評伝

覚え書:「書評:差別と反逆 平野小剣の生涯 [著]朝治武 [評者]中島岳志」、『朝日新聞』2013年03月24日(日)付。

- 差別と反逆 平野小剣の生涯 [著]朝治武 [評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史) [掲載]2013年03月24日■平等求め、天皇に託した希望 被差別部落に生まれ、初期水平運動で華々しく活躍した平野小剣。長髪で髭(ひげ)を伸ばし、人…

覚え書:「書評:『郷愁と童心の詩人 野口雨情伝』 野口不二子著 評・畠山重篤」、『読売新聞』2013年03月10日(日)付。

- 『郷愁と童心の詩人 野口雨情伝』 野口不二子著評・畠山重篤(カキ養殖業) 孫ならではの秘話 明日3月11日で東日本大震災から2年を迎える。岩手、宮城、福島の被害は甚大だが、茨城も津波に襲われた。 筆者の野口不二子さんは野口雨情の直系の孫に当た…

覚え書:「書評:キャパの十字架 [著]沢木耕太郎 [評者]後藤正治」、『朝日新聞』2013年03月17日(日)付。

- キャパの十字架 [著]沢木耕太郎 [評者]後藤正治(ノンフィクション作家) [掲載]2013年03月17日■「贋」背負い「真」へ、1枚の写真への旅 第二次世界大戦前夜に戦われたスペイン内戦。共和国軍(人民戦線)は反乱軍(ファシズム陣営)に敗れ去るが、多くの人…

覚え書:「書評:写真家 井上青龍の時代 太田順一著」、『東京新聞』2013年3月3日(日)付。

- 書評:写真家 井上青龍の時代 太田 順一 著 2013年3月3日 ◆体を張って撮る貧困の底 [評者] 吉田 司 ノンフィクション作家。著書に『王道楽土の戦争』など。 東日本大震災の復旧事業で暴力団が労働者を違法派遣し儲(もう)けているとか、最近の非正規雇…

「この世の中のすべてが嘘であつても、私は人を信じて生きて行きたい」(里村欣三)

- 里村欣三は正直でありすぎたしまっとうでありすぎた。私が無念に思うのは、ありていに言って里村は、もう少し要領よく、もう少し俗人であればという感慨である。しかしそれは里村欣三にとって無理な注文であり、もし里村が生きていれば、私は彼から叱責さ…

覚え書:「今週の本棚:持田叙子・評 『冥府の建築家−ジルベール・クラヴェル伝』=田中純・著」、『毎日新聞』2013年02月24日(日)付。

- 今週の本棚:持田叙子・評 『冥府の建築家−ジルベール・クラヴェル伝』=田中純・著 毎日新聞 2013年02月24日 東京朝刊 ◇持田叙子(のぶこ)評 (みすず書房・5250円) ◇「骸」をひきずり「不死」の建築をのこした男の生涯 これは、生れつき重い宿痾(…

覚え書:「書評:ニュートンと贋金づくり [著]トマス・レヴェンソン [評者]荒俣宏(作家)」、『朝日新聞』2013年02月17日(日)付。

- ニュートンと贋金づくり [著]トマス・レヴェンソン [評者]荒俣宏(作家) [掲載]2013年02月17日 [ジャンル]歴史 ■「怖い官僚」になった大科学者 あの大科学者ニュートンは「金」に縁がある。長年ひそかに研究したのは錬金術だったし、当時の錬金術は「贋金づ…

覚え書:「今週の本棚:アウンサンスーチー 愛と使命=ピーター・ポパム・著」、『毎日新聞』2013年02月10日(日)付。

- 今週の本棚:アウンサンスーチー 愛と使命 ピーター・ポパム著(明石書店・3990円) スーチーさんは今年六月十九日に六八歳になる。生涯の三分の一近くの自宅軟禁などで自由を奪われながら、ビルマ民主化の象徴的リーダーとしてようやく国際舞台にも登…

覚え書:「書評:『大原孫三郎』 兼田麗子著 評・尾崎真理子」、『読売新聞』2013年01月27日(日)付。

- 『大原孫三郎』 兼田麗子著評・尾崎真理子(本社編集委員) クラボウ、クラレ、中国電力などを築いた岡山の企業家、大原孫三郎(1880〜1943年)は労働環境の改善と文化事業で名を残した。 篤志家の資質は互助精神が根づく倉敷の風土が育んだのか。…

覚え書:「今週の本棚:井波律子・評 『日高六郎・95歳のポルトレ』=黒川創・著」、『毎日新聞』2013年02月03日(日)付。

- 今週の本棚:井波律子・評 『日高六郎・95歳のポルトレ』=黒川創・著 毎日新聞 2013年02月03日 東京朝刊 (新宿書房・2310円) ◇戦後という異郷を生きた知識人の軌跡 日高六郎は独自の姿勢によって、戦後日本の社会運動に関わってきた正真正銘の知識…

書評:「山口周三『南原繁の生涯 信仰・思想・業績』(教文館)、『第三文明』2013年3月、96頁。

- 「現実的理想主義者」の実像を生き生きと伝える 近代日本の思想的系譜において、良心と良識を担うチャンピオンは内村鑑三と新渡戸稲造である。この二人の師から直接の薫陶を受けたのが本書の主人公・南原繁である。戦後初の東大総長として教育改革を指揮し…

覚え書:「今週の本棚;イタリアの島から日本へ、そして世界へ=ヨゼフ・ピウタ著」、『毎日新聞』2013年01月13日(日)付。

- 今週の本棚;イタリアの島から日本へ、そして世界へ ヨゼフ・ピウタ著(上智大学出版・1260円) カトリックの本山バチカン(ローマ教皇庁)で、前教皇ヨハネ・パウロ2世の右腕として庁立グレゴリアン大学長や教育省次官の重責を担ったヨゼフ・ピウタ大…

覚え書:「今週の本棚:池澤夏樹・評 『最後の人 詩人 高群逸枝』=石牟礼道子・著」、『毎日新聞』2013年01月13日(日)付。

- 今週の本棚:池澤夏樹・評 『最後の人 詩人 高群逸枝』=石牟礼道子・著 (藤原書店・3780円) ◇名作の萌芽を支え、促した出会いの記録 世界経済フォーラム(WEF)二〇一二年の「世界男女格差報告」によれば日本は百三十五か国のうちの百一位である…

覚え書:「田中角栄―戦後日本の悲しき自画像 [著]早野透 [評者]後藤正治」、『毎日新聞』2013年01月06日(日)付。

- 田中角栄―戦後日本の悲しき自画像 [著]早野透 [評者]後藤正治(ノンフィクション作家) [掲載]2013年01月06日■「戦後」を映し出した政治家 田中角栄が世を去って20年がたつ。総理番、派閥番、地元の新潟支局勤務などを通してこの政治家に至近距離で接して…

覚え書:「書評:伊藤野枝と代準介 [著]矢野寛治 [評者]出久根達郎(作家)」、『朝日新聞』2013年01月06日(日)付。

- 伊藤野枝と代準介 [著]矢野寛治 [評者]出久根達郎(作家) [掲載]2013年01月06日■「奔放な恋の女」の真実に迫る こんなにも知的な美人、とは意外だった。 伊藤野枝、である。評者の知る野枝は、大正期の婦人運動家で、結婚を破棄して上野高等女学校の英語教…

書評:加藤節『南原繁 −−近代日本と知識人』岩波新書、1997年。

すぐれた評伝が新書に収録されると初学者にその輪郭を理解するうえで好都合なことはいうまでもない。近代日本を代表する政治学者にして、戦後民主主義の枠組みづくりに大いに貢献した南原繁の足跡をスケッチしたのが本書である。類書が少ないなかで恰好の一…

書評:秋尾沙戸子『スウィング・ジャパン 日系米軍兵ジミー・アラキと占領の記憶』新潮社、2012年。

本書は日系アメリカ人ジェームズ・T・アラキの評伝。太平洋戦争で強制収容された一人であり、陸軍情報部日本語学校の教官。惜しまれつつ除隊し、戦後日本にビ・バップを伝えたJAZZ奏者(ジミー荒木)。そして古典学者の顔も持つ。そんな人間が存在する…

覚え書:「今週の本棚:藤森照信・評 『ブルーノ・タウト−−日本美を再発見した建築家』=田中辰明・著」、『毎日新聞』2012年07月29日(日)付。

- 今週の本棚:藤森照信・評 『ブルーノ・タウト−−日本美を再発見した建築家』=田中辰明・著 (中公新書・798円) ◇大戦間期のジグザグ人生を追う 帝国ホテルを設計したフランク・ロイド・ライトについて普通の人から、「日本では有名ですが、世界的には…

覚え書:「今週の本棚:『ブラッドベリ、自作を語る』=レイ・ブラッドベリ、サム・ウェラー著」、『毎日新聞』2012年7月22日(日)付。

- 今週の本棚:『ブラッドベリ、自作を語る』=レイ・ブラッドベリ、サム・ウェラー著 (晶文社・1995円) この六月に死去したSFの詩人への最後のインタビュー。日本でも愛されている『火星年代記』『たんぽぽのお酒』など自作のことから、子供時代の思いでま…

書評:鹿島茂『渋沢栄一〈1〉算盤篇』、『渋沢栄一〈2〉論語篇』文藝春秋、2011年。

鹿島茂『渋沢栄一〈1〉算盤篇』、『渋沢栄一〈2〉論語篇』文藝春秋、2011年。論語に基礎を置く『算盤』主義……明治の精神を具現する渋沢栄一の本格的評伝 近代日本・資本主義の父とよばれる渋沢栄一の最新の評伝を手に取ってみた。執筆が仏文学者の鹿島茂氏だ…

書評:川島慶子『マリー・キュリーの挑戦 科学・ジェンダー・戦争』トランスビュー、2010年。

否定できない出自や環境に縛られるのではなく、それを希望へ転換した「理系女子」の闘いの軌跡川島慶子『マリー・キュリーの挑戦 科学・ジェンダー・戦争』トランスビュー、2010年。 「偉大な科学者」にして「良妻賢母」。彼女に冠される形容詞を全否定する…