南原繁研究

日記:上杉慎吉と山県有朋

- 山県の国家思想と上杉の国家思想は基本的なところで完全に一致(天皇の権力を絶対的なものとみなし、それへの絶対的忠誠を誓う天皇制絶対主義。政党政治を国体に反する絶対悪とみなす立場。社会主義、労働運動などを断固排撃する立場に立ち、それらの運動…

日記:献本御礼 南原繁研究会編『南原繁の戦後体制構想』(横浜大気堂、2017年)。

私自身、南原繁研究会の会員なので手前味噌なのですが、南原繁研究会の山口周三様より同研究会編『南原繁の戦後体制構想』(横浜大気堂)をご恵贈頂きました。ありがとうございます。教育改革、憲法と戦後世界の構想、天皇制、国民の「精神=『人間革命』」…

日記:民族は個人と同じく失敗し過つ

- 民族は個人と同じく失敗し過つ 前回の定義集に、「八月十五日と南原繁を語る会」のことを書きました。今回がその当日なのですが、準備の間に次つぎ思い出すことがあったので、さきの拾遺として書きます。 企画の中心の立花隆さんから連絡があった時、私は…

日記:大江健三郎と南原繁

- 子どもじみた態度と倫理的想像力 森の奥の新制中学からひとり、バスと汽車の切符をもらって、やはり幾つもの県内の新制中学から集まった生徒たちの、特設クラスに行ったことがあります。アメリカ人の男女の見学者が数人囲むなか、日本人の教師から英語の授…

日記:宮田光雄 ローマ書一三章と南原繁『国家と宗教』(岩波書店、1942年)

- 同じ年の秋(引用者注……大石兵太郎『君主の神的権威』が出版された一九四二年)、南原繁『国家と宗教』が出版された。ローマ書一三章に関しては、ここ「から、直ちに国家権力の宗教的認証を与えたものとなし、これによって、たとえば後世の《君権神授説》…

日記:日本社会の現在を南原繁先生ならばどのように考えるか。

- 四 終わりに−−憲法・教育基本法の法改正論の中で 最後に、それでは近年の教育の状況はどういうことになっているか。 ご存知のように、憲法・教育基本法の改正の動きが非常に強くなっています。同時に、むしろその改正を先取りする現実の動き、それは国家に…

日記:南原繁にとっての「宗教」

献本御礼。 - 南原は、宗教の重要性を非常に強調しました。南原が受けた宗教は、内村鑑三から学んだキリスト教でありましたが、矢内原忠雄のように、キリスト教の宣教活動につとめたわけではなく、宗教そのものの大切さを訴えました。これは、憲法に規定され…

書評:将基面貴巳『言論抑圧 矢内原事件の構図』中公新書、2014年。

将基面貴巳『言論抑圧 矢内原事件の構図』中公新書,読了。『中央公論』掲載の「国家の理想」が反戦的とされ辞任に追い込まれた矢内原忠雄事件は戦前日本を代表する政治弾圧の一つだ。本書は歴史を複眼的に見る「マイクロヒストリー」の手法から、言論抑圧事…

研究ノート:「内閣政治」と「民本政治」の違い

美濃部達吉といえば「天皇機関説」の問題で、ある意味では戦前日本を代表する良識といってよいですし、その憲法学の水脈は戦後日本にも受け継がれています。しかし、その「限界」というのも承知することの必要性、そして「乗り越えられた」と思われがちな「…

日記:簑田胸喜による矢内原忠雄批判

昭和初期、言論抑圧で重要な役割を果たすのが民間の右翼言論人、とりわけ簑田胸喜になりますが、「狂信的」と形容するにふさわしい言論活動で、数々の良心を屠ってきましたが、まさに「狂信的」であるが故に、その実際の研究というのがほとんどされていない…

拙文:「書評:南原繁研究会編『南原繁と国際政治 永久平和を求めて』 南原繁に学ぶ『現実』を『理念』に近づける営み」、『第三文明』2014年10月、第三文明社、94頁。

- 書評 『南原繁と国際政治 永久平和を求めて』 南原繁研究会編 EDITEX 定価2,000円+税南原繁に学ぶ「現実」を「理念」に近づける営み 先哲の思索に学ぶとは一体どういうことだろうか。それは無批判にありがたく御輿(みこし)を担ぐことでもな…

日記:南原繁研究会第3回研究発表会

8月30日(土)は、南原繁研究会第3回研究発表会(学士会館、13:00〜)に参加し、ひとつ発表してきました。プログラムは次の通り第1部 「国家と宗教」の岩波文庫化をめぐって 加藤節 南原繁と平和思想 戦後和解と戦争罪責に関する一考察 豊川慎 東大キリ…

日記:南原繁と吉野作造 その信仰における屹立さと中庸

月末に南原繁のキリスト教信仰の独自性(修養倫理のキリスト教受容とは違う)の発表をしなきゃならんので、夕方から少し、南原の著作を読み直しておりました。南原繁自身が「ちなみに申しますと、私はある人びとのように、宗教を表に出さない。その点はカン…

日記:灯ともる昼の廊下を行きつけて、吉野作造先生この部屋にいましき

- それでは、吉野先生の本質はどこにあるか。ここに「先生とキリスト教」という問題が出て来る。この点は『世界』(一九五五年四月号、一〇〇頁)の座談会の中でもふれられていますが、たしかに、先生は内村鑑三先生とは無関係だった。ただ、吉野先生は本郷…

書評:南原繁研究会編『南原繁と国際政治 永久平和を求めて』エディテックス、2014年。

南原繁研究会編『南原繁と国際政治 永久平和を求めて』エディテックス、読了。昨年11月同研究会第10回シンポジウムの記録。講演を三谷太一郎先生「南原繁と国際政治 学問的立場と現実的立場」、パネル・ディスカッション「南原繁と国際問題をめぐって」…

日記:吉野作造や南原繁を学ぶアクチュアリティについて一言

先日、宮城県大崎市の吉野作造記念館で講演した折り、聴講してくださった「『吉野作造通信』を発行する会」の永澤さんから、最新の『吉野作造通信』(15号)を頂き、ようやく眼を通しました。遅くなりましたがありがとうございました。デモクラシーの旗手…

書評:三谷太一郎『学問は現実にいかに関わるか』東京大学出版会、2013年。

- 政治学教育は単なる専門性、または単なる一般性をもつものではない。専門性を媒介とする一般性、または一般性を媒介とする専門性をもつのであって、それが政治学教育の総合性でえある。したがって大学院における政治教育はスペシャリストというよりも、む…

日記:南原繁研究会第10回シンポジウム 三谷太一郎講演『南原繁と国際政治 学問的立場と現実的立場』を拝聴して。

twのまとめですが、記録として残しておきます。南原繁研究会第10回シンポジウム 三谷太一郎講演『南原繁と国際政治 学問的立場と現実的立場』を拝聴して。本講演は、第一次世界大戦後に高まる国際政治学への関心という歴史的文脈に南原繁の足跡を位置づ…

覚え書:「『南原繁と新渡戸稲造 −私たちが受け継ぐべきもの−』 EDITEXから刊行」、『週刊読書人』2013年9月27日(金)付。

- 『南原繁と新渡戸稲造 −私たちが受け継ぐべきもの−』 EDITEXから刊行 (有)EDITEX(エディテクス=東京都文京区本郷2-35-17コート本郷301)から南原繁研究会編『南原繁と新渡戸稲造−−私たちが受け継ぐべきもの−−』が刊行された。A5判212…

日記:Go to the people

Go to the people live among them love them learn from them start with what they know build on what they have But of the best leader when the task is accomplished the work is done people all remark we have done it ourselves 晏陽初(Yen Yang…

日記:南原繁研究会(第112回) 研究発表会

- もし日本にキリスト教が来なかったとしたら、どんな日本になったであろうか。 本書をご覧になればわかるように、キリスト教は日本に渡来以来、何度も事件を引き起こしている。いわば「お騒がせ宗教」である。その「お騒がせ宗教」がなかったとしたら、日本…

日記:吉野作造と南原繁における「新生の経験」

吉野作造と南原繁を対比していくといくつか共通点を見出すことができるのですが、その一つは、ふたりとも、共同体から嘱望された将来を、キリスト教入信期の青年期に否定していること。