2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

大学の建物の正面に掲げるべきは、《教育と研究のために》ではなく、《至高の教育としての研究のために》という標語であるべきでしょう。

- 第三の点、これを私はゲルマン的と名づけたいのですが、しかしこれについては、私はいくつかの激しい反駁にさらされなければなりませんでした。−−私は大学というものは他の教育施設とは根本的に異なったものであると考えています。大学の建物の正面に掲げ…

覚え書:「今週の本棚:コロニアリズムと文化財=荒井信一著」、『毎日新聞』2012年8月12日(日)付。

- 今週の本棚:コロニアリズムと文化財=荒井信一著 (岩波新書・756円)帝国主義の時代、欧米列強や日本は他民族の土地を植民地として支配した。その影響は今日にも残っている。本書はそのことを文化財を通じてつまびらかにしている。 柱になるのは、日…

服従が服従していることを意識しなくなるとき、服従が性向となってしまうとき、真の他律性が始まる。

- 服従が服従していることを意識しなくなるとき、服従が性向となってしまうとき、真の他律性が始まる。究極の暴力はこのような究極の甘美さのうちにある。奴隷の魂をもつこと。それは衝撃を被ることもできず、命令されることもできないということなのである…

「これまでの考え方、考え方は間違いだった、そのことを反省する、と私たちにはいわないで……」って所に注目したい

- 最初に私が、なぜ子どもは学校に行かねばならないかと、考えるというより、もっと強い疑いを持ったのは、十歳の秋のことでした。この年の夏、私の国は、太平洋戦争に負けていました。日本は、米、英、オランダ、中国などの連合国と戦ったのでした。核爆弾…

覚え書:「記者の目:『大正100年』を取材して=大井浩一」、『毎日新聞』2012年08月08日(水)付。

- 記者の目:「大正100年」を取材して=大井浩一 明治から大正に元号が変わったのは、ちょうど100年前の1912年7月30日。大正時代は第一次世界大戦や米騒動、ロシア革命などが相次いだ激動期だった。そこから今の日本を考えるための教訓を得られ…

常識と倫理のどちらにも関心を向けなければなりませんが、同時にこの二つをたがいに無縁なものとして扱うべきではありません

- 倫理と常識 知覚でとらえたものには、欺かれることがあります。一般に強力な武器−−なかでも核兵器が、その保有者の力をかならず強めて、勢力を拡大させるものだと考えてよいとは言えません。これは〔自己の利益を考慮する〕常識がかかわる重要な問題です。…

覚え書:「ひと:シーナ・アイエンガーさん 『選択』講義が話題のコンビア大教授」、『毎日新聞』2012年8月7日(火)付。

- ひと シーナ・アイエンガーさん(42) 「選択」講義が話題のコンビア大教授 20年以上「選択」の研究を続けてきた。中でも反響を呼んだのが、大学院生時代の「ジャム研究」だ。高級スーパーの試食でジャムを24種類並べた時と6種類の時では6種類の方が売れ…

「もしそこに怪物どもがいなかったなら、このさもしさはなかったろう」と……って怪物は私であり貴方であること。

- ところで、倫理的な断罪のある一定の形体において、否定するという逃避的なやりかたがある。要するに、こう言うのだ。もしそこに怪物どもがいなかったなら、このさもしさはなかったろう、と。この荒っぽい判断においては、怪物どもは可能性から切除されて…

覚え書:「時代の風:『アラブの春』と国際社会=ジャック・アタリ」、『毎日新聞』2012年8月5日(日)付。

- 時代の風:「アラブの春」と国際社会 ジャック・アタリ 仏経済学者・思想家独裁者に司法の裁きを 革命が起きるためには二つの状況が必要だ。まず、人々が恐怖を感じなくなること。そして、失う物を多く所有していること、つまり、ある程度、財産のある中産…

書評:藤井省三『魯迅 −−東アジアを生きる文学』岩波新書、2011年。

- 竹内好はこのような“哥”と“哥児”とを区別することなく、旧訳版でも改訳版でも「閏(ルン)ちゃん」「迅(シュン)ちゃん」と訳している。これはたとえば農地改革で地主制度が消滅し、身分差が縮小した戦後日本社会に合わせて魯迅文学を土着化したものであ…

覚え書:「今週の本棚:沼野充義・評 『カラマーゾフの妹』=高野史緒・著」、『毎日新聞』2012年08月05日(日)付。

- 今週の本棚:沼野充義・評 『カラマーゾフの妹』=高野史緒・著 (講談社・1575円) ◇原作の「謎」、鮮やかに解き尽くす本格推理“続編” 『カラマーゾフの妹』というタイトルを見て、「えっ、あの<兄弟>に妹なんていたっけ?」と頭の中に疑問符が点滅…

自分たちの奉じる自由と自立の思想が庶民層のなかでどう生きるかは、思想の死命を制する本質的な課題であるはずだ

- 個の自由と自立を求める啓蒙思想家にとっては、自分たちの奉じる自由と自立の思想が庶民層のなかでどう生きるかは、思想の死命を制する本質的な課題であるはずだ。民主の思想の根幹は民衆が主体となることなのだから。 が、維新変革の主体と同じ階層−−つま…

覚え書:「今週の本棚:荒川洋治・評 『若い読者のための世界史 上・下』=E・ゴンブリッチ著」、『毎日新聞』2012年08月05日(日)付。

- 今週の本棚:荒川洋治・評 『若い読者のための世界史 上・下』=E・ゴンブリッチ著 (中公文庫・上巻800円、下巻700円) ◇やわらかく簡潔に、歴史を表現する ウィーン生まれの高名な美術史家ゴンブリッチ(一九〇九−二〇〇一)が、原始から現代(第…

隣り人を自分自身のように愛せよということは、すべての人を同じように愛せよという意味ではない。

- 隣り人を自分自身のように愛せよということは、すべての人を同じように愛せよという意味ではない。なぜなら、わたしも自分自身の存在のありようを全部が全部同じように愛しているわけではないからだ。また、すべての人を決して苦しませてはいけないという…

覚え書:「今週の本棚:COVER DESIN 『広島、1945』」、『毎日新聞』2012年8月5日(日)付。

- 今週の本棚:COVER DESIN 『広島、1945』 (南々社、1890円) 1945年の広島の変貌を写真で描く『広島、1945』(南々社、1890円)。8月6日を挟んで、わずか一発の原子爆弾が街の姿を大きく変えてしまったさまを伝える。表紙は勤労動員先で…

「いちばん足りなかったと思うのは、原爆体験の思想化ですね。わたし自身がスレスレの限界にいた原爆体験者であるにもかかわらず」ということについて

- 爆破直後には、市民がワーッと司令部の構内に逃げ込んできましたから、塔の前の広場がまたたくまに、被爆者で埋まってしまった。足の踏み場もないくらいだった。背中の皮なんかベローッとむけちゃった人なんかザラです。女の人は半裸体で、毛布かなんかで…

覚え書:「くらしの明日 私の社会保障論 『無縁』想定した備えを急げ=湯浅誠」、『毎日新聞』2012年8月3日(金)付。

- くらしの明日 私の社会保障論 「無縁」想定した備えを急げ=湯浅誠 反貧困ネットワーク事務局長「三縁」が支える幸福度トップの福井県 先日、福井に行ってきた。福井県は法政大学の幸福度調査で全国一に輝いた。背景には3世代同居率の高さ、共働きの夫婦…

「自信過剰、狂信、強烈な劣等感、ときに病的なほど強くなる一等国へのこだわり」としてのオリンピック

- (東京オリンピックでは……引用者補足)メダルもたくさん獲得した。金メダルの数は十六で、これはアメリカとソビエトに次ぐ三番目の成績だ。日本国民は競技の成績にこだわっていたが、そのこだわりは必要以上に強すぎたように思う。マラソンの円谷幸吉とハ…

覚え書:「みんなの広場 ゆとり世代 ばかにしないで 高校生」、『毎日新聞』2012年8月2日(木)付。

- みんなの広場 ゆとり世代 ばかにしないで 高校生 17(札幌市西区) 先日、学校の先生に「こんなのも分からないのか」と怒鳴られた。それは。私たち、ゆとり世代が習ってこなかったものだった。 ゆとり世代は、なりたくてなったものではない。なのに、「こ…

書評:ジョルジョ・アガンベン(高桑和巳訳)『ホモ・サケル 主権権力と剥き出しの生』以文社、2007年。

ジョルジョ・アガンベン(高桑和巳訳)『ホモ・サケル 主権権力と剥き出しの生』以文社、2007年。フーコーの生政治、アーレントの全体主義の交差を系譜学的に理解する試み。アガンベンは古代ローマの特殊な囚人たちは「ホモ・サケル(homo sacer,聖なる人間…

覚え書:「今週の本棚:若島正・評 『モラヴァジーヌの冒険』=ブレーズ・サンドラール著」、『毎日新聞』2012年07月29日(日)付。

- 今週の本棚:若島正・評 『モラヴァジーヌの冒険』=ブレーズ・サンドラール著 (河出書房新社・2940円) ◇世界に破滅をもたらす“狂人”の物語 世の中にあまたある小説で、いちばん好きな題名を挙げろと言われたら、わたしは躊躇(ちゅうちょ)せずに『…

書評:「吉野孝雄『宮武外骨伝』(河出文庫)、『第三文明』2012年9月、92頁。

- 吉野孝雄『宮武外骨伝』河出文庫権力と戦った“操觚者”の稀有なる魂の軌跡 本書の主人公・宮武外骨(がいこつ)ほど型破りな人間はそうそう存在しない。反骨のジャーナリスト、著述家、明治文化・風俗史・新聞雑誌研究家……。巨人を形容するには、どれも不足…

覚え書:「今週の本棚:養老孟司・評 『豊かさのなかの自殺』=C・ボードロ、R・エスタブレ著」、『毎日新聞』2012年07月29日(日)付。

- 今週の本棚:養老孟司・評 『豊かさのなかの自殺』=C・ボードロ、R・エスタブレ著 (藤原書店・3465円) ◇社会学の視点で発生率変動の要因を探る 自殺に関する書物は二つに大別される。一つは精神医学・心理学に基づき、もう一つは社会学に基づく。…

書評:山浦玄嗣『イエスの言葉 ケセン語訳』文藝春秋、2012年。

※twitterまとめですいません。山浦玄嗣『イエスの言葉 ケセン語訳』文藝春秋、読了。著者は岩手県気仙沼地方で開業するカトリックの医師。四福音書をギリシア語から日本各地の方言で翻訳(『ケセン語訳新約聖書』イー・ピックス)。本書は、聖書の翻訳で考え…

覚え書:「今週の本棚:白石隆・評 『「Gゼロ」後の世界』=I・ブレマー著」、『毎日新聞』2012年07月29日(日)付。

- 今週の本棚:白石隆・評 『「Gゼロ」後の世界』=I・ブレマー著 (日本経済新聞出版社・2520円) ◇リーダーシップなき時代のリスクを展望する 世界経済における新興国の比重が急速に増している。2003年、世界経済に占める新興国・途上国の比率は…

一国の学問をになう力は−−学問に活力を賦与するものは、むしろ学問を職業としない「俗人」の学問活動ではないだろうか

- 私は本書の中で、市民の日常的な政治的関心と行動の意味を「在家主義」にたとえたが、同じ比喩を学問、とくに社会科学についても日頃考えている。私を含めて学問を職業とする学者・研究者はいわゆる学問の世界の「坊主」である。学問を高度に発達させるた…