2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

愛は、わたしたちの悲惨のしるしである。神は、自分をしか愛することができない。わたしたちは、他のものをしか愛することができない。

- 愛は、わたしたちの悲惨のしるしである。神は、自分をしか愛することができない。わたしたちは、他のものをしか愛することができない。 * 神がわたしたちを愛しているから、わたしたちは神を愛さねばならないというのではない。神がわたしたちを愛してい…

覚え書:「今週の本棚:鹿島茂・評 『子ども 上』=ジュール・ヴァレス著」、『毎日新聞』2012年06月10日(日)付。

- 今週の本棚:鹿島茂・評 『子ども 上』=ジュール・ヴァレス著 (岩波文庫・819円) ◇階級離脱への「鞭」が生んだ新たな悲惨の物語 幕末・明治の日本を訪れた欧米人の目に最も奇妙に映ったのは日本人が子どもを非常に甘やかしているということだった。欧…

「マイノリティに不利な条件を押しつける国家や社会はマジョリティをも抑圧」する

- マジョリティの不幸 本書で述べてきたように、戦時下の朝鮮人は、同じ帝国臣民とされながらも、日本人に対しては見られなかったような手段を用いた動員の対象となり、不利な条件のもとでの労働を強いられた。だが、これは日本帝国のマジョリティたる日本人…

覚え書:「今週の本棚・新刊:『懐徳堂ゆかりの絵画』=奥平俊六・編著」、『毎日新聞』2012年06月10日(日)付。

- 今週の本棚・新刊:『懐徳堂ゆかりの絵画』=奥平俊六・編著 (阪大リーブル・2100円) 享保9(1724)年に大坂の商人の手で設立された学問所、懐徳堂。江戸の昌平坂学問所のように官学化はかなわなかったが、精神は現在の大阪大学に受け継がれてい…

わたし個人にとっても空腹がいちばんの問題です。そのことが歴史記述の底にあって、価値判断の底にあるような歴史観でなければ信頼できないと思うのです

- 人間本位の歴史学 鶴見 歴史学は人間の立場から見なければいけないとわたしが言うのは、人間の根本の問題は空腹だと思うのです。わたし個人にとっても空腹がいちばんの問題です。そのことが歴史記述の底にあって、価値判断の底にあるような歴史観でなけれ…

覚え書:「今週の本棚・新刊:『ガリ版ものがたり』=志村章子・著」、『毎日新聞』2012年06月10日(日)付。

- 今週の本棚・新刊:『ガリ版ものがたり』=志村章子・著 (大修館書店・2520円) 簡易印刷器の主役だった、ガリ版(謄写版)の歴史を訪ねる本。トーマス・エジソンのミメオグラフをもとに、堀井新治郎父子が発明(明治二七年)したガリ版は、日清戦争で…

仮に一人を除く全人類が同一の意見をもち、唯一人が反対の意見を抱いていると仮定しても、人類がその一人を沈黙させることの不当であろうこと

- 仮に一人を除く全人類が同一の意見をもち、唯一人が反対の意見を抱いていると仮定しても、人類がその一人を沈黙させることの不当であろうことは、仮りにその一人が全人類を沈黙させうる権力をもっていて、それをあえてすることが不当であるのと異ならない…

覚え書:「今週の本棚・本と人:『旅のパウロ』 著者・佐藤研さん」、『毎日新聞』2012年06月10日(日)付。

- 今週の本棚・本と人:『旅のパウロ』 著者・佐藤研さん (岩波書店・2625円) ◇伝道者の生きざまを追って−−佐藤研(さとう・みがく)さん イエスの刑死後、ユダヤ教世界を超えて小アジア(現在のトルコ)やギリシャへ異邦人伝道の旅を続け、『新約聖書…

書評:鹿島茂『渋沢栄一〈1〉算盤篇』、『渋沢栄一〈2〉論語篇』文藝春秋、2011年。

鹿島茂『渋沢栄一〈1〉算盤篇』、『渋沢栄一〈2〉論語篇』文藝春秋、2011年。論語に基礎を置く『算盤』主義……明治の精神を具現する渋沢栄一の本格的評伝 近代日本・資本主義の父とよばれる渋沢栄一の最新の評伝を手に取ってみた。執筆が仏文学者の鹿島茂氏だ…

覚え書:「平成24年6月8日 野田内閣総理大臣記者会見」全文

- 平成24年6月8日 野田内閣総理大臣記者会見【野田総理冒頭発言】 本日は大飯発電所3、4号機の再起動の問題につきまして、国民の皆様に私自身の考えを直接お話をさせていただきたいと思います。 4月から私を含む4大臣で議論を続け、関係自治体の御理解を…

書評:ハンス・ヨーナス(品川哲彦訳)『アウシュヴィッツ以後の神』法政大学出版局、2009年。

ハンス・ヨーナス(品川哲彦訳)『アウシュヴィッツ以後の神』法政大学出版局、2009年。 いま、「神について語ること(テオロギア)」は果たして可能か。ユダヤ人哲学者H・ヨナスの重厚な思索の軌跡本書には、『責任という原理』で名高いユダヤ人哲学者ハン…

個々の人間、個々の民族の特性をそのまま認めながらも、真に誉むべきものは全人類に属することによってこそきわだつ

- 個々の人間、個々の民族の特性をそのまま認めながらも、真に誉むべきものは全人類に属することによってこそきわだつのだという確信を失わぬようにしてこそ、真に普遍的な寛容の精神が最も確実に得られる。 −−ゲーテ「文学論・芸術論」『世界の名著38 ヘル…

覚え書:「今週の本棚:張競・評 『美人の歴史』=ジョルジュ・ヴィガレロ著」、『毎日新聞』2012年06月03日(日)付。

- 今週の本棚:張競・評 『美人の歴史』=ジョルジュ・ヴィガレロ著 (藤原書店・4830円) ◇身体論の視点で捉えた理想の「美」の変遷 大学生に「理想的な美人はどのような顔をしているか」と聞いたら、男女にかかわらず大半は「西洋人のような彫りの深い…

不信心と信心の両方をともに置くという立場

- 鶴見 実は一つだけ話の枕を用意してきたんだけど、鈴木晴久さんという人が『ろばのみみ』という雑誌をやっているんです。ロゴス英語学校という、牧師さんが経営している学校が目白のほうにあって、その牧師さんは事業経営が上手で、もと海軍の大尉かなんか…

書評:上田美和『石橋湛山論 言論と行動』吉川弘文館、2012年。

上田美和『石橋湛山論 言論と行動』吉川弘文館、2012年。 約20年の研究成果をもとに、分裂しがちだった「二つの石橋像」を架橋しようという意欲作。石橋湛山といえば、どうしても「小日本主義」というキーワードで語られることが多いし、それは間違ってい…

B級グルメ列伝:千葉県船橋市:らーめん かいざん 西船橋店

B級グルメ列伝:千葉県船橋市:らーめん かいざん 西船橋店千葉へ出講の際、西船橋駅で地下鉄東西線からJR総武線に乗り換えになります。 先週、授業が済んでから、結局、その日は何も食べていなかったので、早い夕方に、改札を出てから、目の前にあったラ…

覚え書:「今週の本棚・新刊:『日本の聖地文化 寒川神社と相模国の古社』=鎌田東二・編」、『毎日新聞』2012年06月03日(日)付。

- 今週の本棚・新刊:『日本の聖地文化 寒川神社と相模国の古社』=鎌田東二・編 (創元社・2520円) 聖地はなぜそこにあるのか? 神奈川県の寒川(さむかわ)神社(相模国一之宮)を素材に、聖地立地の謎を探究した意欲的な共同研究。歴史・考古・宗教学…

旨いもの・酒巡礼記:東京都・新宿区編「鳥やす 本店」

月曜日、ちょっとした打ち合わせで高田馬場へ。 夕刻、編集者のHさんの案内で、うわさに聞く「鳥やす 本店」へいってまいりました。何といえばいいのでしょうか・・・。 引き戸をあけると、もうそこは「昭和の世界」。「昭和の匂い」が濃厚に刻印された雰囲…

覚え書:「今週の本棚:三浦雅士・評 『未完のファシズム』=片山杜秀・著」、『毎日新聞』2012年06月03日(日)付。

- 今週の本棚:三浦雅士・評 『未完のファシズム』=片山杜秀・著 毎日新聞 2012年06月03日 東京朝刊 (新潮選書・1575円) ◇第一次大戦から導く日本軍国思想への新視点 すこぶる面白い。日本の近代が立体的に見えてくる。骨格は近代日本陸軍史。参照文献…

覚え書:「今週の本棚:養老孟司・評 『場所原論』=隈研吾・著」、『毎日新聞』2012年06月03日(日)付。

- 今週の本棚:養老孟司・評 『場所原論』=隈研吾・著 (市ヶ谷出版社・2310円) ◇人と場所の関係性を取り戻す建築思想とは 生きものは「場所」に生きている。昆虫を調べていると、しみじみとそう思う。同じ森の中でも、特定の場所でしか見つからない。 …

「法律違反を許さない、犯罪を許さないと言うのは、当たり前の主張じゃないですか」という訳ですが、それを主張するために法律違反や犯罪を犯すというのでは説得力がないと考えるのですが、……

- この日、街宣に参加することは同居している両親には告げてこなかった。 「たぶん、こんな活動に参加したと知ったら心配すると思います。僕の良心は、僕ほどには日本が危ない状況にあると思っていません。それに県内の農家ではいま、人手不足を意義ナウため…

書評:荻生徂徠(平石直昭校注)『政談 服部本』平凡社東洋文庫、2011年。

- 妾をかくし物にする事 一 妾といふ物はなくて不叶もの也。当時は妾をばかくし物のやうにする事、習はしの悪敷也。古は天子諸侯ともに、一娶九女とて、姪娣八人付来る、何れも妾なり。卿大夫の事は見えず。古は世官にてなければ、其法なきなるべし。されど…

覚え書:「ひと 『脱原発宣言』を実行する城南信金理事長 吉原毅さん(57)」、『毎日新聞』2012年6月1日(金)付。

- ひと 「脱原発宣言」を実行する城南信金理事長 吉原毅さん(57) 「同調する経済人は少ないが、ごまめの歯ぎしりでも訴え続ける」 東京電力福島第1原発事故で、ふるさとを追われた人々を目の当たりにして、昨年4月、「信金の原点は、助け合って地域社会…

「対象にまったく完全に注意をそそぐといった行為」について。

- 詩人は、真に実在するものにじっと注意をそそぐことによって、美を生み出す。人の愛するという行為も、同じである。今そこに、飢えかわいているその人がわたしと同じように真に存在するものだと知ること−−それだけで十分である。残りのことは自然につづい…

覚え書:「今週の本棚:村上陽一郎・評、『哲学者クロサキの哲学する骨董』=黒崎政男・著」、『毎日新聞』2012年05月27日(日)付。

- 今週の本棚:村上陽一郎・評 『哲学者クロサキの哲学する骨董』=黒崎政男・著 (淡交社・1890円) ◇博識の士による不思議な「趣味」の考察 ちょっと変わった、不思議な本である。でも、是非多くの人に読んで貰(もら)いたいと思わせる何かがある。最…

「悪人ではなく、たんにstupidなだけである」から厄介なのかw

- ケーベルが、井上はべつに悪人ではなく、たんにstupidなだけであると評したといわれる。井上は『勅語衍義』(一八九一年)を著わし、世に教育勅語の公認の註解者のように言いつたえられ、また国民道徳論の首魁のごとくにその名を挙げられる。そのことには…