013年12月08日(日)付。

- 民主主義のつくり方 [著]宇野重規 [評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学) [掲載]2013年12月08日 [ジャンル]政治 ■<習慣>から未来への展望探る こんな柔らかい言葉で現代政治について論じる人は、日本の政治学者のなかではめずらしいのではないか。 以前、…