2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

覚え書:「書評:大川周明 アジア独立の夢―志を継いだ青年たちの物語 [著]玉居子精宏 [評者]中島岳志」、『朝日新聞』2012年10月14日(日)付。

- 大川周明 アジア独立の夢―志を継いだ青年たちの物語 [著]玉居子精宏 [評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史) ■二元論に収まらぬ若き主体性 アジア主義者であり、革命家だった大川周明。彼は5・15事件に関与し、獄中生活を送っ…

覚え書:信教の自由と現代日本,阿満利麿『宗教は国家を超えられるか』

- 近代日本が、思想信条、「信教の自由」について、どれほど強固な合意をつくってきたといえるか、もしうまくそれがつくられていないとすれば、その原因はなにか、を検討する必要がある。とりわけ「信教の自由」についての検討が重要だと私は考える。なぜな…

覚え書:「今週の本棚:鹿島茂・評 『夢の操縦法』=エルヴェ・ド・サン=ドニ侯爵・著」、『毎日新聞』2012年10月14日(日)付。

- 今週の本棚:鹿島茂・評 『夢の操縦法』=エルヴェ・ド・サン=ドニ侯爵・著 (国書刊行会・4725円) ◇思念により現実と結ばれる「夢」探究の書 著者のエルヴェ・ド・サン=ドニ侯爵(1822−1892)はコレージュ・ド・フランス教授にまで上りつめ…

「頂点に位置したのは日本本土から来た日本人、中間に位置したのが沖縄人」って大日本帝国時代以来の認識

- 頂点に位置したのは日本本土から来た日本人、中間に位置したのが沖縄人と朝鮮人、最底辺に位置したのが島民である。沖縄人と朝鮮人には島民よりも高い地位が与えられたが、彼らの職業や教育程度は、島民から見るとうさん臭い感じに映った。たとえば、多く…

覚え書:「今週の本棚:中村達也・評 『縮小社会への道』=松久寛・編著」、『毎日新聞』2012年10月14日(日)付。

- 今週の本棚:中村達也・評 『縮小社会への道』=松久寛・編著 (日刊工業新聞社・1680円) ◇今世紀後半の高齢化・人口減少社会を透視する 今からもう一八年も前のことだが、衝撃的な一冊の本に出会った。マテリアル・ワールド・プロジェクト編『地球家…

研究ノート:上杉思想の本質的な点への批判を怠った結果は、国民にとってよいことはすべて国家が引き受けるという官僚的国家主義への批判の弱さにつながった。

- 美濃部にせよ吉野作造にせよ、大正デモクラットは、国家的な規範価値が国民の内的要求と一致すべきことを要求した。そしてこの「民心」は二〇世紀欧米自由主義のなかに準備されているものと同質であると信じた。だから彼らは、官僚層もまたこの自由主義に…

覚え書:「今週の本棚:井波律子・評 『先哲の学問』=内藤湖南・著」、『毎日新聞』2012年10月14日(日)付。

- 今週の本棚:井波律子・評 『先哲の学問』=内藤湖南・著 (ちくま学芸文庫・1470円) ◇傑出した事績の輪郭を鮮やかに 本書『先哲の学問』は、中国史学者内藤湖南(一八六六−一九三四)が、先哲すなわち江戸時代のすぐれた学者九人に、スポットを当てた…

覚え書:「時代の風 原発事故と安全対策=ジャック・アタリ」、『毎日新聞』2012年10月14日(日)付。

- 時代の風 原発事故と安全対策 ジャック・アタリ 仏経済学者・思想家規制強化を地球規模で 東西冷戦が終わって、旧共産圏を自由市場経済に移行させるため1991年、ロンドンに欧州復興開発銀行が設立され、私が初代総裁を務めた時、東欧諸国の原子力発電…

覚え書:「みんなの広場 橋下市政の校長公募に反対」、『毎日新聞』2012年10月11日(木)付。

- みんなの広場 橋下市政の校長公募に反対 元教員 70(大阪府河内長野市) 大阪市教委が全国公募していた私立小中学校の校長に1300人近い応募があったという。募集定員は約50人で競争倍率は25倍を超えた。報道によると、橋下徹市長は「心強い。教育…

iPS細胞に関する「騒動」について

iPS細胞に関する「騒動」については、ほとんど論点が出てきたみたいだけれども、自分自身もそれについて、少しだけ言及しておこうと思う。まず、最初に渦中の氏自身がトンデモなことをやったことを「スキャンダル」として受容することには関心がない。私…

覚え書:「書評:2050年の世界 英「エコノミスト」誌は予測する [著]英「エコノミスト」編集部 [評者]原真人(本社編集委員)」、『朝日新聞』2012年10月7日(月)付。

- 2050年の世界 英「エコノミスト」誌は予測する [著]英「エコノミスト」編集部 [評者]原真人(本社編集委員) ■「未来」からみる「現在」の課題 40年後の世界を言い当てることなど、当たるも八卦(はっけ)当たらぬも八卦のたぐいだろう。だが、英エコ…

覚え書:「みんなの広場 永遠の日中友好を願う」、『毎日新聞』2012年10月10日(水)付。

- みんなの広場 永遠の日中友好を願う 無職67(福岡市東区) 私が通った小学校は長崎市の新地中華街に近かったせいか、クラスには数人の中国人がいました。が、日本人と中国人の別なく、皆友人でした。そんな環境で育った私にとって、日中友好は当然のことで…

次代を担う子供や青年たちに、どのような価値を引き継がせるのか、それは、本来国家の仕事ではない。

- 詳しいことは、本文にゆずるとして、問われているのは、単に宗教にとどまらず、一つの文化現象を、国家の意志にあわせて都合よく分断し、変形して怪しまれない精神そのものである。教育に対する国家の、過度ともいうべき干渉を例にあげれば、読者もすぐに…

覚え書:「書評:死体は見世物か 「人体の不思議展」をめぐって [著]末永恵子 [評者]中島岳志」、『朝日新聞』2012年10月7日(日)付。

- 死体は見世物か 「人体の不思議展」をめぐって [著]末永恵子 [評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史)■死者と生者の関係 問い直す 90年代から全国で開催され、話題となった「人体の不思議展」。近くて遠い人体の展示は、多くの…

覚え書:「ひと 『同性婚合法化』に向け世界を飛び回る ボリス・ディトリッヒさん」、『毎日新聞』2012年10月10日(水)付。

- ひと 「同性婚合法化」に向け世界を飛び回る ボリス・ディトリッヒさん(57) 01年、世界で初めて同性婚を認めたオランダで、その法案を成立させた立役者。現在11カ国となった同性婚合法化の先がけとなった。同性婚問題を議論している国々の国会から呼ばれ…

専門分化(スペシアライゼーション)と専門主義(プロフェッショナリズム)を退けつつ、同時に「ああ、こんなこといちいち考えるまでもないや」を排していく意義について

- 専門分化(スペシアライゼーション)と専門主義(プロフェッショナリズム)について、ひきつづき考察してみたい。そして、知識人はどのように権力と権威の問題にかかわるかについても考えてみたい。一九六〇年代なかば、ヴェトナム戦争反対の声が高まりと…

覚え書:「今週の本棚:小西聖子・評 『子どもの共感力を育てる』=D・ペリー、サラヴィッツ著」、『毎日新聞』2012年10月7日(日)付。

- 今週の本棚:小西聖子・評 『子どもの共感力を育てる』=D・ペリー、サラヴィッツ著 ◇小西聖子(たかこ)評 (紀伊國屋書店・2100円) ◇脳科学で見定める人間的な感情の動き 「いじめられている人の立場に立って」というのは、いじめ防止キャンペーン…

「内に立憲主義、外に帝国主義」から「内に立憲主義、外に国際的民主主義」へ

- 国内政治に向けての民本主義の唱道は、国際政治に向けての態度に変化をもたらした。初め、内に立憲主義、外に帝国主義の立場を免れていなかった吉野は、第一次世界大戦(一九一四−一九一八年)後、「帝国主義より国際的民主主義へ」というふうな講演をする…

覚え書:「今週の本棚:海部宣男・評 『ヒトはなぜ難産なのか』=奈良貴史・著」、『毎日新聞』2012年10月7日(日)付。

- 今週の本棚:海部宣男・評 『ヒトはなぜ難産なのか』=奈良貴史・著 (岩波科学ライブラリー・1260円) ◇人類学の視点で「お産」という大事と向き合う お産が女性にとって大変な難事業だということは、男性でもみな知っている。けれど、数多(あまた)…

「これから講義を始めます。体の具合が悪いのでこのままで失礼します」

- 中村元先生の“最終講義” 中村先生が亡くなられたのは、一九九九年一〇月一〇日のことだった。享年八六歳。猛暑で倒れられた先生は、亡くなられる少し前から昏睡状態が続いていた。そんなとき、先生の口から「これから講義を始めます。体の具合が悪いのでこ…

覚え書:「今週の本棚:辻原登・評 『屍者の帝国』=伊藤計劃、円城塔・著」、『毎日新聞』2012年10月7日(日)付。

- 今週の本棚:辻原登・評 『屍者の帝国』=伊藤計劃、円城塔・著 ◇『屍者(ししゃ)の帝国』 (河出書房新社・1890円) ◇執拗な思考が冒険活劇に絡みつく「現代の奇書」 一八七八年ロンドン。優秀な成績でロンドン大学医学部を出た青年がある任務に就く。…

「観る」とはすでに一定しているものを映すことではない。無限に新しいものを見いだして行くことである

- 「観る」とはすでに一定しているものを映すことではない。無限に新しいものを見いだして行くことである。だから観ることは直ちに創造に連なる。しかしそのためにはまず純粋に観る立場に立ち得なくてはならない。 −−和辻哲郎『風土』岩波文庫、1979年、106…

覚え書:「今週の本棚:加藤陽子・評 『中国革命と軍隊』=阿南友亮・著」、『毎日新聞』2012年10月7日(日)付。

- 今週の本棚:加藤陽子・評 『中国革命と軍隊』=阿南友亮・著 (慶應義塾大学出版会・7140円) ◇共産党軍の“黎明”から現代中国を考える 日本による尖閣諸島国有化を機に、中国では反日デモの嵐が吹き荒れた。この間、メディアの報道を注視していて気づ…

人間を支配することの合法性は、支配者がもはや自分のことはすこしも念頭になく、もっぱらすべての人のしもべとなることにある

- 十月八日 神の秩序にしたがって考えれば、人間を支配することの合法性は、支配者がもはや自分のことはすこしも念頭になく、もっぱらすべての人のしもべとなることにある。これ以外の合法性はことごとく誤りである。また、すべての支配者は、これにしたがっ…

覚え書:「みんなの広場 私は人間の良心を信じたい」、『毎日新聞』2012年10月5日(金)付。

- みんなの広場 私は人間の良心を信じたい 会社員58(兵庫県伊丹市) 最近の社会の関心事は「いじめと領土問題」ではないだろうか。まったく関連がなさそうな両者だが、根本は同じだと思う。解決のキーワードは「対話」だろう。人間は生まれなあらに慈悲と寛…

書評:中野敏男『詩歌と戦争 白秋と民衆、総力戦への「道」』NHK出版、2012年。

中野敏男『詩歌と戦争 白秋と民衆、総力戦への「道」』NHK出版、読了。白秋を素材に、戦前日本社会の民衆のメンタリティーの変遷を批判的に考察する一書。童謡で人気を獲得した白秋が、なぜ戦争賛美を歌いあげ愛国心を鼓舞するようになったかを検証する。…

覚え書:「記者の目 生活保護バッシング」、『毎日新聞』2012年10月2日(火)付。

- 記者の目 生活保護バッシング 東京社会部 遠藤拓寛容な視点で考えよう もしかして、日本社会は生活保護を受給者ごと切り捨てようとしているのか。春先から続くバッシングはそんな危うささえも漂わせている。 生活保護は6月時点の受給者が211万人超と過…

覚え書:「異論反論 餓死や孤立死が相次いでいます=雨宮処凛」、『毎日新聞』2012年10月3日(水)付。

- 異論反論 餓死や孤立死が相次いでいます 寄稿 雨宮処凛SOSを発し得る社会に 毎週水曜日、首相官邸前には消費税増税や社会保障切り下げに疑問をもつ人々が集まり、生活保護の改悪に反対する声を上げている。 8月に閣議決定された来年度予算の概算要求に…

覚え書:「ネアンデルタール人 奇跡の再発見 [著]小野昭/化石の分子生物学 [著]更科功、評者・福岡伸一」、『朝日新聞』2012年9月30日(日)付。

- ネアンデルタール人 奇跡の再発見 [著]小野昭/化石の分子生物学 [著]更科功 評者・福岡伸一(青山学院大学教授・生物学) ■あり得たもう一つの「人類」 人権、人命、平等の尊重。我々人類にとってあまりにも普遍的な規範は、実は意外なことに2万数千年ほど…

覚え書:「今週の本棚:山崎正和・評 『ヴァーチャル・ウィンドウ−−アルベルティからマイクロソフトまで』=アン・フリードバーグ著」、『毎日新聞』2012年9月30日(日)付。

- 今週の本棚:山崎正和・評 『ヴァーチャル・ウィンドウ−−アルベルティからマイクロソフトまで』=アン・フリードバーグ著 (産業図書・3990円) ◇視覚と知性の近代史 一貫性の再確認 人の心は外へ開かれた窓であり、その窓枠が現象を切り取り、窓の外側…