哲学・倫理学(古代)

日記:自明こそ疑え

昨日の金曜日、後期2回目の「哲学」授業で、いよいよ本格的な導入の授業をすることができました。哲学を学ぶということは、「哲学をする」ことを学ぶ訳ですが、そこで大事になることは、あくまでも先ず「自分で考える」ということ。そして次に、その自分で…

書評:本村凌二『愛欲のローマ史 変貌する社会の底流』講談社学術文庫、2014年。

本村凌二『愛欲のローマ史 変貌する社会の底流』講談社学術文庫、読了。ローマ帝国繁栄下、過剰ともいえる欲望と淫靡な乱交が横行したが、その背景にはローマ人のどのような心性が潜んでいたのか。本書は風刺詩人のまなざしを頼りにしながら、性愛と家族をめ…

書評:野田又夫『哲学の三つの伝統 他十二篇』岩波文庫、2013年。

野田又夫『哲学の三つの伝統 他十二篇』岩波文庫、読了。枢軸時代のギリシア、インド、中国で同時に誕生したのが哲学。著者はこの3つの伝統に注目し、哲学の大胆な世界史的通覧を試みる。哲学とは「理性をもって自由に答えよう」とする「世界と人生とについ…

日記:コロンビア大学コアカリキュラム研究会

- 「ところで、そのうちまず優秀者支配制に対応するそれと相似た人間については、われわれはすでにこれを詳しく論じたが、このような人間を善くかつ正しい人間であると、われわれは正当に主張するのだ」 「ええ、すでに論じました」 「そうすると、つぎにわ…

書評:内山勝利『対話という思想 プラトンの方法序説』岩波書店、2004年。

- こんなふうに、自分の分かっていることが言い表せないとは、ほんとうにいらいらします。男気について、それが何であるかということを、わたしはたしかに分かってはいるように、自分には思えるのですが、ところが先ほどは、どうしたわけか逃げられてしまい…

覚え書:「今週の本棚:本村凌二・評 『西洋古典叢書 ヘシオドス 全作品』=中務哲郎・訳」、『毎日新聞』2013年06月16日(日)付。

- 今週の本棚:本村凌二・評 『西洋古典叢書 ヘシオドス 全作品』=中務哲郎・訳 毎日新聞 2013年06月16日 東京朝刊 (京都大学学術出版会・4830円) ◇偉業の百冊目に刻む「人類の精神の黎明」 あたり前すぎて気づきもしないが、アルファベットは人類最大…

快楽に負けることは何を意味するかというと、それは結局最大の無知にほかならないことになるのである

- 『では、これがどのような技術であり、どのような知識であるかということは、あらためてまた考察することになるだろう。しかし私とプロタゴラスとが諸君の質問に関連して行わなければならない証明のためには、それがとにかくひとつの知識であることだけわ…

覚え書:「書評:一四一七年、その一冊がすべてを変えた [著]スティーヴン・グリーンブラット [評者]荒俣宏」、『朝日新聞』2013年02月10日(日)付。

- 一四一七年、その一冊がすべてを変えた [著]スティーヴン・グリーンブラット [評者]荒俣宏(作家) [掲載]2013年02月10日■教会も受容した死を超える快楽 イタリア・ルネサンスの大物が活躍する半世紀ほど前の15世紀初頭、教皇秘書として古典写本の蒐集(し…

私は……自国内では、潜在的にあるいは実際に暴力的になりかねない多数派の一員です。

- 私はバラモンで、バラモンとして生まれ、すなわち上層カーストとして生まれ、先に述べた通り、潜在的に暴力的な−−すべてのヒンドゥー教徒が暴力的なのではありませんが−−それでも自国内では、潜在的にあるいは実際に暴力的になりかねない多数派の一員です…

覚え書:「今週の本棚:本村凌二・評 『カエサル 上・下』=エイドリアン・ゴールズワーシー著」、『毎日新聞』2012年12月09日(日)付。

- 今週の本棚:本村凌二・評 『カエサル 上・下』=エイドリアン・ゴールズワーシー著 (白水社・各4620円) ◇人間を鋭く洞察した“傑物”の実像 ローマ人の格言に「幸運の女神は強者を助ける」というのがある。その裏返しに「なにもせずにただ祈るばかりの…

覚え書:「今週の本棚:村上陽一郎・評 『非合理性の哲学−アクラシアと自己欺瞞』=浅野光紀・著」、『毎日新聞』2012年12月09日(日)付。

- 今週の本棚:村上陽一郎・評 『非合理性の哲学−アクラシアと自己欺瞞』=浅野光紀・著 (新曜社・3990円) ◇“意志と行動”のへだたりを考える 哲学ときくと、それだけで拒否反応を示す読者もあるかもしれません。この本も「哲学」と銘打たれています。し…

覚え書:「書評:ヘラクレイトスの仲間たち 坂口ふみ著」、『読売新聞』2012年12月02日(日)付。

- ヘラクレイトスの仲間 坂口ふみ著 ぷねうま舎 評・岡田温司(西洋美術史家・京都大教授)自己の中に探る宇宙 「個」の誕生というテーマを長年一貫して問い続けてきた著者が今回たどり着いたのは、意外にもヘラクレイトスである。「万物流転(パンタ・レイ…

覚え書:「今週の本棚:中村桂子・評 『動物に魂はあるのか』=金森修・著」、『毎日新聞』2012年11月11日(日)付。

- 今週の本棚:中村桂子・評 『動物に魂はあるのか』=金森修・著 (中公新書・924円) ◇「機械論」から「現代の霊魂論」への科学思想 「恐らく、多くの読者は<動物機械論>についてならどこかで聞いたことがあっても、本書の主題<動物霊魂論>などは、…

専門分化(スペシアライゼーション)と専門主義(プロフェッショナリズム)を退けつつ、同時に「ああ、こんなこといちいち考えるまでもないや」を排していく意義について

- 専門分化(スペシアライゼーション)と専門主義(プロフェッショナリズム)について、ひきつづき考察してみたい。そして、知識人はどのように権力と権威の問題にかかわるかについても考えてみたい。一九六〇年代なかば、ヴェトナム戦争反対の声が高まりと…

知慮(フロネーシス)というものに関して

- 知慮(フロネーシス)というものに関しては、こんなふうにして、つまり、いったいいかなるひとびとをわれわれは「知慮あるひと」と読んでいるかということを考えることによって、その何たるかの把握が可能になるであろう。「知慮あるひと」(フロニモス)…

覚え書:「今週の本棚:山崎正和・評 『西洋哲学史 1−4』=神崎繁・熊野純彦・鈴木泉、責任編集」、『毎日新聞』2012年07月22日(日)付。

- 今週の本棚:山崎正和・評 『西洋哲学史 1−4』=神崎繁・熊野純彦・鈴木泉、責任編集 (講談社選書メチエ・1890〜1995円) ◇世界文明を生んだ「奇妙な精神」の歴史 哲学への無関心が今、とりわけ日本の言論界に瀰漫(びまん)している。学界を超…

セネカの徳をめぐる議論

- それゆえ、真の幸福は徳のなかに存している。この徳は君に何を勧めるであろうか。それは第一に、徳にも悪徳にも関係のないものを善とも悪とも考えてはならない、ということである。次に、悪に対抗するためにも善に従うためにも確固として立ち、それによっ…

「アテナイ人諸君よ、私は諸君を尊重しかつ親愛する者であるが、しかし諸君に従うよりも」……

- 「アテナイ人諸君よ、私は諸君を尊重しかつ親愛する者であるが、しかし諸君に従うよりもむしろいっそう多くの神に従うであろう。そして私の息と力の続く限り、智慧を愛求したり、諸君に忠告したり、諸君の中のいかなる人に逢っても常に次の如く指摘しつつ…

【研究ノート】アリストテレス eudaemonia(エウダイモニア)の組み立て方

- しかしより根本的な問題は、アリストテレス自身、それ自体のためになされる行為は数多くあり、また、行為外の目的も多々ある、とすでに認めているという事実である。『ニコマコス倫理学』の最初の数行に、健康、勝利、富がそのような行為外の目的の例とし…