文明論

書評:フレデリック・マルテル(林はる芽訳)『メインストリーム 文化とメディアの世界戦争』岩波書店、2012年。

- 第三の要因(引用者注……ヨーロッパ文化の衰退)として考えられるのは、ヨーロッパ的な文化の定義−−文化を過去からの遺産として常に歴史的にとらえ、しばしばエリート主義的で反メインストリームの文化論に直結する−−が、グローバル化とデジタル化の時代に…

覚え書:「今週の本棚:張競・評 『メインストリーム 文化とメディアの世界戦争』=フレデリック・マルテル著」、『毎日新聞』2012年10月28日(日)付。

- 今週の本棚:張競・評 『メインストリーム 文化とメディアの世界戦争』=フレデリック・マルテル著 (岩波書店・3780円) ◇娯楽文化を巡る主導権争いの全容に迫る ここ十数年来、情報通信技術は文字通り日進月歩の進化を遂げており、人類文化にはまさに…

覚え書:「今週の本棚:中村達也・評 『縮小社会への道』=松久寛・編著」、『毎日新聞』2012年10月14日(日)付。

- 今週の本棚:中村達也・評 『縮小社会への道』=松久寛・編著 (日刊工業新聞社・1680円) ◇今世紀後半の高齢化・人口減少社会を透視する 今からもう一八年も前のことだが、衝撃的な一冊の本に出会った。マテリアル・ワールド・プロジェクト編『地球家…

覚え書:「今週の本棚:養老孟司・評 『虫から始まり虫で終わる』=大澤省三・著」、『毎日新聞』2012年09月09日(日)付。

- 今週の本棚:養老孟司・評 『虫から始まり虫で終わる』=大澤省三・著 (クバプロ・2940円) ◇基礎研究が実を結んだ昆虫進化学の大成果 基礎科学という仕事は地味である。たとえノーベル賞をもらうような優れた業績があっても、それがどんな仕事だった…

「手を汚したり体を使ったりする習慣」から始まる「文明の転換」

- 私が年来主張してきたことは、大型化・集中化・一様化とは対極的な、小型化・分散化・多様化の技術への転換である。太陽光発電、井戸水の利用、小川の急流を利用した小型水力発電、家畜の排泄物からのメタンガス発電、地熱や潮流を利用した発電、熱と電気…

覚え書:「時代の風 アジア・大平洋の未来=ジャック・アタリ」、『毎日新聞』2012年9月9日(日)付。

- 時代の風 アジア・大平洋の未来 ジャック・アタリ 仏経済学者・思想家「平和と成長」世界の利益 私は30年前、世界の重心が「大西洋」から「大平洋」に向けて移動し始めたと指摘した。重心の移動は米西海岸に端を発し、今や大平洋をはさんだ対岸(アジア)…

覚え書:「今週の本棚:張競・評 『文明−−西洋が覇権をとれた6つの真因』=ニーアル・ファーガソン著」、『毎日新聞』2012年09月02日(日)付。

- 今週の本棚:張競・評 『文明−−西洋が覇権をとれた6つの真因』=ニーアル・ファーガソン著 (勁草書房・3465円) ◇西洋文明は果たして没落するか 十六世紀からおよそ五百年のあいだに、西洋文明は世界制覇を実現した。スペイン、ポルトガル、イギリス…

La Pensée sauvage:植民地支配は文明化なんだから感謝しろってドヤ顔に涙

- さて、わが主題に話を戻すとして、自分の習慣にはないものを、野蛮と呼ぶならば別だけれど、わたしが聞いたところでは、新大陸の住民たちには、野蛮で、未開なところはなにもないように思う。どうも本当のところ、われわれは、自分たちが住んでいる国での…

覚え書:「今週の本棚:中村桂子・評 『家族進化論』=山極寿一・著」、『毎日新聞』2012年08月12日(日)付。

- 今週の本棚:中村桂子・評 『家族進化論』=山極寿一・著 (東京大学出版会・3360円) ◇父性の登場から「家族の起源」を探究する 人類の社会生活の基礎である性・経済・生殖・教育の四機能を果たすのが家族であり、世界中の共同体が家族を単位としてい…

覚え書:「今週の本棚:『道具と人類史』=戸沢充則・著」、『毎日新聞』2012年07月29日(日)付。

- 今週の本棚:『道具と人類史』=戸沢充則・著 (新泉社・1680円) 人類の歴史を道具に即してスケッチしたエッセー集。簡潔な記述から現代の病巣が浮かび、骨太の文明論として読み応えがある。考古学者で元明治大学長の著者は今年4月に亡くなった。社会…

「ディア・フレンド」という人間感覚

- 人間関係の新しい型 鶴見 万次郎の問題はそれなんです。万次郎が日本にもって帰りたかったのは物ではなく、人間関係の新しい型ということだった。自分を助けてくれた船長に「ディア・フレンド」と呼びかけているように、身分のない人を助けられる人間が上…

覚え書:「今週の本棚:『ブラッドベリ、自作を語る』=レイ・ブラッドベリ、サム・ウェラー著」、『毎日新聞』2012年7月22日(日)付。

- 今週の本棚:『ブラッドベリ、自作を語る』=レイ・ブラッドベリ、サム・ウェラー著 (晶文社・1995円) この六月に死去したSFの詩人への最後のインタビュー。日本でも愛されている『火星年代記』『たんぽぽのお酒』など自作のことから、子供時代の思いでま…

書評:E・トッド(石崎晴己訳)『アラブ革命はなぜ起きたか―デモグラフィーとデモクラシー』藤原書店、2011年。

ここちよい高揚感さそう本格的な文明論E・トッド(石崎晴己訳)『アラブ革命はなぜ起きたか―デモグラフィーとデモクラシー』藤原書店、2011年。 人類学と人口統計学を駆使して、アラブの春を予見した一冊との評価が多いが、そんな狭苦しい視点で本書を読む…

グローバルリズムか伝統への回帰か……そっと二元論を退ける「中国化する日本」

今日のグローバル社会の原型は宋代の中国で誕生した。そしてそのグローバリズムの挑戦への対応が日本という国の足跡ではなかったのか−−。そう大胆に描写する本書の基本図式には何ら異論はない。 宋代に誕生したシステムとは、1)皇帝を支える官僚、2)貨幣…

覚え書:「みんなの広場 戦争反対と核廃絶を後世に」、『毎日新聞』2012年2月8日(水)付。

- みんなの広場 戦争反対と核廃絶を後世に 無職 83(大阪府羽曳野市) 新しい年を迎えると、気持ちは一新し、展望に胸を膨らませます。ところが、東日本大震災に関する新聞やテレビを見ると、今なお不安がよぎり、涙が流れます。その一方で、被災地の方々が…

覚え書:「今週の本棚:三浦雅士・評『世界文明史の試み−神話と舞踊』=山崎正和著」、『毎日新聞』2012年1月29日(日)付。

- 今週の本棚:三浦雅士・評 『世界文明史の試み−神話と舞踊』=山崎正和・著 (中央公論新社・3360円) ◇閉塞する現代への確固たる指針 瞠目すべき書である。世界文明史の構想だが、シュペングラー、トインビー、ベネディクトら、従来の文明有機体論と…